魔闘会!
ウゴゴゴゴゴ・・
暴れる青い魔獣・・・
「助けて、誰か!」
「一体どうなってるのよ」
「これは神の天罰・・」
町が燃え上がっている・・・
騒ぐ人々・・・
死んでいく人々・・・
そして、隣にある恋人の亡骸・・
全て魔獣の仕業だ。
清隆にはそれが微かに見えていた。悔しさで出た涙が溜まってぼやけているその視界で・・・
手を伸ばす・・でも、助けの手は無い。誰も助けてくれない。
無力な自分が嫌だった。目の前の女の子一人すら守れないことが嫌だった。清隆には不思議な力、魔法を使える素質があった。けれど彼ははその力を拒んだ。自分が真面目に魔法を学んでいたならば、美雪を助けることができたのに。自分が普通であることを願ったばかりに大切な人を失った。
清隆は決意した。
約束するよ、魔法を学んで、きっと君を蘇らせると・・
彼はは倒れた。
長い夢から覚める・・・すべての始まりの夢から。
「また、あの夢か・・」
暗い気持ちを振り払い、ベットから起き上がり、制服に着替える。今日からは、2年生。
この男、宮野清隆は、イギリス王立ロンドン魔法科高等学校に通っている。住まいは学
園から、徒歩20分のアパート。学園には寮もあるが、あまり良い環境とは言えず、ここに住むことにしたのだ。最初のうちは、なれない環境に戸惑ったが、すぐに慣れ、いまでは、すっかりロンドンでの生活を満喫している。顔を洗い、寝癖を直し、制服に着替えて、腰にポーチをつけて、準備を終えた清隆は、
アパートをでて、桜咲くロンドンの町を歩いて行きつけの店、「ジャスティス」に向かった。ジャスティスは、喫茶店でこの店で働く一年生の時のクラスメイト、メアリー・ローズという女の子に宣伝されて通い始めた。いまでは、この店で朝食をとるのが清隆の日課となっている。ジャスティスに着くと、入り口付近にいたメアリーに声を
かける。
「よっ、メアリー。」
「いらっしゃい、清隆。一名様でいいのかな。」
と、いつものやりとりをする。いつもなら、次に「うん。」というところなのだが、
「いいや、二名で、あとからくるから。」
「了解。」
と、いうやりとりをし、席に案内される。いつもと同じのオープンテラスの席だ。なぜ、清隆が二名といったかは、幼馴染の女の子と待ち合わせをしているからだ。清隆が暇つぶしに新聞を読んでいると、幼馴染がやってきた。
「おまたせ、清隆。待った?」
「いいや、さっききたところだから。」
この幼馴染の名前は、葛木静香。
僕と同じ高校2年生だ。魔法科高校入学当時、静香の姿を見たときは驚いた。魔法科高校は、魔法が使えなければ入学できない場所であったからだ。
後で聞いてみると、静香はある日突然魔法が使えるようになり、その後、学校から招待状が届いたらしい。
その後、二人は、モーニングセットを頼み、満開の桜を見ながらそれを食べる。朝食をすませると、メアリーが朝の仕事を終えたみたいで制服姿になっていた。
桜咲く一本道、清隆、静香、メアリーの三人で学校に行く。
そして、校門前の掲示板。
そこには、人が集まっていた。正確には、一枚の貼り紙に。
国際魔法武闘会予選大会のお知らせ
参加資格 この学園の生徒の2年生以上
チーム人数 1チーム3人
選抜方法 上位3チーム
開催日 4月 15日
この大会の予選通過者は、本戦の出場資格を得る。
という、国際魔法武闘会、通称、魔闘会のお知らせだった。魔闘会は、年に3回行われ、世界の魔法科高校が魔法を使った格闘をすると、いうものである。優勝チームには、願いを3つ叶えられるという権利が、与えられる。清隆は、去年の魔闘会の本戦に出場したが、一回戦で負けてしまったのだ。清隆は、今年は、目的を果たしてみせると心に決めていた。そう、清隆は、この大会で優勝して、願いを叶えること、兄を探すことと言う二つの目的があった。1年半前、兄は、アメリカの魔法科高校での任務で行方不明になった。しかし、それからアメリカ校と兄の両方と連絡が全くつかなくなってしまった。真実を知るためにアメリカの魔法科高校と対戦し、知っていることを話してもらうのだ。兄と再会するために。
そんなことを考えていると、
「ははははは、マイパートナー宮野よ、魔闘会のチーム一緒に組まないか。」
という声が聞こえてきた。声の主は、去年の魔闘会の夏の大会から、2回の魔闘会でチームを組んだ、すなわち、清隆が、参加した魔闘会すべてで、チームを組んでいる、杉並哲也、高校3年生である。その哲也の誘いに快く応じた。
「今回こそ、優勝しましょう、杉並先輩。」
「ははははは、いい返事だ、相棒よ。」
二人は、握手をし、清隆のチームの一人目が決まった。
その後、予鈴も鳴ったので急いで新しいクラスを確認し、クラスも一緒になった、静香とメアリーと共に教室へ向かった。教室へいくと
「清隆!お前、もう魔闘会のパートナー決めたのか。」
と、いう声が聞こえた。声の主は、去年も同じクラスだった、エドガー・であった。
「まあ、杉並先輩と組んでもう一人、必要ってところだけど。」
「じゃあ、もう一つの枠は、俺を入れてくれないか。」
という、チームに入れてくれという申し出に清隆は、少し戸惑っていた。なぜなら、チームに誘うと決めていた相手がいたからだ。
決断の末、清隆は、この申し出を断ることにした。
「すまない、エドガー。チームに誘う相手は決まっているんだ。」
「誰?」
「巴さん。」
「ああ、前回とまったく同じにするわけね。」
「ああ、そうだけど。」
「俺はあきらめないぞ。だから、お前のチームメイトと戦って勝ったら、俺をチームに入れてくれ。」
「お前が杉並先輩や巴さんに勝つのは無理だと思うけど・・」
「清隆、あきらめたらそこで試合終了だぞ。」
「・・・・・」
エドガーは熱くなっている。こうなると誰もエドガーを止めることはできない。言い返す言葉もない。
「じゃあな、清隆。早速戦ってくる。」
エドガーは教室から出て行こうとしている。
「待て、エドガー!」
清隆はエドガーを引きとめようと声をかける。
「どうしてだ、清隆。なぜとめる。」
「エドガー、お前大事なこと忘れているだろう。」
「一体何を!」
清隆はため息をついてからこういった。
「エドガー、お前、杉並先輩と巴さんのクラスわかるのか。それにこれから始業式だ。」
「・・・・・」
エドガーは固まった。どうやら、二人のクラスがわからなかったようだ。
「まあ、二人はあとで探すか。」
キーンコーンカンコーン
予鈴がなった。
「ふうー」
清隆は息をつく。
(エドガーは妙に行動力があるからな、何をするかわからないから危ない危ない。)
清隆は一学期のはじめからエドガーの行動に頭を抱えるのだった。