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EP24.中間試験X-託された力

 目を覚ました私はベッドに横になっていた。

 起きたばかりの覚醒しきらない頭でぼんやりと思う。


 ………………これ、何度目だ?


 何故か私は気がつくとベッドに横になっていることがある。

 女神教会との一件と、アレクシアとの模擬戦を行った時だ。

 そのどちらの状況とも、その場に居合わせたクレストール先生たちが気を失った私を学院寮にある自室のベッドに運んでくれたのだ。

 なので今回で三度目になるだろうか。

 周りを見回すと馴染みはないが知っている室内。

 ここは中間試験の期間中、西の森テルミナで魔物狩りを行うための拠点にと、みんなで借りた宿の部屋だ。

 すうすうと小さくだが確かに聞こえた寝息の方に顔を向けると、隣のベッドに眠るノイン。

 その安らかな寝顔を見るに、どうやらロゼッタとミレイユの二人は、私がいなくても無事に魔晶石を採取し持ち帰ることができたようだ。

 私たちはノインを助けることができた……その安心感にそっと胸をなでおろした。


「ようやく目を覚ましたか……」


 大きな音を立てないようにと、静かに扉を開けて部屋に入ってきたのはクレストール先生。

 その手には水桶とタオルを持っているのが見える。

 クレストール先生は机に水桶を置くと持って来たタオルを水で濡らし、ノインの額に乗せてあるタオルと取り替えた。


「……ノインを看ててくれてありがとうございます」


「ふん、夜戦従軍の経験がこんな所で役に立とうとはな……さして学ぶことなど無いと思っていた軍役だったが、教え子の命を救えたのなら悪くなかったのかもしれない」


「そんな経験なくても先生なら大丈夫ですよ」


「適当なことを言うな。どんなに努力をしようとも報われないことはいくらでもある……だから、少しでも可能性を求めて様々な経験を重ねるのだ」


 どんなに努力を重ねようとも報われないこと……それはきっと昔、お母さんと一緒の研究室にいた時のことだろう。

 努力で全てが解決するとは思わないし、クレストール先生のように経験を重ねることができるのは素敵なことだと思う。

 だけど、過去に区切りを付けられなというのは酷く悲しいことに思える。

 入学初日に私はクレストール先生に過去と決別するべきだと簡単に言ってしまったが、たった15年しか生きていない私のような子供であればすっぱりと忘れるか、別のことに打ち込んだりすることで区切れるのだろう。

 しかし、クレストール先生のような大人になっても私は同じことを言えるだろうか。

 自身の限界を理解してしまった時……私は本当にそれと向き合えるだろうか。

 私がその答えを出すには、今はまだ早すぎる。


「……大人って難しいですね」


「ああ、貴様もいずれそうなる。……たぶんな」


 そこは自信を持ってくださいよ。


「……ところでロゼッタとミレイユの姿が見えませんけど、二人はどうしてますか?」


「無事じゃなかったのは貴様だけだ。二人なら特に怪我という怪我もなく貴様を()ぶって帰ってきた。他に問題も無いようなので今は試験ため、魔物狩りに出ている」


「二人とも無事でよかった……」


「まったく、どこがよいものか! 自分の身とはいえ貴様はもう少し自分を大切にしろ! 挙句最後には倒れるのだから質が悪い……」


「あ、あはは……流石に三回も倒れたら自分でもそう思います……」


 アレクシアの時は模擬戦だったからいいとしても、女神教会の時と今回に関してはみんながいてくれなければ間違いなく私は死んでいただろう。

 こんなことを続けていれば、本当にいつか死んでしまうかもしれない。

 そうならないよう、アレクシアに師事してもらっているというのに未だに私は何もできない……弱いままだ。


「……聞いていいか?」


「? ……なんですか?」


 先ほどまでの柔らかな雰囲気とは打って変わり、一つ声を落とした真剣な表情で話を切り出してきたクレストール先生。

 いつも真面目なクレストール先生なので話の内容から柔らかいと言っているだけだが、いつもと違う声の感じから大事な話だということがわかる。


「貴様は最初に言っていた≪祝福≫の魔法しか使えない……その認識は今でも間違っていないか?」


「はい……アレクシアには無属性の魔法なら使えるかも、と言われましたが使ったことはありません」


「では、鍾乳洞内で強大な水棲魔物と戦ったと聞いたがどうやって倒したか覚えているか?」


「えっと、あまり言いたくはないんですが……私、魔物の攻撃を避け損ねて頭打って気絶しちゃったんですよね……。だから、倒したのは私以外の二人だと思うんですけど……あ、でも変な夢?は見ました」


「夢だと? それはどんな?」


「もう一人の私――グラスに逢いました」


 私はクレストール先生に夢の内容を話した。

 気を失っていたせいかはっきりとは覚えていないので、どこかぼんやりとした話になってしまったが、私とグラスは違うこと、グラスが私に力を貸してくれると言ったこと……お母さんとグラスが話せるように約束したのは二人だけの秘密にした。


「そんなことが……」


「先生はこれを……ただの夢だと思いますか?」


「何も聞いていなければ否定していたかもしれないが……フレイア、魔物を倒したのは貴様だ」


「………………はぇ?」


 クレストール先生が変なことを言うのだから、思わず私も変な声を出してしまった。

 気を失って倒れていたはずの私があれほど強大な魔物を倒す?

