EP02.フレイア争奪戦
フレイア・エテルファルシア:(15)
ノイン・メイヴィア:(15)
クレストール・リヒテンタルト:(44)
アレクシア・ベル・フルール:(32)
記念すべき学院生活二日目の朝。
私、フレイア・エテルファルシアが珍しく余裕を持って登校できたと思ったら、まだホームルームも始まっていないというのに厄介事が舞い込んできた。
いつもの遅刻寸前、ギリギリの時間に登校していればこの事態を避けられたかもしれないと思うと、溜息も出る。
どうしていつもより早い時間に登校しているのかというと、昨日の今日で住んでいる地域とか家の場所を教えた覚えはまったくないのだが……何故か朝早くにノインが私の家にいて、そのノインに起こされたのだからちょっとしたホラーだ。
当然のようにお母さんと談笑を交わし、私の日常に溶け込んでいるノイン。
甲斐甲斐しく朝の世話をしてくれるので、それが普通に思えてしまって、そのまま任せてしまう私も大概だろうが……。
そのおかげで通学路を全力ダッシュすることなく、余裕を持って登校できたのだ。
正直、目を開けた時、目の前にノインの笑顔があった時はらしくもなく、か弱い悲鳴を家中に響かせ、心臓も止まるかと思ったが……きっと……何か……そう……たまたま……通りがかっただけだろう。
昨日、下校の際に話した時はノインの家は私の家の反対方向だと言っていたはずだし……。
………………うん、これ以上、考えるのはよそう……。
しかし、そんな朝ホラーよりも今は目の前の厄介事だ。
「ノインさん! いい加減フレイア様のことは諦めてください!」
「ダ、ダメです! フ、フレイアは私のパ、パ、パ、パートナーなんですから!」
目の前で言い争いをするのは件のノインとクラスメイトのロゼッタ。
それは教室に入ってすぐのことだった。
…
……
………
朝、登校してノインと一緒に教室に入室した時だ。
自分の席に着席するよりも早く、クラスメイトの女生徒が私の元にぶっ飛んできた。
くるりと先を巻いた長いワインレッドの髪を踊らせるように優雅に振舞い、物語に出てくるお嬢様のような口調で話す彼女の名前は、ロゼッタ・ホークリング。
彼女も初・中等部からこのバルメデアラ魔法学院に在籍していたため顔に見覚えはあったのだが、クラスメイトの自己紹介を最後の少ししか聞けていなかったため名前を知らなかった。
「誰だっけ……?」
そう私が聞くと、名前を知らなかったことを責めるようなこともなく、丁寧な自己紹介をしてくれた。
「私、ロゼッタ・ホークリングと申します。以後、お見知りおきを」
スカートの裾を摘み、礼をするその姿はさながら本物の貴族令嬢そのものだ。
そして、ロゼッタは続けてこう言ってきた。
「ぜひともフレイア様には私と魔法戦のパートナーを組んで頂きたいのです!!」
私の手を強引に取りつつ、あまりに目をキラキラさせながらそう言うので、少し気圧されてしまったのだが、私が返事をするよりも先にノインが横から割って入った。
「ダ、ダメです! フ、フレイアは私のパートナーなんですから……!」
「……あなたは確か、クラス委員長のノインさんでしたわよね? それはどういうことなのでしょうか?」
ぎろりと睨み合うノインとロゼッタの間に、火花が散っているような幻視が見える。
せっかく余裕を持って登校できた朝早くに面倒事を起こさないで欲しいと願うが、なんとなくこの祈りは届くべき場所に届かない気がする。
「き、昨日のお昼休みのことです……フ、フレイア私とパートナーになってくれるって言ってくれました……!」
「フレイア様……それは本当でしょうか?」
ついに私に話が回ってきてしまった。
あまり話に加わりたくはないのだが一応、私も当事者なので仕方ない。……本当に仕方ないか?
「えー、あー、うん。まあ、言った気はするかも……」
確かに昨日、お昼休みにノインと話をした。
昼食を摂っている最中だったのでどこか空返事をしていた気がするが、そんな約束をしていた……気がする。
いや、しっかりと覚えてはいるのだ。
しかし、私は魔法を一つしか使えず、ノインはそれでも承知してくれたのだが勢いで約束をしてしまったところがある。
だから、もう少ししっかりと考えて、答えを出した方がいいと思うのだ。
「フ、フレイア!?」
私が目を泳がせた途端、涙目になってすり寄ってくるノイン。
ちょ、近い! 近いから!
それにハイライトさんどこ行っちゃったの!?
