写真と川柳と
夏休みも残り僅かとなった。高杉はすでに宿題をやり終え、自分の部屋で大学受験用の問題集に取り組んでいた。
「進也、女の子から手紙が来てるわよ」
ノックと同時に高杉の母・多美子が部屋に入ってきた。
「ノックの意味がないじゃないか」
多美子はニヤニヤして息子に手紙を渡し、「今度、家に連れてきなさい」とサムズアップして部屋を出ていった。高杉は封筒の裏を見て、送り主が亜矢子であることを確認した。
「ただの後輩なのに」
高杉はハサミで開封して中身を取り出した。
「か、川澄……」
彼の手に亜矢子のビキニ姿の写真数枚があった。今まで後輩の女子としか見ていなかったが、ビキニと言う全裸に近い亜矢子に初めて「女性」を感じた。
「い、いかん」
高杉は「性」を悪しき感情と捉え、気をまぎらわそうと便箋を開いた。
「川柳? 随分とこっちも大胆だな」
便箋一枚に縦書きで川柳一句が記されていた。
「はしゃいでるだけど心にすきま風」
「ビキニ着たアタシに君は鼻血出す」
「来年は一緒に聞こう波の音」
高杉は亜矢子らしい素直な句だと感じ、あらためて写真の亜矢子の表情に、心が洗われるのだった。




