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EP29.翼の集いII-王国五大貴族

 四限目の授業が終わり、昼休みに入ったのでロゼッタの席に出向く。

 目の前で手を振っても何の反応も示さないのでたぶん、授業が終わったことにも気付いていない。

 というか、ロゼッタの机の上には参考書すら用意されていないではないか。


「おーい、ロゼッタさーん? 起きてますー?」


「……ええ、そうですわね」


「おーい、ロゼッタさーん? お昼ですよー?」


「……ええ、そうですわね」


 ノインの言う通りだった。ロゼッタはええ、そうですわねと言うだけの機械と化してしまっているので、少し質問を変えよう。


「おーい、ロゼッタさーん? 今日の下着の色は黒ですかー?」


「……ええ、そうですわね」


 質問を変えたところで聞いているはずもない。

 ここはお仕置きも兼ねて少しばかり驚かせよう。


「……ノイン確認を」


「ちょ、フレイア!?」


 止めてくれるな、ミレイユ……これは必要な確認なのだ。

 断じて興味本位というわけではない。

 私の指示を受けたノインがロゼッタの机の下に潜り込み確認作業を行い、結果を報告する。


「あ、あ、あ、あわわわわ……あ、あれは下着なの……!?」


 ちょ、ノインは何を見たの!?

 驚かそうとして逆に驚かされ、顔を真っ赤にするノイン。

 気になる……とてつもなく気になるがそれを自分で確かめる勇気はない。

 悔しいがここは戦力的撤退だ。


「とりあえず机を用意して昼食にしようか……」


 ロゼッタの机を中心にして、周りの机を借りてくっつける。

 大机を作ったらそれぞれにお弁当箱を取り出して昼食を始める。

 最近の私のお弁当は購買で買ったものとなっている。

 学院の寮暮らしとなり、お昼は自分で用意しなければならなくなったからだ。

 アレクシアがお弁当を作ってくれると言ってくれたのだが……それはなんとなく嫌だったので断った。


「ほら、ロゼッタさーん、あ~ん……」


「……ええ、そうむぐっ……でふわね」


 お弁当に入っていたミニトマトをロゼッタの口に放り込んであげるが、これでも戻ってこない。

 流石に少し心配になったのだが、私のあ~んを見ていたノインとミレイユが面白がってそれに続いた。

 ロゼッタの口に次々と自分たちのお弁当のおかずを放り込む。

 これには流石のロゼッタも我に返った。


「な、なんふぇすの(なんですの)!? ほれは(これは)!?」


 我に返ったなら口の中を空にしてから話してロゼッタ……口の中のものがこっちまで飛んできて朝、片付けたものを思い出すから。


「ロ、ロゼッタっていつもあんな下着つけてるの……?」


「は? なんのことです? 下着は毎日変えますが……着心地を考えると似た系統にはなりますね」


「あ、あわわわわ……ぶぱっ……」


 我に返り口の中のおかずを飲み込んだロゼッタは、意味が分からないといった様子だがノインの質問にしっかりと答えた。

 質問した側のノインはそれを聞いて鼻血を出して倒れてしまったが……そっとしておこう。

 ロゼッタが我に返ったならそちらの話を聞くのが先決だ。

 下着については機会があったらこっそり確認しよう。


「ロゼッタさ……今日って何かあった? あ、昨日でも」


「え、あ、い、いえ……別に何もありませんわ……」


 そこまで動揺し、目も逸らして何もないはずがないだろう。


「ミレイユさんどう思います~?」


「ん~、フレイアにはあれだけ言ったのに、自分のこととなると隠すのは感心しませんね~」


「ですよね~! ……さ、観念して全部話せ!」


「ちょ、お二方とも何を言って……うぐっ……わ、わかりました! は、話しますから……もう!」


 私とミレイユの話すまで絶対に逃がさないという鋼の意思を宿した眼光にロゼッタは観念し、話す気になったようだ。

 私の時はあれだけのことを言ってくれたのだから、私だって退く気はない。

 ……それにあの時のロゼッタの平手打ち……覚えているからね?


「今朝のことです……今週末にあるパーティに私も出席するようにとお父様に言われたのです……」


「……パーティ? ご馳走食べて他の参加者と談笑したりご馳走を食べたりする?」


「フレイア……ご馳走は出ると思うけどそれは食べ過ぎだよ……たぶんロゼッタが言ってるのは貴族の社交界ってことなんじゃない?」


「ミレイユの言う通りですわ……けれど、集まるのは貴族は貴族でも王国五大貴族……普通のパーティーとはわけが違いますわ」


 王国五大貴族……ロゼッタと初めて話をした日にその名を聞いたことを覚えている。

 あの時はお高そうなランチを前に流してしまっていたが、ロゼッタはその五大貴族の一角を担うホークリング家の生まれなのだ。

 私が思っていたようなパーティーにだってもちろん参加したことはあるのだろうが、五大貴族が集うパーティーとなるとその意味が変わってくるらしい。


「現王国評議会議長を当主が担い、実質的王国の支配を行っているオウルドット家。


 王国商業の流通の半分以上を仕切っているのはイーグルライン家。彼らのお陰で王国経済が回っているとも言われます。


 カナリートライス家は医療研究支援を大々的に行っています。今は魔法医療の研究もしていることで注目されていますわね。


 クロウクロス家についてはここ数年、公の場に姿を見せていないため……私もよくわかっておりません。ただ、彼らは他の五大貴族とは少し違っているらしいのですがはっきりしたことは何も……。