「ノインさん……あなた本当にフレイア様に了承を得られたのかしら?」
本当のことを言っているのか疑わしいといった目でノインを睨むロゼッタ。
血みどろの恋愛小説に登場するライバルヒロインのような迫力がある。
「ほ、本当でう! うぅ……か、噛んじゃった……」
人と話すのが苦手なノインがこんなにも必死になってロゼッタと言い争いをしているのだ、舌も噛んでしまうだろう。
「い、いや、ノインと約束したのは本当なんだけど……その、なんていうか、その場の勢いで了承しちゃったというか……」
「ほらみなさい! これではフレイア様にパートナーを組むように強いたようなものですわ!」
「ち、違います……! そ、そんなことありません! ……ね? そ、そうだよね、フレイア?」
「そ、そう! 昨日の先生との模擬試験を見て覚えていると思うんだけど私、一つしか使える魔法がなくて……それでせっかく組んでくれたパートナーの足を引っ張るのは本意じゃなくて、ノインにはもう一度しっかりと考えて欲しいんだ」
パンと手を叩き話の流れを切り替える。
私が一つの魔法しか使えないのは本当で、それを理解していない状態でパートナーを組むのはどこか騙しているような感じがして気が引ける。
パートナーに誘ってくれて本当に嬉しいのだが、もう一度考え直した方がいいと思うのだ。
「フ、フレイア……わ、私を見捨てるの!?」
「人聞きの悪い!? 私はノインのためを思って言っているの。あ、それはロゼッタも同じだからね? それに期限は来週までなんだからゆっくり考えよう?」
そう、時間は来週までたっぷりとあるのだから、今答えを急く必要はないのだ。
昨日、ノインの話を聞いた限りではパートナーを組んでくれる人がいるのなら、別に私でなくてもいいように言ってたし、最悪私は一人でも何とかなると楽観的に考えているので、ノインとロゼッタでパートナーを組むなんてのもいいかもしれない。
「考える必要などありませんわ……私はすでにフレイア様と組むと決めたのですから……!」
「ま、魔法なんて関係ない……わ、私もフレイアと組みたいの……!」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、まずは話を聞け。考えるのを放棄するな。
魔法だって魔法戦を行うのだから関係なくはないのだ。
「と、とりあえず落ち着こう? 他のみんなもこっち見てるし……」
二人になんとか落ち着くよう説得を試みるが、逆にどんどんヒートアップするばかり。
終いには虚ろな目で闇を纏い始めたノインと、それに対するロゼッタは炎を纏う。
これ、本当に幻視ですよね……?
教室内で魔法なんて使いませんよね?
「も、元は私と約束してたのに……フ、フレイアが無かったように言うのが悪い……!」
「なんて言い方をするんですか!? フレイア様は私たちのことを思って言って下さっているのですよ!?」
それを言われると弱いのだが……私が二人のことを思っているとをわかってるならまずは落ち着こう?
こうなるのがわかっていたなら素直にノインと組むことになっていると、最初にロゼッタの誘いを断ればよかったか。
今からそう言ってもいいのだが……。
「そんなに言い争いをするのなら、最初に約束してたのはノインだし……」
「あー! あー! フレイア様、それ以上はいけませんわ! 自分の御心のまま……屈してはいけませんわ!!!」
「フ、フレイア……!」
何に屈するというのか……。
むしろ最初にした約束を果たそうとしてるだけで、この無用な争いを収めようとしているのだが?
やはり、今更片方に寄ろうとしても、もう片方がそれを許してはくれない。
私は完全に対応を誤ったようだ。
そんな不毛なやり取りが続き、教室の時計を確認するとかれこれ15分以上は経っていた。
これ以上、この争いの中心にはいたくはない。
昨日はよく空気を読んでいたチャイム君に5分ぐらい早く鳴ってくれてもいいんだよ、と念じるが当然鳴ることはない。
今日のチャイム君の調子はいまひとつのようで、私は肩を落とす。
「貴様たちうるさいぞ! 騒がしいやりとりが廊下まで響いているのだぞ!?」
大声で怒鳴りながら教室に入ってきたのはクレストール先生。このクラスの担任教師だ。
もう少し早く来てくれれば完璧だったのだが、それでもこの争いを止めてくれるなら大歓迎だ。
「「(ご、)ごめんなさい……」」
クレストール先生の介入に冷静を取り戻したノインとロゼッタの二人はすぐに謝った。
いとも簡単に二人の言い争いを止めてみせたクレストール先生。
やはり先生というのはこういう時に頼りになる大人でなくては。
「む、フレイア・エテルファルシア……貴様もいたのか」
「先生助かりました、二人ともヒートアップして困ってたんですよ!」
「……ヒートアップだと? この騒ぎ、貴様が先導したんじゃないだろうな?」
「い、いやいや、そんなことは……むしろ私は巻き込まれた側というか……」
眉間に深い皺を刻み私を疑うクレストール先生に弁明をする。
残念なことに無関係とは言えないが、断じて先導なんてしていない。
「巻き込まれたということは当事者の一人ではあった訳だ……本当のことを言えば今ならまだ温情で済ませよう」
