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人気川柳作家が来る!

 県立青葉高校の職員室はざわついていた。川澄清音が来校する日がやってきたからである。特にソワソワしているのは、

「教頭、落ち着いてください」

 高杉は教頭を必死になだめていた。

「これが落ち着いてられますか? あの人気川柳作家の清音先生が本校に来られるんですよ」

 教頭はなんとか落ち着こうと喫煙室へと向かった。入れ替わる様に佐藤が職員室に入って来た。

「大丈夫なんでしょうか、教頭。御本人見たら気絶しそうな緊張ぶりで」

「生徒達は『川柳のオバさんが来るってよ』ってノリで、SNSに上げたらウケるかなぁって」

「中々、短期間で川柳に興味持たないですよね」

「まあ、百句程集まったから良しとしましょう」

 高杉は教頭のパソコンを見て清音が青葉高校に向かっていると言うメールを確認し、何時に生徒達を体育館に移動させるかを佐藤と相談した。


 青葉高校の最寄駅に到着した清音は改札を出てサングラスをかけた。

「高校時代と大して変化無いって思ってます?」

 清音は緑色の小型車から声がした事で「社長だな」と運転席に歩み寄った。

「悪いわねえ。社長令嬢に運転手なんかさせて」

 運転席にいたのは華蓮である。

「全ては先生のお陰ですから。それより、早く乗ってください」

 清音は青葉高校までの街並を堪能しながら句を捻ろうと思っていたが、今野の娘である華蓮の好意を無碍に出来ないなと後部座席のドアを開けた。

「お母様からたっぷりタクシー料金もらいなよ」

 清音がシートベルトを装着したのを確認して、華蓮はサイドブレーキをおろした。

「なんか懐かしいな」

 華蓮は「いい気なもんだな」と右ウインカーを点滅させた。


 青葉高校の第一学習室に菊田の姿があった。清音より一足先に来校し、高杉らと最終の打ち合わせを行なっていたのである。

「高杉先生、ちょっと」

 菊田は高杉に耳打ちし、教頭や佐藤から離れた。

「どうした? 菊田君」

「俺、学校ってトコがどうも苦手で」

「今の君は生徒じゃないんだから」

「頭では分かってんですけど、特に職員室ってのは呼び出し食らった記憶しかなくて」

 高杉は教頭が清音の熱狂的ファンである事と佐藤の友人について、菊田に耳打ちした。

「マジすか? なんか気が楽になりました」

 菊田のスマホにLINEが来た。

「清音先生、到着したみたいっす」

 菊田はスマホ画面を高杉に見せ、教頭や佐藤にも伝えた。

「教頭、開始時間も迫ってますので校内放送で生徒達を体育館に集めてください」

「私がですか?」

「教頭が呼び掛けた方が説得力ありますので、僕は先に体育館行ってますので」

「じや、私が菊田さんと駐車場向かいます」

「お願いします。清音先生にはここで少し休んでもらってください」

 佐藤はニヤリと高杉の右肩を叩いて菊田と共に駐車場へ、教頭は放送室へ、そして高杉は体育館へ向かいながら、どう校内川柳大会を進行するかを思案するのだった。

 


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