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シロクロ  作者: しろいるか
31/35

紅い生き霊

「やってしまった……。」






ジェダさんに怒りに任せて罵声を浴びせたあと、私はその勢いで王子の執務室へと突入した。


まだそこで公務中だったステルス王子は驚いた様子で見ており、護衛の二人にいたっては敵襲だと思ったのだろう、剣に手をかけて此方を睨み付けていた。


執事のジークさんに関しては、特に動揺した様子はなく、何時ものように扉の近くで待機していた。



「なんだすごい剣幕で、どうかしたのか?」


私は無言のまま王子の机へと向かい、勢いよく机を叩いた。




「護衛、変えてください……。」


「うん?」


「だから、護衛を変えてください!あんな人、こっちから願い下げです!!」



余りの剣幕に、護衛の二人は私を制止するのを忘れて固まってしまった。

それとは正反対に、驚いた様子だった王子は、私の言葉を理解したのか、神妙な面持ちに変わった。



「……理由を聞かせてもらえないかな?」



私は、さっき起きた不愉快なイベントを一から十まで説明。

それを話しているうちに、私は徐々に冷静さを取り戻し、自分が仕出かしたことの愚かさを痛感していた。



そして、その話を聞いた王子の反応は……



「あはははは。いやー君は本当に面白いな。仲を深めに行きなさいって言ったのに、逆に仲違いしてくるなんて。」


「あんな無礼きわまりない七光り男のせいで頭に血が上っちゃって……。よく考えたら、こんななにも知らない小娘に意気地無し呼ばわりされたら、怒るのも当たり前なのに……。」



頭を抱えている私に、ジークさんが紅茶を出してくれた。

飲むほどの余裕はなかったが、フルーツの混じった爽やかな香りで、若干気持ちは落ち着いてきた。




「まあ、そう気にやむな。君が世事に疎いのは仕方がない事だ。」


「いや、そもそも大事な事教えてくれなかったの貴方たちじゃないですか。」


恨めしく王子を見ても、爽やかな笑顔を返してくるのみで、気にしている素振りはまるでなかった。


分かっていたけども!

無性に腹立つわ!



「あの……"紅い生き霊"って何なんですか?ジェダさんに対する周りの態度……気にはなってたんですけど……。」


触れちゃいけないことなんだろうなって思って、あえて突っ込んで聞こうとはしなかった。

まだ会ったばかりの人間に、何で嫌われてるんですか?なんて無神経なことが聞けるほど、私はバカではない。



でも、これはそんな次元の話じゃない。

あんなに自分を卑下するなんて、並大抵の理由ではなさそうだ。



「ほう?黒が置かれている状況を知りながら、彼を護衛に指名したというのか?」


「え?だってあーゆーのってその人たちの事情だし私には関係ないというか……。それに、ここに来て最初に助けてくれたのジェダさんですから。頼るのは当たり前じゃないですか?」



大体、あんな幼稚じみた人たちの誰に頼れって言うんだか……。


私の返事に満足そうに頷く王子。

てか、私がした質問はスルーですか?



「ふむ。護衛の件だがな、変えないぞ?」


爽やかな笑顔だ。


「ええっ!ただでさえ気まずい状況なのに!!」


「それは君が引き起こしたことだろう?俺には関係ない。それに、決まった護衛をそう易々と変えられるわけないだろう?」


「ど、どーしてですか?」


「俺が面倒だから。」


爽やかな笑顔だった。




……っこの、腹黒王子!!



「せめて、"紅い生き霊"が何なのか教えてくださいよ!」


「それは出来ん。」


「どーしてですか?」


「そう軽々と口にしていいものではない。知らぬものはいないが、口に出したいものもいないだろうな。それに……」


「それに?」



「俺が面倒だからだ。」


キラキラとしたオーラを纏った爽やかな笑顔だった。



私は、怒る気力を無くし項垂れた。


「……もういいです。こうなったら自力で探りますから。」



もう冷めきってしまった紅茶を一口飲み「ごちそうさま」とだけ言って立ち上がった。


「ああ、そうだった。アスカ。」


いつの間にか呼び捨てにされていることに、反応する気も起きなかった私は、力なく王子の方へと視線を向ける。



「明日は、8時には集合だ。遅れるなよ?」


「………………善処します……。」



それだけ言って私は入ってきたときとは正反対のテンションで、執務室をあとにした。






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