「ちょ、私がしたって決めつけないで下さいよ!?」
「昨日の行いに続き、今日も騒ぎを起こして……それを思えば当然だろう。反省したまえ」
は、反論できない……。
昨日は遅刻から始まり、午後の授業ではクレストール先生との模擬試験で決闘まがいのことをしたのだ。
要注意人物として目を付けられていても仕方ないと自分でも思う。
そしてその要注意人物が、ほんの次の日には騒ぎの中にいるのだから疑いもするか。
不服ではあるが、それだけのことを私はしてしまったのだ。
そう思っていると朝のホームルームの時間を告げるチャイムが鳴った。
席に着くようにとクレストール先生の号令もかかり、それぞれの席に戻るとようやく朝のホームルームが始まった。
まだ一限目の授業も始まっていないというのに、すでに半端ではない疲労感。
その疲労感の原因がまだ収束していないという事実に私は絶望にする。
きっと、これから授業が終わり休み時間が来るたびに、二人が騒ぎを起こすところを容易に想像できる。
今日は休み時間無しのぶっ続けで授業をしてくれたりしないだろうかなどと思うが、それがありえないことはわかりきっている。
「フレイア・エテルファルシア! いい加減返事をしろ!」
「!? ひゃい!」
クレストール先生が出欠を取っていることにすら気がつかないほど考え込んでしまっていた。
そのせいでびっくりして思わず変な声で返事をし、またクラスメイトたちの笑い者になってしまったではないか。
これはノインとロゼッタ、二人のせいだ。
後で謝ってもらおう……と思ったができれば今日はもう二人に関わりたくないことを思い出す。
こうして私の憂鬱な一日が幕を開けたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昨日は入学式とホームルームが一日のほとんどを占めていたため、実質的に今日が授業初日となった。
朝の騒ぎのことがどうしても脳裏にちらついて、ハラハラしながらの授業となった。
そしてやってきた休み時間……再び二人が言い争いを始め、騒ぎを起こすことを覚悟したのだが……。
それは杞憂に終わった。
ノインはクラス委員長のため専科の先生の手伝いを、ロゼッタは他のクラスメイトたちと談笑をしている。
正直、拍子抜けである。
「ねえ、フレイアさん! フレイアさんって本当に昨日使った魔法しか使えないの?」
次の授業に使用する参考書の準備を済ませ、教室のクラスメイトたち(主にノインとロゼッタだが)の様子を窺っているとクラスメイトの一人が話しかけてきた。
短くまとめられたショートボブの髪を、左側だけ耳にかけて後ろに流し、アシンメトリーにした髪型。
髪の深い青色は日差しを受けてグラデーションを生み出し、とてもオシャレに見える。
彼女と私の髪の長さは似ているので今度、私も真似してみたいと思える髪型だ。
いきなり話しかけられ少しびっくりしたが、彼女のほがらかな笑顔を見ると何故か緊張せずに話せた。
「うん、本当だよ。私が自力で発動できるのは昨日、先生との模擬試験で見せた≪祝福≫の魔法だけ。あとは装備に最初から備わっている標準魔法だけになるかな?」
「昨日のクレストール先生の魔法……≪炎の竜巻≫もすごかったけど、フレイアさんの使う魔法もすごくて気になっちゃって! でも一つしか自由に使える魔法がないのは少し大変そうだけど……」
「そうなのそうなの。気にしないようにはしてるんだけど、やっぱり実技の授業とか先生に白い目で見られたりとか大変で……」
ああ、素晴らしい。
これこそが入学前、私が思い描いた理想の学院生活ではないか?
昨日の遅刻とクレストール先生との模擬試験、他のクラスメイトたちに距離を置かれてしまったのではないかと心配した。
だがロゼッタに今話をしているこの子。
特に心配するようなことはなかった……むしろ、そこに興味を持って話しかけてくれたようだ。
「あっ、ご、ごめんねフレイアさん……私、次の授業の準備しなきゃだから……」
そそくさと去っていく青髪の彼女の名は……聞いていなかった。
最初に聞いておくべきだった……が、どうしてそそくさと去って行ってしまったのだろうか。
ねえ、ノインにロゼッタ。
ノインはさっきまで先生の手伝いをしていたはずだし、ロゼッタも楽しそうに話していたではないか。
それがどうして私の背後で怒気を放っているのか。
そんなにシンクロして実は二人とも仲がいいんでしょう?
もう二人でパートナーを組んで解決でいいと思う。
「ノイン、ロゼッタ……次に今みたいなことをしたらパートナー、組まないから」
「ち、違うの……! フ、フレイアに敵が迫ってるかもって……」
「教室に敵なんているか!」
彼女は同じ学院、同じ教室で魔法を学ぶという私たちと同じ目的を持ったクラスメイトなのだ。
敵であるはずがないだろう。
「わ、私はノインさんがフレイア様に近づこうとしたので仕方なく……」
「友達なんだから近くに来るぐらいするでしょ!? ノインが私に何かするとでも思ったの!?」
「と、友達……!」
友達という言葉に反応し、感激の涙を流すノイン。
私たちは友達なのだから、今後ストーカーみたいなことをするのはやめようね?
