紅い生き霊2
あれから私は、ジェダさんに案内してもらった図書館へと足を運び、"紅い生き霊"について書かれている本を探そうとした。
が、この世界の文字が読めないことを思い出しあえなく断念。
仕方なく、図書館にいる頭の良さそうなおじさんやらメイドさんやらに"紅い生き霊"について尋ねてはみたものの、皆一様に怪訝な表情を見せ「そんなこと聞かないでください。口にもしたくない……。」と断られてしまった。
部屋に戻ってから、三人のメイドさんにも聞いてみたが、同様の反応をされてしまう始末。
そんなこんなしているとあっという間に1日は終わり、早々にメイドさん達に寝巻きへと着替えさせられた。
おやすみの挨拶を済ませ、フカフカのベッドに横たわったが、今日のことが気になってなかなか寝付けない。
誰も、教えてくれなかった。
ここまでくると、まるで本当に幽霊扱いのようだ。
口にもしたくないほど怖いものってことだろうか?
しかし、彼を見ていても確かに取っつきにくくはあるが怖いと感じたことはない。
一体、彼の何がそんなにも周りの人間を遠ざけるのか……。
気になる……
いや、知らなきゃいけない気がする。
何も知らないまま、彼と一緒にいることはきっと難しい。
「……明日には、何か手がかりが掴めればいいけど……。」
そう呟くと、私の意識は夢の中へと静かに沈んでいった。
ピチョン……
ピチョン……
水の音が、静かに響く。
……いやだ……。
ーーもう、いやだ……
ピチョン……
私は……ーー
誰かが、泣いているような気がした。
「はぁっ!!」
勢いよく上体を起こすと、じっとりと汗を吸い込んだ寝巻きが体にまとわり付いてきた。
うわ、すごい汗だな……。
昨日に引き続き、今日もか……。
こっちに来てから悪い夢ばかり見ている気がする……。
だが、昨日のは思い出したくもない苦い過去だったが、今日のは全く身に覚えはなかった。
「……なんだろい?誰か泣いてたような気がしたけど……。」
たかが夢の事なのに、妙に気になる。
もう少し詳細を思い出そうと頭を捻るが、全く思い出せなくなった。
コンコン。
あ、メイドさん達かな?
「はーい、今開けますよ……。」
昨日みたいに勢いよくこられても困るので、自分から扉を開けにいくと、そこにはリサさんが立っていた。
「おはようございます。救世主様。」
「お、おはようございます。え、また王子様の呼び出しですか?」
おっと、嫌という気持ちがあからさまに顔に出てしまった。
しかし、クールなリサさんは特に気にする様子はなく淡々と口を開いた。
「いえ、今日は護衛のクラウスが隊での訓練に行くことになっておりまして、本日は私が代わりに護衛を勤めさせて頂きます。」
「あ、そうなんですね。……ふつつかものですが、宜しくお願いします。」
「はい。……来るのが早すぎたようですね。準備ができるまで外で待たせていただきます。」
リサさんの目線は、私を上から下まで移動していた。
そういえば、寝巻きのままだった。
リサさんの後ろの方に目をやると、居ずらそうにしているメイド三人衆が見えた。
……昨日の二の舞にはなるまい。
そう決意し、リサさんに「すぐ出ます!」と言って素早く扉を閉めた。
一瞬、悔しそうなメイドさんたちの顔が見えた気がしたけど、気にしないことにしよう。