清隆の記憶、罪と罰
魔闘会本戦まであと3日となった今日。魔闘会本戦出場チームのメンバーはS町の港から船に乗り、本戦の会場である、太平洋の真ん中に国際魔法武闘大会運営委員会よって作られた島、「マジシャンズアイランド」に向かっていた。本来の船の速さでは、イギリスから太平洋の真ん中にいくのに三日ではつかないはずだが、選手たちが乗っているのは、魔法の船である。イギリスから太平洋の真ん中にいくのに半日もかからないだらう。
清隆は船の中で外の景色を見ながら、三位決定戦で「幻夢の使者」を倒し、本戦出場の資格を得た、「ブラッドヴィーナス」のリーダー、レイカ・ローズと雑談をしていた。レイカはメアリーの姉にあたり、清隆が常連客となっている喫茶店「ジャスティス」のバイト店員なので、清隆とは以前から面識があり、話もしたことのある間柄だ。
「宮野よ。」
「はい。」
「メアリーをよろしく頼む!」
「・・・へっ?」
「メアリーはお前のことが好きなんだ。お前が初めてジャスティスにやってきたときの喜びよう、最近のお前に対する接客、そして、魔闘会予選の出場。この三つからメアリーはお前のことが好きなんだと悟った。それにメアリーが予選に出場したのはお前にすこしでも振り向いて欲しくて 出場したとメアリーが言っていた。宮野清隆、どうか妹を頼む。」
「・・・それにはYESとは言えません。」
「なぜだ。」
「自分の気持ちは自分で言わなくちゃいけないし、それに・・・」
言葉を言いかけた清隆に今は亡き恋人、美雪の顔が思い浮かぶ。そして、レイカに話の続きをする。
「僕には恋をする資格はないんです。」
「なぜ?」
清隆の言葉に首をかしげるレイカ。すると、清隆はレイカの疑問に答えるように話を始めた。
「僕は一年半前の魔獣大量発生事件、ワールドエンドで恋人を亡くしたんです。僕は当時、魔法が自分の思う通りにコントロールできなくて、魔獣に対抗する手段もなく、僕とその恋人、美雪は魔獣から逃げていた。だが、途中で逃げきれなくなって、魔法を使って魔獣を倒そうと試みたけどやっぱりうまくいかず、僕と美雪は魔獣にやられ、僕は大怪我を負い、美雪は死んでしまった。僕は助かったことよりも、美雪を守れなかったことが悔しかった。僕は美雪を守れなかった罪を償うためにこの大会に参加しているんです。僕は美雪の最後の言葉を聞いてあげなくちゃならないんです。どんなに辛い言葉を浴びせられてもどんなに非難されても、呪われてもそれを受け入れる。だって、それが僕の罰だから。」
それを聞いたレイカは泣いていた。
「すまない、辛いことを思い出させてしまって。
「いえ、気にしないで下さい。」
それから、2人の会話がとまる。そして、船も止まった。