そして、不服そうな顔をするロゼッタだが、揉め事を起こさないのならあなたもいつでも話をしに来ていいんだからね?
学院生活二日目にしてあまりに癖が強すぎる友達が二人もできてしまった。
トモダチイッパイワタシウレシイナ。
…
……
………
「フレイア様! お昼をご一緒しませんか?」
全力でお断りしたい。
午前の授業が全て終わり先生が退室し、お昼休みになった瞬間にはノインとロゼッタの二人が私の机の前に立っていた。
その魔法どうすれば使えるのか、私にも教えて欲しい。
教えてくれたらあなたたちから逃げることができるから。
「ダ、ダメ……! フ、フレイアは私とお昼を食べるの!」
「ノインさんまたあなたですの!? まったく、どこまで私の邪魔をすれば気が済むのかしら!」
「また喧嘩をするなら私一人で食べるけど?」
「ノインさん、あなたもご一緒にお昼をどうですか?」
「き、奇遇……わ、私もロゼッタ……さんと食べたいと思ってた」
最初から(上辺だけではあるが)それぐらい仲良くしてくれればいいのに……と思うが、今はさっさとお昼にしたい気分だ。
誰かさんたちのせいで無駄なエネルギーを使って、お腹がぺこぺこだから。
そう思い、昨日のようにノインと机をくっつけてお昼の用意をしようとしたところ。
「お待ちください! せっかく三人でお昼にするのですから中庭でのランチにしませんか?」
「ん? 私はいいけど……ノインもそれでいい?」
「ガ、ガ、ガ、中庭……頑張ります……」
昼食を中庭で摂るだけなのだから何も頑張る必要は無いと思うのだが……。
頑張るとのことなので三人で中庭に移動するため教室を出た。
―――中庭。
購買の隣に設けられた学院生たちの憩いの場、中庭。
そこは授業で息詰まってしまった生徒たちが気分転換できるようにと作られたスペースで、食事もできるようにテーブルや椅子も備え付けられている。
季節の花に囲まれ、シンプルながらほんのりとロイヤリティを感じさせるそれらが合わさり、ナチュラルスタイルの優しい空間に仕上がっている。
だがそのためか、常に人気があり、席は限られているため取り合いとなる。
昼休みに入ってすぐに来ても、考えていることはみんな同じなため、それを解決するために今は基本的に何日も前からの予約制になっている。
なので、こうして私たちのようにふらっとやってきても席を確保できることはまずないのだ。
「わかってはいたけど、やっぱり全席埋まってるね。中庭は人気だって聞いてたし……諦めて教室に戻ろうか」
「その必要はありませんわ! こちらにどうぞ」
自信満々にロゼッタが両手で指し示したのは中庭の最奥、一番大きなテーブル。
学院生がお昼休みに摂るにしては、豪華すぎるランチがすでにテーブルに並べられている。
誰の姿も見えないとはいえ、これではすでに他の学院生が予約しているに違いない。
すでにランチが並んでいることを疑問に思わないのかとは思うが、お嬢様っぽいロゼッタのことなので中庭の予約制を知らないのかもしれない。
「そのテーブルはもうランチ並んでるし、ダメだってロゼッタ」
「いえ、ここは私が予約していた席だから大丈夫ですわ!」
「うぇ!? それって本当なの?」
まさかの言葉に驚き、確認を重ねる私。
中庭の予約倍率はかなり高く、入学二日目の一年生が予約できるとは思えない。
それにロゼッタが予約している席ということはテーブルに並んだお高そうなランチも……。
「ええ、もちろんですわ」
信じられないのであれば、と差し出されたのは席に備え付けられた予約票。
それを受け取って確認してみると……。
………………おい。
「……この席買ったな? 金で」
予約票には先に予約していたらしき人の名前が黒く塗りつぶされて、下に小さくロゼッタの名前が書いてある。
「ええ、先の時間に先約を入れていた方から買わせていただきました!」
「それってアリなの……?」
「残念ながらお金で解決できないことは少ないのです……」
やめて、そんな超現実的な話なんて聞きたくないよ!?
学生らしくもっと青春だとか色恋話だとか、せめて勉強のこととかを話しませんか!?
