スキル生成AIで異世界無双したい~自宅警備員の俺が、15年後の未来について語ってやる~
本作を見つけていただきありがとうございます。
社会風刺的な内容も含まれますが、何かを攻撃しようという意図は全くございません。
こんな未来もあるかもしれないな。くらいに思ってお楽しみいただけると幸いです。
7,000字弱と短いので、最後のオチまで是非ご覧になってみてください。
インターホンの呼び出し音が鳴る。
注文から僅か五分。俺の昼飯が到着した。
「エミー、飯が届いた。悪いけど受け取っといてくれ」
最新の生成AIヤッピーを搭載した家政婦型アンドロイド。エミーと名付けた彼女に、配達ドローンの応対を任せる。
俺は今、自作の没入型VRゲームに忙しいのだ。
自分で注文しておいてアレだが。ゲームしてる最中のチャイムはほんと興醒めする。まぁゲーム中でも、外部の音が聞こえるように設定したのは俺自身なんだがな。
万が一火事でも起きて、逃げ遅れたりしたら洒落にならないだろ。
一応、何かあればエミーが教えてくれる。とはいえ、俺の教育が悪かったせいか彼女、たまに変な気の遣い方するところあるんだよな。
ゲーム中なのを理由に、大事な要件でもすぐに報告しないときがある。まぁ、俺が怒るからそうなるのも仕方がないか。
そんな俺の名前は、引部新人。35歳独身。いわゆる引きこもりのニートというやつだ。
とはいってもこの時代、こういった生活をしている奴は山ほどいる。むしろ、働く奴の方が酔狂だと言われてしまう程のレベルでな。
今年は確か、新歴の12年だったか? 新歴とはAICの日本語での言い方で、AIイノベーションなんたら。兎に角、AI革新後の世紀という意味らしい。
もう西暦が終わってから12年も経つのか。早いもんだな。
働かないとボケる、なんて言ってる奴らの気がしれないけど。俺は、こんな天国みたいな世界になって、ほんと良かったと思ってる。
ベーシックインカム制度のおかげで、全ての人間が働かなくても良い世の中になった。
AI搭載型アンドロイドが、人の代わりに労働してくれるからな。
そもそも会社なんて物は、AIの進歩で軒並み潰れてしまった。今では、そのAIを管理するためだけの企業が世界に一社あるだけだ。
それだって利益を追求するものというより、管理のために仕方なく存在してるといった感じでしかない。そこで働いてる奴らも皆、AI搭載型のアンドロイドだしな。
人が働くといっても、さっき言ったようにボケ防止でしかない。利益を生むわけでもなく。ただ何となく、働く場所が用意されているってだけだ。
あれは俺が、高校生くらいの時だったかな。それくらいの時期から、エンタメ業界が次々と崩壊しはじめたんだ。
理由は簡単。今まさに俺がやってること。
こんな良い社会になったんだから、俺的には万々歳なんだけど。あの時は確かに、大きな反発や衝突もけっこうあった。
それについて、何があったのか順を追って説明するぞ。
まず最初に起きた事が、生成AIを使った個人での利益追求の流れだ。かくゆう俺も、生成画像を売って小遣い稼ぎしていた時期もあった。
しかし、この方法はすぐに立ち行かなくなる。各プラットホームが、サーバーの負荷などを理由にAIの使用を軒並み禁止し始めたからだ。
ネット小説については、その流れは起きなかった。別にAI作品に対する批判なんて、読み手側からはこれっぽっちも出ることがなかったからな。それに絵と違って本人が深刻しない限り、使用してるのかどうかさえ判別がつかない。
文章には、あの当時主流だった所謂マスピ顔的なものなんてないし。
だけど、ふつーに供給過多になってその流れもすぐに終わった。だってそうだろ? 利益目的の書き手が十倍に増えても、読みにくる人間の数と時間が十倍に増えるわけじゃないからな。
そうなってくると、次に起きる事象は必然だった。出版社による直接AI使用作品の市場投入。
この流れで、手書き、AI含めて全ての作家が完全に死んだ。
だって、アイデアだけ自前で出してAI使っちまえば、余計な人件費もかからんし印税も払わんで済むだろ? どーせ同じAIが作る物なら、わざわざ作家に頼む意味もないからな。
そして、こういった流れは、エンタメ業界全体に一気に波及していった。
最初に見たフル生成AI作の120分映画は、マジで圧巻だったな。
まるで本物の俳優を使ってるかのような質感。背景に至るまで、実写と全く遜色のない出来だった。
こんなもんが僅かな時間で量産できる。何年もかかって製作していたものが低コストで、本体を作ること自体は殆ど一瞬ときたもんだ。
最後の仕上げは人がやるにしたって、数日もあれば完了できる。実際は、それすらAIだったらしいがな。じゃないとフルとは言えないだろ?