 普通に考えればあり得ない話だ。

 気を失っていたのだから当然だが、その時の記憶もない。

 そうなるとロゼッタとミレイユの二人がなんとか機転を利かしその魔物を倒したが、私が倒したことにしてクレストール先生に取り計らうようにしたのではないだろうか。


「二人の話では貴様が詠唱魔法を用いて、一撃でその魔物を倒したそうだ」


「嘘をつくならもっと信憑性のある嘘をついてよ、二人とも……」


「私もにわかには信じがたかったが……嘘かどうかは貴様が魔法を使ってみればわかるだろう?」


「それはまあ……やるだけタダなのでやりますけど……」


 そう言って私は上体を起こし、精神を集中するが異変に気付く。

 いつもより感じる魔力が多く、普段感じている魔力とは別の、異質の魔力を感じる。

 その魔力を合わせると体感で普段の二倍程になっているだろうか。

 もしかしたら本当に他の魔法が使えるかもしれないと、そのまま手のひらを上に向けて魔力を集中する。


「……≪(ファイア)≫」


 掌中には特に何の変化も起きない。

 四源属性である火の基本魔法≪(ファイア)≫の発動を試みたがやはり発動しない。

 少し期待してしまったがやはりダメなようだ。


「やっぱり他の魔法なんて使えませんって……」


「……風属性の魔法を使ってみろ」


「? まあ、気の済むまで付き合いますよ」


 どうしてクレストール先生が風属性の魔法を指定したのかはわからないが、再び掌中に魔力を集中する。

 すると、まだ魔法は発動していないはずなのに弱い風が逆巻き始めた。

 不安になり、クレストール先生の顔を確かめると力強く頷いてくれた。

 胸のざわつきはぬぐえないが、クレストール先生がそう言うのならもうどうにでもなってしまえ……!


「……≪(ウインド)≫!」


 一陣の風が舞い上がり、私の髪を撫で揺らしながら部屋の開いた窓から吹き抜けていった。

 初めて発動する≪祝福≫以外の魔法の感覚に戸惑い、言葉に詰まる。


「これ……私……魔法……使えた、の?」


「確かに今のは≪(ウインド)≫の魔法……その様子では隠してたわけではなさそうだな」


「わざわざ隠すなんてことしませんよ! ……でもどうして≪(ウインド)≫の魔法は発動したんだろう?」


「貴様が魔物のを倒す際に使用していた詠唱魔法が風属性の≪雷撃剣(ライトニングブレード)≫だそうだ。だから風属性ならばと思ってな」


「そんな記憶無いし……詠唱だって覚えてないんだけど……今まで使えなかったのにどうしてだろう……?」


 そう疑問を口にした私の頭の中に直接声が響く。

 それはよく聞き覚えのある声だがそうではない声――グラスだ。


(私の力……全部は貸せないけれど一つだけ貸してあげる。……悪いことに使ったらすぐに取り上げるから)


「グラス……うん、悪いことには使わないよ」


「独り言など言ってどうした、気持ち悪い顔をしているぞ」


 ついに頭がおかしくなったのかと引きつった顔をするクレストール先生だが、うるさい放っておけ。

 グラスと逢えたのは私の妄想ではなかった。

 女神教会司教のシンが何故グラスのことを知っていたのかは解せぬが、確かに私の中にグラスはいたのだ。

 グラスと話した限りでは私に対し、まだ複雑な気持ちを残しているのだろうが、それでも私を信じて力を貸してくれたのだから顔も緩んでしまう。

 だって、ずっと私を見守ってくれていたお姉ちゃんと、初めてしっかりと話せたのだから。

 だから、私もグラスの思いに応えられるよう――約束を守れるように頑張る。


「先生は兄弟っていますか?」


「なんだ藪から棒に……まあ、姉が一人いるが、それがどうした?」


「ふふふ、私にもお姉ちゃんがいるんです。私と同じ顔してるのにノインみたいにコミュ障なんですよ?」


「同じ顔……双子か? 貴様のようなイカれた奴が二人もいたらと思うとフィエレスの心労も相当なものだろうな」


 自分の教え子をイカれたとは酷すぎないか!?

 私に対するこの口の悪ささえどうにかなれば本当にいい先生だと思うのだが、どうにもならない。


「……もういいです。喉が渇いたので水下さい」


「水桶の水ならすぐだぞ?」


「飲めるか!? とびきり冷えたのお願いしますよ」


「貴様……私は教師だぞ? それを顎で使うなど……いや、不毛だな。少し待っていろ」


 そう言うと先生は部屋を出て行ってしまった。

 ずっとノインを看てくれていたクレストール先生のことなので、頼めば持ってきてくれるだろうとは思ったがこんなにもあっさり引き下がられると拍子抜けである。

 クレストール先生が戻るのを待つ間、少し疲れたので目を閉じるとすぐに眠気がやってきた。

 それはベッドの心地よさと合わさり、抗い難いものとなる。

 これは自分から頼んでおいてなんだが、起きたまま待つのは無理そうだ。

 なので、すみませんクレストール先生。それから、おやすみなさい。

EP2改稿中……改めて読んでみると読みにくくて泣いた……。

中間試験はこれにて終了。

ベッドで寝ていた人はもちろん……。

(追記)1000PV達成!読んでくれた方々本当にありがとうございます!

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