EP15.中間試験I-新しい友達
フレイア・エテルファルシア:(15)
ノイン・メイヴィア:(15)
ロゼッタ・ホークリング:(15)
クレストール・リヒテンタルト:(44)
アレクシアの厳しい指導が放課後に行われるようになってから、いくらか経った。
季節も初夏へと移り変わり、学院内では早くも夏服を着用する生徒の姿も見られるぐらいだ。
かくいう私も、その1人だ。
少しなら動かしても問題ないぐらいには、両肩の怪我の調子は良くなってきたのだが、流石にあれほどの大怪我、まだ普段通りとまではいかない。
なので、制服のブレザーを着る必要がない夏服ならば、怪我を庇って準備する必要もなく、少しばかり朝の準備の時間に余裕ができるのだ。
アレクシアの護衛もまだ続いていた。
再び授業に出席できるようになったため、以前ほど付きっきりというわけではないが、朝と夕方からは大体一緒に過ごしているはずだ。
相変わらずアレクシアの作る料理は、美味しくて腹が立つ。
怪我をしてからほぼ毎食、食事の世話をしてもらっていたため一度だけ、たまにはお返しにと私が料理を振舞おうとしたのだが、ノインに泣きながら止められてしまった。
世界の終わりがやってくる、などとほざいていたがそんなわけないだろう。
基本的な料理を作れるぐらいの腕はある、きっと私の作る料理を独り占めにしたいとか考えたのだろう、まったく、ノインには困ったものだ。
アレクシアの指導はなかなかに熾烈を極めていた。
魔力操作が主な課題である私はまだいい。
静かに精神を集中し、魔力の流れを見極めて、それを自らの元に集める。
集中力がかなり必要な修行ではあるが、怪我をすることはないのだから。
ノインとロゼッタは私とは異なる修行をしていた。
そもそも、私が抱える問題を二人は抱えていないので当然と言えば当然である。
二人の修行は戦闘そのものだ。
私たちはお母さんを助けるために、女神教会と事を構えるつもりでいる。
戦闘経験の貧しさはそのまま、死に直結する。
学生の私たちでは戦闘の経験など、無いに等しいのだ。
だから、二人はアレクシアを相手に戦闘し、経験を重ねているのだ。
しかし、相手は王国軍騎士団長のアレクシア。
毎日、一方的に蹂躙され、ボロボロにされていた。
最近では戦闘経験よりもタフさに磨きがかかっているように思えるが、まあ、それも重要なことだろう……。
そして、今はクレストール先生の授業中である。
アレクシアのような強引な指導じゃないので、今では癒しのひと時になりつつある。
授業内容もわかりやすく、実はアレクシアの指導を受けるよりもクレストール先生に補習でもしてもらった方がいいのではないかと思うが、クレストール先生曰く、私の授業を受けて補習が必要ならば退学して別の道に進んだ方がいい、とのこと。
クレストール先生もなかなかに厳しい指導者だった。
「本日の授業はここまでとしよう。来週は中間試験期間となる。学院の説明会や入学案内等で散々目にしたであろうが、理解できていない者のために改めて説明しようと思う」
授業終了のチャイムが鳴る10分前。
クレストール先生が早めに授業を切り上げて、そう言った。
相変わらず私の方を見て話しているが、今回はまったくもってその通りであるため、そのご高説をありがたく賜るとしよう。
魔法に関しての授業なら、自分で選んだことなのでしっかり聞くのだが、学院に関することとなると途端に興味が失せてしまい、入学案内等もお母さんに任せっきりにして、自分ではほとんど読んでいないのだ。
「来週一週間は中間試験期間。一週間学院外に出て魔物狩りを行ってもらう。魔物の種類や数によって得点が決められており、既定の点数、10ポイントに達した者たちから合格となる。得点の低い魔物を複数狩ってもいいし、高得点となる大物に集中してもいい。なお、合格した者は残りの試験期間は休日として休んでいいこととなっている。質問はあるか?」
「は、はい、先生……」
「ノイン・メイヴィア、珍しいな。何がわからない?」
「そ、その説明じゃ、フ、フレイアはまだ理解できてないと思います」
「たしかに簡潔に説明し過ぎたかもしれん……もう少し詳しく話そう」
ノインは私の心を読めるのかなあ? 偉いねえ……後で覚えていろよ……。
クレストール先生はもっと自信を持って! そんな追加で説明が必要な生徒なんてね? うん、なくても大丈夫だったし……たぶん。
「学院外での魔物狩りについては、常にパートナーと一緒に行動をしてもらう。教師陣も見回りを行うとはいえ、万が一が無いとは言い切れないからだ。そして、他のパーティと組んでの魔物狩りも許可されている。これは、実際の戦闘ではいくつかのパーティを集めた"隊"での行動を行うことがあるからだ。だが、複数パーティで行動を行う場合は点数に気をつけることだ。最低でもパートナーがいるため二人で20ポイントが必要、他のパーティと組めばさらに倍となる40ポイントが必要になるからだ」
