宮野清隆ファン交流会
「ぶはっははは、何を改まって、それになぜ僕をここへ?」
「ああ、それはね・・・」
清隆の質問にメアリーは答える。
「それはあなたとあなたのファンの交流会のためよ。この組織にはあなたの友人だけでなく、あなたの戦う姿を見て、心を打たれたという人や三年生どうしじゃなくても三年生に勝てるんだと希望をもてたってファンになった人がいるのよ。」
「ファンなんて・・僕なんて所詮先輩たちの力を借りて三年生たちに勝ってきただけであって・・」
「謙遜しないで清隆、三年生たちを倒してきたのは間違いなくあなたの力よ。」
清隆はその言葉がすこし嬉しいはずかしく、
髪をいじる。
「それでは、宮野清隆ファン交流会を始めるわ。」
メアリーの一声で清隆の周りに人混みができる。
「清隆さん、握手してください。」
おそらく、ロンドン校の後輩だと思われる女子の集団が清隆に握手を求めてきた。清隆はそれに応じる。すると、
「ありがとうございます。」
とその女子たちは言ってその場を去っていった。
すると、また目の前には後輩の女子が立っていた。
「あの、宮野先輩、私と付き合って下さい。」
その声の主は幼い顔立ちをした黒髪のサイドテールの女の子だった。清隆はいきなり告白されたのだった。こんな大勢の前で度胸がある娘だなと清隆は思った。しかし、それだけではない。その気持ちには答えられないという思いもあった。清隆に亡き恋人、美雪に対する罪の意識が消えない限り清隆は誰の気持ちにも答えることはない。しかし、清隆は罪を一生背負っていく気持ちと美雪に許してほしいという気持ちもあるという矛盾も抱えていた。本当は許しを得て楽になりたいのかもしれない。そう、誰かに告白されたって、自分勝手な理由で断ることもなくなって、本当の自分自身の感情で「はい」や「いいえ」などの返事を出せる。
誰かを無闇に傷つけることもなくなる。何よりも自分自身が楽になる。でも、それを許さない自分がいる。だから、清隆は今回もその告白を断る。
「ごめん、君の気持ちには応えられない。」
「そうですか。清隆さん、本戦も頑張ってくださいね。」
後輩は清隆の言葉を聞き、悲しそうな顔をして、一言だけ告げ、去っていった。
空気が重くなる。すると、メアリーが
「はいはい、今日の会はここで終わり。さあ、帰った、帰った。」
メアリーは清隆に気をつかってくれたのだろう。
「ありがとう、メアリー。」
清隆は一言メアリーにお礼を言ってその場を去った。