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シロクロ  作者: しろいるか
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アダラント王国(2)

つ……着いちゃった。


御者さんに手を引かれながら重い足取りで馬車から降りると、目の前には見たこともないほど大きな扉が待ち構えていた。

豪華すぎる装飾が扉の存在感を更に際立たせ、両端にそびえる直径数メートルはあるだろう支柱が、重厚感を漂わせている。建物に至っては、大きすぎて近くから眺めると天辺まで見えない始末だ。



……いや、すごすぎでしょう……。



城の大きさはその国の力そのものを表しているというが、どうやらこの国は相当な力を持つ大国なのだろう。そうでなければ、よっぽど強い自己顕示欲をもった王様なのか……。

どちらにせよ一般庶民のただの人間である私が来て良いような場所でないのは確かだ。


そんな所に連れてきて、一体何をさせる気なんだ……。

城の迫力に気圧され、ますます私の気分は下がっていく。


先導していた隊長さんとジェダさんが扉の前に到着し、門番であろう騎士さんに敬礼をする。

一瞬、門番の表情が険しくなりジェダさんを見つめているのが見えた。

多分、城警護の騎士さんが来ると思っていたため、思いもよらない人物が現れ疑いの念も籠ってはいたとは思うが、やはりあからさま過ぎるといえる。



またここでもか……。

ジェダさん相当嫌われてるんだな……。

口振りは冷たいが、根はいい人だと思うんだけどな。


そんなことを考えている私とは違い、ジェダさんは無反応。隊長さんに至ってはさっさと開けろと言わんばかりに「証を持った救世主さまをお連れした。陛下へのお目通りを願おう。」と早口にまくし立てた。



門番さんは一瞬間を置いて返事をすると、重そうな扉を軽々と開けた。

そう、真ん中に作られた人が入るのに丁度良い大きさの扉を。



いやいや扉の意味!

あんだけ大きい成りしてるくせに、機能してるのほんの一部分だけじゃん!


なんて場違いな突っ込みは寸でのところで我慢。

思わず口を押さえてしまったため、いつまでも入ろうとしない私の行動に、隊長さんやジェダさん、門番さんまでも不思議そうに眺めていた。


「どーした嬢ちゃん?気分でも悪くなったか?」


心配までされてしまった。

私は慌てて体勢を整え、咳払いをして「大丈夫です。」とだけ答えて扉の中へと入った。


……さっきので大分緊張が解れたみたい。


ドン底まで落ちていた気分が、些か上昇したお陰か、お城の内装を眺める程までには余裕が出てきた。


玄関と呼ぶには広すぎるホールを抜け、ど真ん中にそびえるバカデカイ階段を上っていく。

その先にはさっきの扉とまではいかないが、それでも人が使うには大きすぎる扉が待ち構えていた。ちなみに、いつの間に先に来ていたのか、神官長さんが扉の前で待機していた。


「救世主さま、ようこそおいでくださいました。中で陛下がお待ちです。どうぞ中へ。」


「じゃあ嬢ちゃん、俺たちはここまでだ。」


そう言って先を歩いていた筈のジェダさんと隊長さんは、いつの間にか私の後ろにまわっていた。



「えっ……一緒に来てくれるんじゃないんですか?」


ここに来て頼みの綱が無くなるなど思っていなかったため思いっきり狼狽える。

それを見て気まずそうに頭を掻く隊長さん。


「悪いなぁ。ついていってやりたいが、流石に陛下の許しなしじゃ俺たちは中に入れないからよ。」


「うう……。」



確かに、この先はもう王様が待ち構えている王座だ。王様の許可がないのに勝手に入ってなんかいったら、怒りを買う恐れもある。

流石にそんな危険を犯してまでついてきてほしいなんて言えないため、泣く泣く諦めるしかない。



「……わかりました。ここまで一緒に来て頂いてありがとうございました。」


お礼の意を込めてお辞儀をすると、二人はお互いに顔を見合わせて固まってしまった。


え、何その反応。


「……あの、何か変なこと言いました?」


自分の行動に対して二人の様子が余りにも不釣り合いだったため、お辞儀の姿勢のまま顔を上げて尋ねる。

すると、間を置いて城に着いてから一言も喋らなかったジェダさんが抑揚のない声で答えた。



「いえ、特に。王がお待ちです。中にお入りください。」



「あ、はい。」



気のせいか、ジェダさんの声に若干の戸惑いの色が混じっていたような……。


短い付き合いだが、感情の見えなかった彼から初めて垣間見えた反応。

突っ込みたいことこの上無いが、まくし立てるように言われてしまったため、敢えなく断念した。

開かれた扉に重い足取りで入っていき、最後に扉から顔を出して二人に「それじゃあ、また。」と言ってお別れをした。




……さあ、ここからが本番だ。


後ろで扉が閉まる音を聞きながら、面接を受けるような心意気で気合いを入れた私は、深呼吸をして前進した。




足元には真っ赤な絨毯が真っ直ぐ前に敷かれ、ここを歩けと言わんばかりに主張しているようだ。

それに導かれながら、王様が待つ王座へと足を運んだ。




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