 そして……普段私たちが使う武器・装備の製造開発を担うホークリング家。王国軍の軍備の供給をしているのもホークリング家ですわ……」


 改めて説明されると王国五大貴族と呼ばれる理由がわかる。

 実質的に彼らこそがヴァン・エグセリオン王国であると言っても過言ではないだろう。

 ロゼッタはそんな彼らの一人……私たち庶民と違って家の重みを背負っているのだ。

 まあ、私に関してはその庶民とも貴族とも違う複雑な事情を背負っていることがつい昨日判明したのだが……それを今考える必要はない。

 しかし、思い返すと今までロゼッタとは雑な付き合いをしてきた気がする。

 今更それを咎められるなんてことはないと思うが……。


「……ロゼッタ様って呼んだ方がいい?」


「お父様に聞いた話なのですが王国内で行方不明になった者が他国に売り飛ばされている……なんてことがよくあるらしいですわ」


「やだなー! 私たち親友だもんね! 様付けなんて他人行儀必要ないもんね! うんうん!」


 なんで行方不明者の所在をお父様が知っているの……? なんてことは聞けない。聞きたくない……私はまだ売られたくはないから!


「だけど、王国五大貴族が集まるパーティーと言ってもロゼッタなら大丈夫だと思うけど……?」


 ミレイユの疑問はもっともだ。

 いつもの堂々としたロゼッタならば、たとえ相手が他の五大貴族でも変わらず対応できると思う。


翼の集い(ウイングス・パーティー)……今週末のパーティーはそう呼ばれています。年に数回定期的に行われる連絡会としての集まりならよいのですが……今回は緊急の招集、何か大事なことを話す場となるはずなのです……」


 ロゼッタは俯いて、辛そうにしている。

 ここまでロゼッタを追い詰める翼の集い(ウイングス・パーティー)とは一体どんなものだろうか。

 パーティーというものに今まで参加したことがないので、どんなことをする場なのか単純な興味はあるが、わざわざ重たい話を聞きたいとは誰だって思わない。


「大事なこと……私だったらご馳走だけ食べて後は適当に流すんだけどなあ……」


「ちょっとフレイア! ロゼッタはそれで悩んでいるのにそんな……」


「……ご馳走……食べたいですか?」


「えっ? た、食べれるならやっぱり食べたいけど……?」


「……食べれますわよ?」


 あ、あれれ~?

 ロゼッタさんの目が怖くなってるけどどうしたのかな?

 いくらなんでもロゼッタの代わりに私がそのパーティーに出るなんてできないだろうし、たとえ変装なんてしてもすぐバレるだろうし、ミレイユにお叱りを受けたように今は軽口を叩くタイミングではなかった。

 そのせいで怒らせてしまったか。


「ご、ごめん! 真剣に悩んでたのに冗談を言って……お、怒った?」


「まさか、怒るなんてとんでもない! フレイアはご馳走が食べられるなら私と共にパーティーに出てくださるのですよね?」


「い……いやいやいや!? 私なんかが出ていいパーティーじゃないでしょ!?」


「貴族の集まり……それも王国内で最も権力を持つ者たちの。付き人が一人いたところで何も問題ありませんわ」


 顔を上げたロゼッタは笑っているが、目が笑っていない。

 本気で私を連れて行くという目をしている。

 ロゼッタに口実を与えてしまった少し前の自分を殴りたい。

 このままでは確実に道連れにされてしまう。


「そ、そりゃあ親友の頼みだから一緒に行ってあげたいけど貴族のマナーとか全然知らないしさ? やっぱり厳しいんじゃないかなーって……」


「我が家で今日から週末までみっちり仕込めば問題ないでしょう。フレイアは寮生ですし外泊も問題ないですし」


「ちょーっと待って、一応身の安全を考えてのことなんだけど!? それにアレクシアの護衛だってあるんだよ!?」


「アレクシアにも来てもらえばいいのでは? フレイアの護衛ならフレイアの行先に付いて行くのは当然ですし……警備も万全、寝泊まりする部屋だっていくらでもあります」


 ロゼッタの笑顔からは絶対に逃がさないという意思を感じる。

 逃がさないと思って、逃げられなかったのは私だった。

 隣にいるミレイユに横目で助けを求めるが、私が悪いといった目ですぐに視線を逸らされてしまった。

 最後の頼みの綱であるノインは……まだ倒れて気を失ったままだった。

 終わった……。


「アハハ……。ゴチソウウレシイナー……」


 私の悲壮な喜びにご満悦の表情で頷くロゼッタ。

 私はまた一つ、自分から面倒事を増やしてしまったのだった。

なかなか二日に一度投稿できない……。

EP2最後まで改稿しました。

ぜひ一読いただければ嬉しいです!

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