なるほど、確かにポイントを気にしておかなければ、終了間際で既定のポイントに足りていないとなったら悲惨だろう。
最悪の場合、パーティ同士での戦闘になってしまうかもしれない。
「以上が中間試験の説明となるが、わからないところはあったかフレイア・エテルファルシア?」
「いえ、特には……ってなんで私だけに聞くんですか!?」
「それは自分の胸に手を当てて考えるべきだな。では皆の健闘を祈る」
クレストール先生の言葉に合わせてチャイム君が仕事を果たす。
私の反論を許さない完璧な授業の時間配分……これが優秀な教師というやつなのか……。
とりあえずクレストール先生はいいとして、ノインを呼んでお話をしなければならない。
「ノ~イ~ン~、おいで?」
「フ、フレイア……こ、怖いよ……」
「こんなに笑顔なのに怖いはずないでしょう? ……早く来い」
「ひえっ……」
恐る恐るこちらにやってきたノインに、たった今出た話題の、中間試験についての意見を求める。
「ノインはどうするのがいいと思う?」
「え、えっと……や、やるなら一思いに……」
「はあ? なんのこと?」
「……え? さ、さっきのお仕置きじゃないの……?」
「ふーん、お仕置きが欲しかったんだー? それは今度アレクシアに頼んであげるから心配しないでね? ……今の流れは中間試験どうするかってことでしょ……」
そんなにお仕置きが欲しいなら、いつでもアレクシアに相手してもらえるように伝えとくからね、ノイン!
それよりも今は、中間試験をどうやって合格するかだ。
不合格になっても追試があるとはいえ、一発合格するに越したことはないのだから。
「あ、あばば……お、鬼教官は勘弁して……」
「わかったから、ノインは中間試験どうしたいか早く意見を出して!」
「フ、フレイアが怪我でじ、実質サポートしかできないから1P~3Pぐらいの比較的狩りやすい魔物をけ、堅実に狩るべきだと思う……」
確かにノインの言う通り、両腕が制限された状態の私では前に出ることができない。
サポートに回るとはいえ、ノイン一人で戦うようなもの、強敵が相手ではノインの負担が大きくなりすぎる。
「ノインが一人で20Pの魔物を倒して私に楽をさせてくれてもいいんだよ?」
「フ、フレイア……20Pの魔物ってし、大海蛇レベルだけど……」
「うっ……流石に無理そうか……」
大海蛇……ランクAに分類される強さを持つ、大海に住まう強大な魔物。
その巨体から繰り出される体当たりを喰らえば一瞬でミンチにされてしまうし、大波に流されてもアウト。
学生二人で相手にするには死にに行くようなものだ。
「だけど、1Pの魔物で20体、2Pの魔物でも10体……3Pなら7体かあ……」
「5Pの魔物を8体で40P……などどうでしょうか?」
いつの間に来たのかロゼッタともう一人、入学したての頃、せっかく私に話しかけてくれたのにノインとロゼッタが追い払ってしまったクラスメイトが寄って来ていた。
「3Pを狩るよりも1体増えるけど、複数人で行動できることを考えると悪くないと思うよ?」
「えっと……あなたはたしか入学したての時に、私に話しかけてくれた人だよね?」
「覚えててくれたんだ! あの時はごめんね。ノインとロゼッタに睨まれちゃったら怖くて……」
ちゃんと覚えているとも。
二人の次に私に話しかけてくれた人、友達になろうと笑顔で話しかけてくれたのだろう。
優しい笑顔のイメージが強く残っている。
最近では私が教室に入る前、ノインとロゼッタの二人とよく一緒にいるイメージだ。
「こっちこそ、二人がご迷惑をおかけしました……」
「あの時は興奮してしまって……反省して今は私とパートナーを組んでいるんです!」
「ミレイユ・カーテイラです。今度こそよろしくね、フレイア!」
「うん、こちらこそ!」
ようやく……ようやくだ、初めてできたまともな友達。
ノインもロゼッタも友達には変わりないが、まともかと言われれば否定させてもらう。
ミレイユは孤立しかけていた私にも、笑顔で話しかけてくれたまともな人。
これからはミレイユだけが私の癒しだ。
「それでどうかな? 私たち四人でパーティを組んで40Pを目指すのは」
「えっと、お誘いは嬉しいんだけど私の両腕こんな感じだから、ミレイユに迷惑かけちゃうかも……」
「そんなの大丈夫だって! それに私たち三人で前を固めて、フレイアの魔法支援がもらえればすぐにでも片付くって!」
ミレイユ……!
