泥沼の詩
泥濘に足を取られて転んでしまう
本当は、もっと走れたはずなのに
泥濘で転び沈んでしまう
もっと浅いと思っていたのに
ただの泥濘と思ったそれは、思うよりはるかに深く
まだまだ底には届かない
ただの土くれだと思ったそれが、身体をとらえて離さない
未だに底には届かない
底にたどり着くことのない底なし沼なのだと
止まっているのか沈んでいるのかもう知ることすらできないのだと
ようやく気付く
自分は大丈夫、自分はやれる
そんな思い込みをこの泥沼は無慈悲に無情に否定する
自分は抜け出せる、自分はこんなものじゃない
そんな思いは、この沼の中では身体より速く、重く沈められていく
自分はなぜこうなってしまったのか
思考を巡らせてみたところで意味はなく
自分はこんなところで終ってしまうのか
そんな問いも意味を持たない
抵抗することさえ許されず、ただ囚われることだけが許される
息を吸うことができず苦しくて
息を吐くこともできず涙する
受け入れてしまえば楽になるだろうか?
苦悶と悲嘆がそれを否定する
諦めてしまえば楽になるだろうか?
過去と未来への希望がそれを拒否する
否定と拒否がループし、考えることすら苦痛を伴う
けれどもそれをやめることが出来ない
底なしの沼の中、何も変化のない泥の中
自己を証明する術がそれしかないのだから
それしか許されていないのだから
苦痛、苦悶、悲嘆、絶望
それらを押し付けられながら終わりを祈る
誰の声も届かない泥の中で