しかし、お金で席を買い取ったとは……いよいよ思っていたことが現実味を帯びる。
「あの、もう気になるから聞いちゃうけどロゼッタっていいとこのお嬢様だったりするの?」
「あら? みな様ホークリングの名を聞くだけで大体のことを察せられますのでフレイア様も御存じかと……」
「んんん? ホークリング……」
ホークリング……ホークリング……ホーク、リング……。
ああ、思い出した。王国五大貴族の一角を担う名家か。
そうかそうか、なるほどね……。
「それってお嬢様もお嬢様! 超お嬢様じゃん!?」
驚きすぎて語彙力さんが失踪してしまった。
そうではないかと予想はしていたが本当にお嬢様――貴族令嬢だったとは……。
そのあたかもなお嬢様っぽい話し方と、強気な姿勢にキャラ作りをしている可能性を疑ってしまった。
「お嬢様だなんて……よく言われますけど……。それよりも今は先にランチにしませんか? 冷めてしまっては作っていただいた方たちに申し訳ないですわ」
「言われるんだ……。あの、一応言っておくと私、お金とかあまりないんだけど……」
「御心配なく。こちらのお支払いは済んでいますのでフレイア様たちは存分に楽しんでいただければ!」
「そ、それならせっかくだしご馳走になろうかな!?」
何の嫌味もなく笑顔で言ってのけたロゼッタ……これがノブレス・オブリージュというやつだろうか。
お金の心配もなくロゼッタがそういうのであれば、断る理由もないのでご馳走になるが……あとで怖い人たちに囲まれたりしませんよね?
すでに席の買収も済んでしまったことなのでロゼッタに促されるまま私とノインは席に座り、私の対面にロゼッタも着席したのでランチを始める。
とりあえず目に入ったものを一口だけ口に運ぶが、確かめる必要もなく美味しい。
食べる手がどんどん進み、止まらない。うん、美味しい。語彙力さんはまだ失踪中だ。
隣に座るノインもその美味しさに感動したのだろう小刻みに震えている。
しばらくは無言でランチに集中していたが、だいぶお腹も膨れてきたのでいいところで話を切り出す。
「あのさ、まだ聞いてなかったんだけど……ロゼッタはどうして私とパートナーを組みたいの?」
「よくぞ聞いてくださいました! 私、昨日のフレイア様と先生の模擬試験での戦いに感銘を受けましたの!」
その目を宝石のようにキラキラさせながら、昨日の模擬試験のことについて語るロゼッタ。
私も感銘などと言われては悪い気はしない。
「バルメデアラ魔法学院の先生方は王国各地から集められた指折りの秀才……その先生方に学生が勝つなんてこと、まずありえません。……ですが、フレイア様はそれを私たちに見せてくれたのです!」
隣で食べているノインもうんうんと頷く。
バルメデアラ魔法学院が名門校だということは知っているが私の場合、初等部から学院に通っているため自分で選んだわけではない。
お母さんがここを選んで通わせてくれているため学院の事情に疎く、そこまだとは知らなかったのだ。
しかし、昨日の模擬試験、クレストール先生と実際に戦った私にはわかる。
クレストール先生は確かに強かった。
「その姿はまるで戦女神……あの王国最強の騎士、アレクシア・ベル・フルールと同じ気高さを私はフレイア様の内に見たのです!」
そこまで壮大に語られてしまうと気恥ずかしくなってくる。
憧れにしているアレクシア・ベル・フルールと同じ気高さだなどと言われては、少しは彼女に近づいているのかもしれないと勘違いをしてしまいそうになる。
「あー! あー! ありがとう! 十分わかったからもういいかな! これ以上は恥ずかしくて死にたくなるから!」
まだ語りたいことがあるというような不服そうな顔をするロゼッタ。
気持ちは嬉しいのだが、これ以上は本当に私の顔から火が吹き出してしまう。
「……ロ、ロゼッタ……さんに理由があるようにわ、私にだって理由があります……!」
「ノイン……」
声量はあまり大きくなく静かに、だが確かな覚悟を感じさせる声でノインが話に切り込む。
真っ直ぐなその目には強い闘志が宿っているようにも見える。
「ロ、ロゼッタ……さん……わ、私とフレイアを賭けたデュ、決闘をして下さい……!」
「ノインさん……いいでしょう、その決闘このロゼッタ・ホークリングが受けて立ちます!」
「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも! どうしてそうなるの!?」
二人とも私とパートナーを組みたいのはわかるが、さっきも言った通り期限まではまだ時間がある。
それまでに話し合って穏便に決めることができるはずだ。
「お、お互いに譲れないことがあるな決闘で決着をつける……コ、KOJIKIにも書いてある……!」
「そうです。KOJIKIにも書いてあるのですから、この決闘こそが私たちの運命だったのでしょう……たとえフレイア様でも私たちを止めることはできません!」
「う、うん……!」
う、うん?