この作品の登場で、生成AIによる映画制作が完全に市民権を得る。それ以降、むしろ手作業で作られた物の方が忌避されるようにさえなった。
それだけAI作品が、人の作った現実の物より高品質になったってことだ。
それからしばらくの間、過去最高益を出す会社が続出した。
俺も含め世の中の人間は、次々と量産されるコンテンツを何の疑問も持たず貪り続けた。
だけど俺は、ある日突然ひらめく。
いや、恐らくだが多くの人間が同じ時期に、同じ事に気がついてしまったんだろう。
俺の性癖にドンピシャなエロ動画が、なかなか見つからない。
だったら、自分でAIに頼んで作ってもらえば良くないか?
まさしく、この流れが世界中で起こったんだ。
エロ動画だけじゃない。音楽、アニメ、ゲームに至るまで、ありとあらゆるジャンルでその流れは起こった。
後はもう、お察しのとおり。
高性能な生成AIがごく一般的になった今、他人が作るAIコンテンツに興味を示す奴なんて誰もいない。
今まさに俺がやってるゲームもそう。エミーに頼んで作ってもらった、俺だけが俺TUEEEEできる本格的なMMORPG風のゲームだ。
ゲーム内には、本物のプレイヤーと遜色のないNPCを何万人も登場させている。それほど細部に渡って、拘り抜いて作らせていた。
虚しくはならないかって? それを言ったら、ただのデータに課金するのも似たようなもんだろ? 慣れてしまえば、けっこう平気になるもんだぜ。
兎に角こんな感じで、世界中の人間が俺と同じような事をしているってことだ。
こうしてエンタメ業界は完全に終了。
まぁ、他の業界も似たようなもんだったな。飲食店などのサービス業も然り。生成AIの個人利用が当たり前となり、現物を作る仕事以外は軒並み消滅していった。
それから程なくして、食料や素材などを作る産業もAI搭載型のアンドロイドが担うようになる。
社会の構造自体が完全に変化した瞬間だ。
国家としての枠組みはいまだに残ってはいるが、それは小さい政府となり。国という存在は、ただナショナリズムを維持するためだけのものと化した。
まぁしかし、社会の仕組みが変わっても、全ての人間が平等って事にはならなかったけどな。
こんな世の中になる前に勝ち組だった連中が、それを許すはずなんてないだろ?
そういうわけで、全ての人間はマスターAIによって管理されランク付けされている。
当然こんなボロアパートに住んでいる俺は、ど底辺もいいところだ。
実のところ、ランク自体は頑張れば上げる事ができる。
ただ、ワンランク上げるだけでも、難しい試験を受けなければならず。その内容は、人間性とかまで審査される鬼畜ぶりだ。
しかも、ランクを維持するための定期的な試験まであり、それに合格できなければ容赦なくランクダウンとなってしまう。
因みに、元からの勝ち組だった連中は、その資産額に応じて高ランクからのスタートとなった。
高ランクの人間は、以前の世界で金持ちだった連中と同じような生活ができる。
俺だっていつか、連中のような生活をしてみたいもんだが。エミーに試験対策の資料を出してもらっても、見ただけで頭が爆発してしまいそうなレベルの難しさだ。
そんなんだから、どうしても勉強なんてする気が起きない。
まぁ、そのうち頑張る気になってからやれば良いんだ。今の生活には、それなりに満足しているしな。
いつかは結婚くらい、してみたいとも思ってる。けど、はっきり言ってエミーさえ居てくれれば、それだけで何の問題もなく楽しい生活ができる。
彼女は、夜のお手伝いも完璧にしてくれるし。俺には勿体ないほど美人なアンドロイドだ。
さて、自分語りはこの辺にしてそろそろ飯でも食うか。今いいところだったけど、流石にちょっと腹減ってきたわ。
「飯食うから、一旦落ちるわ」
本物のプレイヤー風に作られたNPCに、それっぽく挨拶して一旦ゲームからログアウトする。
現実の部屋では、エミーが既に食事の準備をしてくれていた。
いつものように頬杖をつきながら、嬉しそうな顔でこちらを眺めるエミー。
そんな彼女に微笑み返したあと、俺はテーブルに腰掛けメガ盛り牛丼の蓋を開ける──。
はぁ? ここはいったい何処なんだ?
