守るということ8
この見た目から"紅い生き霊"であることは隠しようがなかった。
当然、周りの反応も両親のそれと変わらない。
黒い鎧と黒い布によって封じられた体。
それでも、周りの態度は変わらない。
何とか距離を縮めようとしても、身に覚えの無い憎悪を向けられる刃を向けられる。
……それで、どう立ち向かえというんだ。
こんな、
外部から来たばかりの人間に
なにが分かるというんだ。
気に入らない……?
だったら……
「だったら、俺を護衛から外したらいい。別に俺は、好きであんたに就いたわけじゃない。」
「!?」
俺の言葉に、彼女は固まってしまった。
だが、構うものか。
どうせ、好かれようなんて毛ほども思っていない。
それで俺を外すようなら、所詮この人も今までの奴らと変わらないということだ。
「今度は、勇敢な頼りになる騎士に護衛を依頼してください。」
「……んな……。」
彼女の手が震えているのが見えた。
……言い過ぎたか?
泣かれても正直厄介だな……。
「なによその言い方ぁぁぁぁ!!」
バッチィィィィン!!
震えていた筈の彼女の右手が、大きく弧を描いて俺の頬へと突っ込んできた。
虚を突かれた俺は態勢を崩してよろける。
……痛い。
叩かれたのか、今?
「事情も話してくれないくせに、一方的に言われたからってへそ曲げて!ジェダさんこそ子供そのものじゃん!」
……いや、言おうとしたのに遮ったのあんただし……。
彼女は俺に反論する余地も与えず、まくし立てる。
「こっちだって迷惑だったら断ってくれても良かったのに!そんな言い方しなくてもいいでしょ!?それでも、ここで唯一頼れると思ったのはジェダさんだけだったのに!もういいです!!護衛は他の人に頼みますから。あなたは元のお仕事に戻ったらどうでしょうか!?」
それだけ吐き捨てると、彼女は呆けている俺を置いて、庭園から足早に去っていった。
俺は、そんな彼女の背中を見ていることしかできなかった。
……これでいい。
俺なんかを護衛につけていたら、困ることになるのは彼女自信だ。
俺には、悪霊は倒せても、その他のものから彼女を守りきれる自信はない。
自分でさえ、守れていないのに……。
"恥を知りなさい!"
あの時、彼女が言った言葉が頭を過った。
「……本当、恥ずかしい限りだよ……。」