【第二話】……お寿司屋の風景の巻
今日もこの店は夕方から開店。
でもお客様は概ね夜からお越しになります。
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「そこまでやるんですか!?」
「それくらいしなきゃダメですよ! むしろ普通です!」
このお客様は渋い。所謂金払いが悪いので、私がよくテーブルに補助に来ている。
このお客様との間で何のお話かと言えば、中小企業から求人広告の依頼を頂くために、着ているシャツの胸のあたりの開きを意図的に大きくするということだった。
「ちなみにこれに勘付いていて、営業最終日とかまで契約を焦らすお客さんもいるのよ」
「……はぁ、大変ですね」
どうやら、首の下周りの露出度は、ち密に計算されているらしく、その細かな数値には教えて貰えなかった。
当時スマホが一般的でなく、また防犯カメラも少なかった時代でもある。
「他にも、特〇攻撃部隊ってのがあるの」
「なですかそれ!?」
「超大口の経営者さまに向けて、わが社選りすぐりのエリート美女部隊を動員するの」
「え? それはなんでもアリなのです?」
「もちろんですよ! なんといっても特別攻〇部隊ですから! もちろん彼女たちの成功報酬も凄いですよ♪」
今日はトマトジュースも弾む。
自己の自慢だけでなく、このように表の社会ではしゃべりにくい話をして下さるお客様は大好物だった。
そして、しばらくして仲良くなったときに名刺を頂いた。
Σ( ̄□ ̄|||) ぇ?www
電車や街角でCMを沢山見かける大手求人サービスの会社だった。
町でこの会社のCMをみると特別〇撃という単語を思い出す!
特別攻撃を受ける接待先は、もうウハウハに違いない。
堅物そうに見える企業でもそんなことしてるんだな……
もうこの仕事を辞めた後に、他の仕事で寿司屋に行った時。
右隣の老紳士が、若い女性にお寿司を口に運んでもらっていた。
「はい会長あーんして」
「あ~ん♪」
「あと社長、昨日はお宅に泊めて頂き誠にありがとうございました」
「ウフフ❤ 今日も泊りにくる? 来てよフフフ」
……こういうのを見かけるたびに【特〇攻撃部隊】というエリート部隊の存在を思い出してしまうのである。
……むしろ、いくらの契約飲まされたんや!?www(←気になるw