話が一気に飛躍したせいで、二人が何を言っているのか理解できない。
森羅万象世界の全てが記されているという全記録……KOJIKI。
それにたどり着いたとされる者は過去・現在において一人もいないとされている。
そのため、真にその中身を識る者はいないはず……なのだが、何故か彼女たちの中ではそういった共通認識があるらしい。
私が知らないだけなのだろうか……。
「時間は放課後。場所は……先生にお願いして模擬戦闘場をお借りしましょう」
てきぱきと決闘の確認を行う二人。
何故こんなことになってしまったのか、私にはわからない。
しかし、話をするだけではお互いに平行線のまま。勝負事で決着をつけることで、互いに納得できるならば、それも悪くないのかもしれない。
……二人の言うKOJIKIにも書いてあるみたいだし……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ノインさん、よく逃げずにこの場に来ましたね……!」
「そ、それは私の台詞……!」
午後のホームルームを終えて放課後、私たち三人は模擬戦闘場に来ていた。
昨日、私とクレストール先生で模擬試験を行った場所なので記憶に新しく、あれでけ騒いでいたので二人の決闘を知った一部のクラスメイトたちも観戦に来ている。
中央に立つノインとロゼッタは激しい闘気を放ち、今すぐにでも戦闘を開始できるといった様相をしている。
昼休みが終わってからの午後の時間は、実に静かなものだった。
ノインとロゼッタの放つピリピリとした雰囲気が教室中を包み、その中ではみんな話をできる空気ではく、当人たちが口を開くこともなかった。
「この決闘開始の合図はフレイア様にお任せしたいと思うのですがいかがでしょう?」
「い、異議なし……!」
「うえっ、わ、私!? まあ、合図ぐらいなら別にいいけどさ……」
少しだけ昨日のノインの気持ちがわかったような気がする。
これから私が出す合図で二人の戦いが始まり、どちらかが勝ち、どちらかが負けるのだ。
……いや、やっぱりわりとどうでもいいかも……。
二人の内のどちらかが、しばらくの私の魔法戦のパートナーに決まるだけ。
たとえ片方とはパートナーを組めずともこれからの学院生活、共に過ごす友達であることには何ら変わりはないのだ。
「それじゃあ二人とも、どっちが勝っても恨みっこ無しだよ?」
「う、うん……!」
「はい!」
私とクラスメイトたちが見守る中で二人はそれぞれの私用装備を構える。
ノインは短い柄の先に魔法の発動を補助する宝珠が嵌められ、さらにそれを守るとともに攻撃の役割もできるヘッドガードが備えられた魔法短杖を構え、対するロゼッタは大きな砲身に様々なカスタムパーツが付けられ、本人の背丈程もある巨大な魔法機銃を両手と肩口に掛けられたストラップで支えることで、それを持ち上げ構えている。
二人の装備を見た限りでは、貴族らしくお高そうな装備を持つロゼッタが有利であるように見えるが、勝負はまだ始まってすらいないのだからわからない。
それを決める戦いがたった今から始まるのだから。
「――――決闘、開始ーーーっ!」
私の出した合図で二人が一斉に動いた。
二人の戦いに邪魔にならないよう距離を取りつつ、それを見守る。
先制攻撃で戦いの流れを自分に寄せようと魔法を発動しようとするノインだが、そこにロゼッタの魔法機銃から放たれる魔法弾が襲いかかり、逆に先制攻撃を許してしまう。
たまらずノインは魔法の発動を中断、横っ飛びに回避して≪防御≫での防御に切り替え魔法弾を防ぐ。
「あなた意外に動けますのね! ですがこれは……? さあ、私とフレイア様のために踊ってくださいませ!」
どこか悪役が言いそうな言葉と共に、魔法機銃から放つ魔法弾の種類を切り替えるシリンダーマガジンを回転させ、射撃を再開するロゼッタ。
次に放たれた魔法弾は先ほど放たれた魔法弾とは異なり、ノインの≪防御≫を貫通しノインを襲った。
「きゃっ……ああっー!?」
被弾し悲鳴を上げるノイン。
逸れた魔法弾は地面を削り、激しい土煙が舞い上がりノインの姿を隠した。
「私の魔法機銃は6基のシリンダーマガジンを備えています……マガジンにはそれぞれ別の魔法が込められた魔法弾倉が装填されていて、最大で6種の魔法弾を使い分けることができるのです!」
勝ち誇ったように説明をするロゼッタ。
ロゼッタは最初に放った通常の魔法弾でノインの出方を見つつ防御を誘い、ノインが防御に回ったのを確認すると相手の防御に対して効果を発揮する貫通魔法弾に切り替えて攻撃。
遠距離射撃で相手の動きを自分の思うように支配しつつ、有効打を与える……それはまるで相手を無理矢理に踊らせているようにも見える。
出鼻を挫かれたノインはこれから巻き返すことができるのだろうか。
