天才と謳われた聖王が唯一甘えられる相手
「フォスティー、あれを飲ませろ!」
「はいはい。蜂蜜たっぷりのホットミルクだな、ちょっと待ってろ」
ミルクを温める。蜂蜜の甘い香りが広がる。
「フォスティー、肩が凝った!」
「子供なのに外遊びしないからだろう」
「齢五百歳だぞ!」
「ハーフエルフのお前ならまだ子供のうちだ。それ、遊んでこい」
使い魔の犬と外遊びをさせる。帰りは泥んこになっていた。
「フォスティー、神官どもがフォスティーのところに行くなとうるさい…」
「そりゃあ神学の天才と謳われた聖王猊下が魔女のところに通い詰めてたら文句も言われるさ」
巻き込んで申し訳ない。
「フォスティー、フォスティーも我が嫌いか?」
「王都の奴らになにか言われたか?だから聖都に引きこもっていればいいのに。…そんな泣きそうな目で見るな、好きだよ好きだから!」
そんな目で見ないで欲しい。いつでも笑っていて欲しい。
「フォスティー…どうしよう、神官たちが魔女狩りをしようとしている!止めても聞かぬ!」
「諦めるしかないだろう。魔女達が一斉に散り散りに逃げ出せば、この国も傾くというのに。…そうなれば、その時責任をおっ被せられるのは君か?」
それは嫌だ。いっそ連れ去りたい。
「そんなことはどうでもいい!我はとうに死ぬ覚悟はしている!その上でフォスティーに接してきた!問題はフォスティーと離れ離れになることだ!」
「…いっそ駆け落ちでもするかい?」
「…する!」
こうして王家の生まれでありながら先祖の血が濃く出てハーフエルフに生まれ、家族から疎まれた挙句出家させられた聖王と、とある公爵とその愛妾の子であったため、不義の子として魔女に二足三文で売られそのまま弟子として育てられようやく最近独り立ちしたばかりの魔女はそっと国を抜け出した。
「フォスティー、見てくれ。美味しそうな飴だ!」
「買うかい?」
「フォスティーの分も!我と二人で楽しもうぞ!」
「はいはい」
「フォスティー、愛しているぞ!」
その後、ハーフエルフのため寿命が長い聖王を一人ぼっちにしないため、フォスティーが長寿の薬を作って飲んで、二人はひっそりと永く幸せに暮らしましたとさ。