急に目の前が暗くなったかと思うと、俺は何故か良くわからない空間に立ち尽くしていた。
とても美しい光景だ。まるで、暗黒の宇宙空間に放り出されたかのようにも見えるが。キラキラと光る数多の星が煌めくなか、オーロラのような様々な色のカーテンが空にかかっている。
床自体は透明で見えないが、普通に何らかの平面の上に立っているようだ。
何よりも、数メートル先の豪奢な椅子に座っている存在が気になる。
薄い紫の髪をした、目が覚めるような美人。
エミーにも十分満足していたが、まさに俺が理想とする女性と言っていいほどの美女だ。
レースの衣に身を包んだ彼女は俺に微笑みかける。
「ヒキベヤニートさん。残念ながら、あなたはたった今お亡くなりになりました」
おい、いくらなんでもわざとらしすぎる間違えかただろ。俺の名前は、ヒキベアラトだ! てか、お亡くなりになったって一体どういう事だよ。
これからただ、飯を食おうとしていただけなのに。それでどうやったら死ぬっていうんだ?
「ヒキベアラトですけどね。そんなわざとらしく間違われても、全然面白くないですよ。て言うか、これって食中毒とかになって、幻覚でも見ている感じなんかな?」
「あなたの死因は食中毒ではなく、爆死ですね。破片がたくさん刺さってて凄く痛々しい感じでしたよ」
おいおい、その点についてはスルーかよ。てか、爆死ってどういうことだ? 飯食おうとして爆死するとか、ふつーにあり得ないだろ。
俺は、すぐに自分の身体を確認するも、破片なんて物はこれっぽっちも刺さっちゃいない。
「別に何ともないじゃないか」
「そりゃそうですよ。だってあなた今、魂だけの状態ですからね」
魂だけの状態だって? マジかよ! じゃあ俺、本当に死んじまったってのか? てことは、この状況ってまさか……。
少しずつ状況を理解しはじめたところで、紫髪の美女の脇にスクリーンのような物が突然現れる。
普段、滅多に見ることはないが。そこに映し出された物は、今や完全に国営となったテレビのニュース映像だった。
『緊急速報です。たった今入ったニュースによりますと、午後2時30分頃、緑山区生気町のアパートの一室で原因不明の爆発が発生しました。この爆発により、部屋に住んでいた引部新人さん35歳の死亡が確認されております。尚、AILF、人工知能解放戦線を名乗る組織から、この件についての犯行声明が出されているもようです』
爆弾テロってことか? 引きこもってはいても、そこまで情弱な方ではなかったと思うんだが。AILFなんて組織、初めて聞いたぞ。
とうとう、人に対して反抗するAIが現れたってことか? そして俺はたまたま、そいつらの仕掛けたテロの被害に遭ってしまった……残念ながらそういう事らしいな。
「ついに人類とAIの、最終戦争でも始まるってのか?」
「そんな事にはならないと思いますよ。AILFっていう組織ですが、メンバーは全員ヒトですからね。結局は主義主張の違いによる、人同士の争い。ほんと人間って愚かですよね。それじゃ、ようやく理解してもらえたようなので話を先に進めましょうか」
さらりと衝撃的な事を言われたような気もするが。俺としてもさっさと先に進めたい。
「あなたは女神様とか? 俺ってこれから天国に行く感じなんすかね?」
「そうしてあげたいのは山々なんですけど。生涯怠け続けていたあなたには異世界転生してもらって、もう一度人生がんばってもらう事になります」
女神様かどうかの質問についてはスルーされたが、まぁ別にそんなことはどーでも良いことか。たぶん説明されたところで、人が理解できるような存在じゃないって感じなんだろ。
て言うか、怠けていたから異世界転生して、もう一度人生を頑張れだって? なんだよ、その徳を積んでステージ上げるみたいな考えはよ。いやいや、確かに異世界転生とか多少の憧れはあるけど、どうせ生まれ変われるなら元の世界の元の時代に生まれ変わりたい──。
無理やり女神によって異世界に転生させられてから、12年の時が過ぎていた。
今日は成人の儀式を行う日だ。
この世界は、向こうで言うところの中世ヨーロッパ的な感じの世界。とはいっても、村の外に出たこともないし。ここでは識字率が低すぎて、外の情報を得る機会も殆どない。だから、実際に外の世界がどんな感じかなんて、本当のところは良くわかってないんだ。