2種類の魔法弾でさえ簡単に追い込まれてしまった厳しい状況なのに、ロゼッタが言うには他にまだ4種類もの魔法弾が控えている。
魔法弾が何種類あるのかわかっても、それぞれの魔法弾の特性を話すほどロゼッタも優しくはない。 最悪の場合、ノインは何もできず、そのままロゼッタに制圧されてしまうことも考えられるが……。
「―――それは……残像……! わ、私はここです!」
「っ!? どうし……あぐっ!?」
一体何が起きたのか。
今しがた射撃を受けたはずのノインが魔法短杖でロゼッタを背後から殴りつけたのだ。
一瞬で近づける距離ではなかったし、被弾したはずのノインは傷一つなくピンピンしている。
「さ、最初の魔法はちゃんと発動していた……! お、踊っていたのはあなた……!」
「な、なんですって!?」
「ロ、ロゼッタ……さんの射撃を受けたのは私の≪影分身≫……ま、舞い上がった土煙を利用して≪透明化≫を発動……う、後ろを取った……!」
どうやらノインは最初から攻撃魔法で先制しようとしてたのではなく、≪影分身≫を発動していたらしい。
魔法で生み出した残像と上手くすり替わり、逆にロゼッタの手の内を明かし真の先制をしてみせた。
意気揚々と説明をしていたロゼッタは苦々しい表情を浮かべている。
有利に見えたロゼッタにノインは先手を取った……やはりこの勝負まだどちらが勝つかわからない。
二人は一度互いに距離を取り、戦いを仕切り直した。
「でしたらっ……!」
今度はロゼッタが先に動いた。
再びシリンダーマガジンを回転させ、別の魔法弾を装填したようだ。
そして、ノインの上空を狙って一発の魔法弾を発射した。
「そ、それじゃ私は倒せない……!」
ノインも再び≪防御≫を発動して攻撃に備えるが、その直上でロゼッタが発射した魔法弾が炸裂した。
炸裂した魔法弾はノインを囲むように周囲に炎をまき散らし、その中にノインを閉じ込めてしまった。
「焼夷魔法弾……どんなに上手く私の目を欺こうとも動ける範囲を制限しての攻撃ならばどうでしょう!?」
「……っ! ≪突風刃≫……!」
炎に囲まれその熱さに汗を浮かべるノインは風の魔法で消火を試みる。
ノインを中心とし円を描くように一陣の風が吹き広がるが、それだけ。
炎は消えることなくさらに勢いを増し、土煙を舞わせただけで終わった。
ロゼッタが発射した焼夷弾は燃焼剤をばら撒き、それに着火させることで炎を起こすため、火元である燃焼剤を何とかしなければすぐに炎は勢いを取り戻してしまうのだ。
ロゼッタの狙い通り、動きを制限されてしまったノインに追撃が加わる。
ノインがどう動こうとも逃れられないよう、炎が囲む範囲全てを標的とした掃討射撃……ロゼッタが最初に使用した通常魔法弾の嵐がノインを襲った。
逃れようと必死に狭い範囲を移動しながら≪防御≫を展開するノイン。
「さあ、このままどちらかの魔力が尽きるまで魔力比べですわ!」
なんという豪快な勝負だろうか。
ノインの動きに対応できないと悟ったロゼッタは、動ける範囲を制限して強制的にどちらの魔力量が上かを比べる魔力量勝負を仕掛けたのだ。
これならば確実に決着がつけられるし、先ほどのように貫通魔法弾で舞わせてしまった土煙を利用されることもない。
≪防御≫を維持できなくなればそのまま魔法弾がノインを襲い、ロゼッタの勝ち。
魔法弾を撃ち続ける魔力が尽きればロゼッタは攻撃手段を失い、ノインの勝ち。
勝負の趣旨を素早く理解したノインは動き回るのを止め、≪防御≫の薄いバリアを自身の前方にだけ展開するように調整。
ロゼッタの魔法弾は直線でしか襲ってこないため、これで魔力消費を大きく抑えることができると踏んだのだろう。
こうして二人の長い魔力量比べが始まった―――。
…
……
………
5分程経ち、観戦している私たちも魔法機銃の掃射音に耳がイカれてきた頃だ。
依然として≪防御≫を展開し続けるノインと、魔法弾を撃ち続けるロゼッタ。
≪防御≫を部分的に展開できるノインの方が優勢に思えるが、しかし、ノインは周囲の炎の熱によって体力も奪われ続けている。
ノインが額を伝う汗を拭おうとした一瞬、視線が外れたのをロゼッタは見逃さなかった。
「―――私の……勝ちですわ!」
ロゼッタは射撃を続けながらもシリンダーマガジンを回転させ魔法弾を切り替えた。
先ほどまでは直線的に飛んでいた魔法弾が突如として弧を描いた。
「……!」
停滞していた戦いに起きた突然の変化にノインの反応が遅れた。
前方にだけ展開されていた≪防御≫を躱して魔法弾がノインの元に次々と飛び込み―――爆発した。
魔力比べなどと自分から言いながらもロゼッタは、勝負を仕掛ける瞬間を虎視眈々と狙っていたのだ。
「ノ、ノイン……」
決着の瞬間は思ったよりもあっさりとしたものだった。
爆発の衝撃で発生した硝煙がノインの姿を隠し、ここからでは無事を確認できない。
ノインの無事を確かめに行こうと一歩踏み出した時、――硝煙の中から光が漏れた。