彼女はなんて優しいのだろうか。お荷物の私をこんなにも気遣ってくれるとは感動で泣きそう。
そうだ、最近皆私のことをぞんざいに扱い過ぎなのだ。
少しはミレイユのように人の気持ちを考えられる人になりましょう!
「み、ミレイユがそう言ってくれるなら……甘えてもいいかな?」
「もっちろん、大丈夫だよ!」
「フ、フレイア……私にも甘えていいんだよ?」
「たまにはペットを甘やかすのも飼い主の務めですわ!」
「ミレイユ~!」
嬉しくなってミレイユの胸に飛び込む私。
他の二人は……別にいいです。
「うわっ!? もうフレイアったら、腕痛くないの?」
「うん、ミレイユに甘えるためだったら全然大丈夫!」
「もう……ダメだよ、無茶したら?」
「はーい!」
ミレイユ優しすぎる。好き。大好き。もっと甘やかして?
もうミレイユのペットでいいかもしれないぐらいだ。
他の二人がミレイユを恨めしそうに見ているが、大丈夫。
何があってもミレイユは私が守るからね!
「ぐ、ぐぎぎ……」
「許せませんわ……」
「もう、皆落ち着いてよ! パーティ組むことに決まったんだったら役割の確認をしないと!」
「そうだね……少しはしゃぎすぎたかも。私は今回腕がこんなんだから、後衛でのサポートに回らせてもらうかな」
「わ、私は魔法で敵の攪乱をする……さ、最前衛……!」
「では、私が敵へのメイン火力を担当しましょう。前衛ですわね」
「私も前衛かな。ロゼッタと連携して撃ち漏らしを叩くね」
ん……? 三人とも前衛? それは少しおかしくないか?
ノインとはパートナーを組むときに話をした。
私の魔法の効果を考えると、万能な立ち回りが可能なノインを後ろからサポートしつつ、自分も適宜前に出る、後衛寄りの立ち回りになることを。
なのでノインが前衛、私が後衛はわかっていた。
しかし、ロゼッタとミレイユは?
ロゼッタの火力を後ろから吐こうとすると前衛を巻き込む危険があるため、ロゼッタが前衛になるのはわかる。
だから、普通に考えるならミレイユも後衛になるのではないだろうか?
「えっと……ロゼッタとミレイユは二人とも前衛……なの?」
「あはは……ロゼッタがぐいぐい来るものだから先にOK出しちゃって……」
「私としたことが二人とも前衛でしたの……」
ミレイユが苦笑し始めた辺りでなんとなく察してしまった。
私の時もそうだった。
お互いの戦い方、魔法の相性など何も聞かないうちに、ノインと決闘するのだからせっかちもいいところだ。
ただ、今回に関しては頼もしい前衛の三人が私を守って戦ってくれるのだからありがたい限りだ。
「まあ、組んじゃったものは仕方ないね……。とりあえず今回はこのフォーメーションで頑張って行こうか!」
「う、うん……!」
「はいですわ!」
「オッケー!」
皆のやる気は十分、これであとは来週の中間試験を全力で頑張るだけだろう。
アレクシアの指導や女神教会のことなど、不安の種は多くあるが今は直前まで迫った中間試験に集中しなければならない。
それこそ、アレクシアから受けた指導の成果を見せる時だ。
そう思うと大事な試験だというのに、早く来週が来てくれないかと楽しみに思ってしまった。
ニャオハは立ちましたか?(震え
怖くてまだネタバレ見れません……