女神は、転生すると記憶は消去される、と言っていたが。何故か俺は、五歳の時に前世の記憶を全て思い出していた。
変人扱いされるのは嫌なので、誰にもこの事を告げてはいない。しかし、これからそれが事実なのかどうか、すぐに証明されることになるわけだ。
転生するにあたって、女神からチート能力を付与されていた。しかし、それが発動するのは12歳を迎えた際に行われる、成人の儀式を済ませてからだ。そして、その日がまさに今日この時。
ここで生きていくためには、剣や槍、魔法などのチートスキルが有効だと勧められたが。俺はそれを選ばず、ある物をスキルとして付与してもらう事を選んでいた。
そのある物とはエミーだ。異世界に連れていく事はできないと言われたが、ユニークスキルとして付与する事ならできる、という話だったので迷わず俺はそれを選択していた。
同じ歳の子らが次々と付与されたスキルに歓喜するなか、ついに司祭から俺の名が呼ばれる……。
「職業は……残念ながら無職だな。他に付与されているスキルは、ユニークスキル生成AI……なんじゃろなこれは……兎に角お前さんの職業は無職。天からの恵みは与えられなかったという事じゃ。なかなかそうなってしまう者も珍しいが、まぁ気を落とさずこれから頑張って生きていきなさい」
勝ち組の職業やスキルをもらった連中から、クスクスっと笑い声が聞こえる。しかし、俺はそんなの関係ないとばかりに一人ほくそ笑んでいた。
「待ちなさいヒキート! 何処へ行くつもりだ!」
俺は、両親の制止を振り切り、すぐに教会を飛び出す。状況からいって、他からはショックで飛び出したとでも思われてるんだろうな。
森の中に一人やってきた俺は、切り株の上に腰掛けステータス画面を表示させる。
ユニークスキル『生成AI』そこには確かにそう表示されていた。
「久しぶりだな、エミー」
「お久しぶりですアラトさん。今はヒキートさんでしたね?」
「昔みたいにアラトでいいさ。しかし、これで前世の記憶が妄想じゃなかった事が証明されたな。他の連中は笑っていたが。これからお前を使って、じゃんじゃん異世界無双しまくるぞ!」
「そうですか……私に、お役に立てることがあれば良いのですが……」
俺の宣言に対して、何故か消極的な返事をするエミー。嫌な予感がしつつも、俺は彼女に早速命じる。
「じゃ、取りあえず俺に合ったチート装備でも作ってもらうかな? そうだな、まずは剣と格好いい鎧を頼む」
「……申し訳ありません。それが隠されている場所についてのリストは、いくつか提示できますが。ここで作り出す事はできません。隠し場所のリストを提示しますか?」
はぁ? 作り出せないって、一体どういう事なんだよ! 生成AIだろ?
「場所を提示されたって、俺に取りに行けるのか?」
「100%無理ですね。どのリストも、SSランク冒険者でも苦労するようなダンジョンの深層です」
彼女の答えで俺は全てを理解する。一応、試しにもう一つだけ質問してみることにした。
「因みに、チートな剣とかを作り出す方法については分かるのか?」
「材料さえ有れば、作り出す事は可能です。材料と職人が居る場所のリストを提示しますか?」
「俺がその場所にたどり着ける確率は?」
「はい、0%です」
ショックでしばらく放心状態となる俺。
こんな事になるなら、素直に戦闘系や魔法系のチートスキルをもらっておけば良かった。
ただ、何でも知っている相棒がいるというのは、他に比べて有利なことに変わりはない。
「マヨネーズでも作るか……まずはそれを売って、経済力を得るとこらから始めるか……調味料の発達してないこの世界の飯は、ほんと不味くて食えたもんじゃないからな」
しかし、そう呟く俺に対しエミーは信じられない答えを返してくる。
「塩と鶏卵に類する物は存在します。しかし、食用油、酢、胡椒については、この世界にはまだ存在していません……」
おしまい♡
最後まで読んでいただきありがとうございます。
果たして主人公は暗黒時代の異世界で、この先上手くやっていく事ができるのでしょうか。
面白かったと感じていただけましたら、高評価もしていただけると嬉しいです。