「……≪反射≫……!」
決着はまだついていなかった。
反応が遅れた分、最初の何発かを被弾してしまったようだが、ノインは≪反射≫の魔法を発動し身を守っていたのだ。
そして、≪反射≫でその場に留まっていた魔法弾が反転、反射された魔法弾はロゼッタを襲う。
「きゃあああーーー!?!?!???」
自身が撃ち込んだはずの魔法弾を、なすすべもなくその身で受けるロゼッタ。
ここまでで二人はかなりの魔力を使い、互いに攻撃も食らいボロボロの状態になり、肩で息をしている。
傍から見ても立っているのがやっとだとわかる。
あと一撃でも攻撃を受ければ互いに倒れてしまうだろう。
その一撃を加えようと魔法機銃の引き金を引くロゼッタだが、魔法弾は発射されない。
―――魔力切れだ。
だが、それはノインも同じだった。
ここで攻撃魔法を発動すれば、ロゼッタにはそれを避ける体力は残っていないだろう。
なのに魔法を発動しないのは、発動できないから。
ロゼッタと同じようにノインも、相手に止めを刺すための魔力がもう残っていないということだ。
「あ、あはは……。あはははは……!」
「ふふっ……。ふふふふふ!」
「えっ、二人ともどうしたの? いきなり笑い出して怖いんだけど……」
ノインとロゼッタは俯き、不敵に笑いながら一歩ずつゆっくりと前に進み、互いの距離を詰めていく。
笑い続ける二人が何を考えているのか私には理解できず、狂気に憑りつかれたように見えて恐怖する。
「……あと一撃で勝てるんです……」
「……ま、魔力が尽きたなら……」
「「相手を物理で殴ればいい……!」」
二人はついに互いの攻撃が届く交戦距離に入った。
「私は……負けません!」
最後の一撃のためにと残しておいたごく少量の魔力を使い、ロゼッタは一瞬だけ≪重力≫を発動させた。
一瞬でも十分。重力の縛りから解かれた魔法機銃を振り上げ、あとは戻った重力に任せるだけなのだから。
「フレイアは私と……!」
ノインも考えていることは同じだった。
ロゼッタと同じように残していた魔力で≪加速≫の魔法を一瞬だけ発動し、魔法短杖で殴りかかるノイン。
魔法の効果が切れてもあとは慣性に任せて攻撃が届くのを祈るのみ。
そして、ついにフレイアを巡る二人の戦いに決着がついた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「い、いひゃいよ……フレイア……」
「も、もう少し優しくお願いしますわ」
「いいから二人とも動かないで……ちゃんと消毒できないでしょ?」
勝負に勝ったのはノインだった。
戦いを見る限りでは二人の実力はほとんど拮抗していたのだが……先にロゼッタが倒れた。
最後に魔法機銃を振りかぶったまではいいが、しっかりと振り上げきれず≪重力≫の魔法が切れた瞬間、その重さに振り回され後ろに倒れた。
そして、上から覆いかぶさるように倒れてきたノインにカウントを取られ、魔法戦の決着というにはどこか違うような気もするがそのままノインの勝ちとなった。
今は怪我をした二人を保健室に移動させて、介抱しているところだ。
私一人では二人を同時に連れてくるのは難しかったのだが午前中、私に話しかけて来てくれた青髪の彼女が手伝ってくれたの往復せずに済んだ。
一緒に運んでくれたお礼を言うと彼女笑ってすぐに去って行ってしまったので、また名前を聞きそびれてしまった。
「私……負けたんですのね……」
「二人とも同じぐらいの実力だったとは思うけど、決闘の決着としてはノインの勝ちかな」
「こ、これでフレイアは正式にわ、私のパートナー……!」
勝負に負け悔しい気持ちはあるだろうが、そこまでではない……むしろすっきりしたような表情で笑うロゼッタ。
そして、勝負に勝ったノインは晴れやかな笑顔で私の太股に顔をすりすりしていたので鉄拳を喰らわせた。
同性とはいえ乙女の太股にすりすりされるのは気持ちが悪い。
パートナーを解消してもよかったのだから、たんこぶ一つで済んだことを感謝して欲しいぐらいだ。
二人の介抱を一通り終え、ほっとしたのか自然と笑っていた。
それにつられて二人も笑う。
「ねえ、明日も三人で一緒にお昼食べない?」
「ええ! ぜひとも!」
「た、食べる……!」
決闘を通じて二人のわだかまりも解消されたようでよかった。
これで明日からの学院生活、二人の喧嘩に悩まされることはないだろう。
いつの間にか保健室内が赤く色づいてることに気が付き、そちらに目を向けると真っ赤に燃える夕日が空と雲を照らしとても綺麗だった。
そして、不意に鳴ったチャイムが私たちに下校の時間を思い出させた。
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12/15_改稿Ver.1.3.0
12/19_改稿Ver.1.5.0




