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シロクロ  作者: しろいるか
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白い女神の使い(4)

ガシャン


ガシャン



暗闇に包まれた森のなかを、金属音が響き渡る。




……本当に女神の使いはいるのだろうか。



そんなことを考えながら、俺は1人森のなかを歩いていた。






時を遡ること半刻前、俺を含めた第五部隊は、突然現れた強い光に戸惑いを隠せないでいた。


「なんだあの光は!?」


「神殿で何かあったのか!?」



「落ち着けお前ら!あれは恐らく召喚の儀が終了した証だ。周りを見てみろ。空気が浄化されて悪霊の気配が無くなってるじゃねーか。」



隊長の喝で、動揺していた隊員たちは冷静さを取り戻したようだ。

再び張り積めていた空気が和らぐのがわかった。



「……ホントだ。悪霊の気配がない。」


「儀式は成功したんだ!」


「すげー!俺たち歴史的瞬間に立ち会ったことになるんだよな!?」



さっきまで顔を強ばらせていた隊員たちは、任務成功を自覚し興奮した様子ではしゃいでいた。


確かに、あの光が現れた瞬間、辺りの空気が澄んだような気がしていたが。

よく周りを観察すると、周辺にいた筈の悪霊の気配が全く感じられなくなっていた。


救世主が現れたことで、ここら一帯を浄化したということなのか?

だとすると、今あの神殿にいるであろう人物は救世主と言っても過言ではない力を秘めているのだろう。

そうでなければ、ここまで苦労して喚びだした甲斐がないというものだ。



俺も誰とも喜びを共有すること無く、鎧の中で1人任務の成功の達成感を噛み締めていた。




しかし、世の中はそんなに甘くはできていなかったようだ。




「!?

隊長!今丁度神殿の者から伝令が届きました!」


「おう。いいタイミングだったな。救世主さまはどんな御方だって?」



そういえば、先程伝令を送るためにハウンドに伝令術を発動して貰っていたところだった。

突然の強い光に皆、というか隊長でさえも頭からスッポリ抜けていた。

命令した隊長にですら忘れ去られていたが、彼は律儀にも術を解かずに待機していたようだ。真面目なところが彼のいいところだと思う。


そして、その術は無駄にならず丁度よく神殿にいた伝令役と連絡を繋ぐことができたようだ。

神殿からの連絡に、俺を含めた隊員全員が救世主についての情報が聞けるに違いないと、期待に胸を膨らませていた。


しかし、ハウンドは俺たちとは対照的に暗いかおで伝令の内容を口にする。



「……それが、召喚自体は成功したようなんですが、肝心の救世主さまが神殿に現れていないそうなんです。恐らく、何らかの理由で別の場所に召喚されてしまったのではないかとのことで……。」



彼の言葉の意味が理解できず、皆一瞬固まったまま動かなくなった。


だが、誰かの声が聞こえた瞬間皆我に返り同じ言葉を口にした。



「「「はあぁぁぁぁぁぁ!?」」」







そこからの隊長の動きは早かった。



「あの神官ども、俺達に厄介払い押し付けておきながら大事なところでヘマしやがって!おいお前ら!これから救世主の捜索にとりかかる!!各々散らばってこの辺一帯を調べろ!!」


文句をいいつつ、今自分達がやるべきことを瞬時に判断し、隊員たちに命を下す。



折角喚びだした救世主がその場にいないとは、一体どーゆうことなのか。

皆不満そうな顔を隠しはしなかったが、文句を言わずに「了解!」といって散らばっていった。




浄化されているとはいえ、いつまた悪霊が現れるかわからない。

そんな中に救世主が1人取り残され、無事でいられる保障はどこにもないのだ。


……頼むから無事でいてくれよ。

ここまで苦労して喚びだしたんだ。むざむざ死なれては困る!



そんなことを思いながら、俺も森の中へと入っていった。











……そんなこんなでかれこれ半刻ほど探し回ってはいるが、一向に見つけることができずにいる。

他のやつから見つけた合図があったわけでもないため、既に見つかったのではという無駄な希望も持てずにいた。



……もしかしたら俺達が思っているよりもずっと遠くに出てきてしまったのではないだろうか?

下手したら国外ということもあり得る。

そうなるとお手上げだ。

捜索願いを出すにしても俺達は救世主の姿すらみたことがないのだ。


顔すら、性別すらわからない相手をどう探せっていうんだ。




「ん?」


物思いにふけっていると、前方から不快な気配が漂ってきた。

自分の中の魔力が吸い上げられるような感覚。これは……




「悪霊。」





誰に言うでもなく、鎧の中で呟く。


もう現れたのか……。


奴らには制限というものは無いのか。

止めどなく出現する悪霊に嫌気が差しながら、気配のする方へと歩を進める。




するとそこには、悪霊ではなく人影が佇んでいた。

その人影は頭を抱えた様子で此方に気づく気配がない。



この時間帯に、しかもこんな森のなかを一人で一体何をしている……?


夜は悪霊が活発になり、普段より危険度が増す。

だから民間人は結界が張られている町の外に夜ですことはほとんどないはずだ。



いるとすれば悪霊か、はたまた賊の類いか……




警戒心を持ちながら気配を消して人影に近づく。

向こうは未だに此方に気づく様子はない。


ハッキリと人影の姿が目視できるまでの距離まで近づくと、人影とはまた別の気配があることに気づく。


あの不快な気配はこの人からじゃない。


そう思うのと同時に、人影の背後から赤い目と黒い身体をした狼が、今正にその人影に牙を向けようとしているところが目に入った。


……危ない!


その瞬間、気配を消すことを止めたためか、人影は顔を急にあげると、俺と視線を合わせて顔を青ざめさせる。

恐らく、俺が構えている剣が自分に向けられていると思ったようだ。

だが、今はその状況が好都合。


「鎧だ!」



「……っ動くな!」



固まっていた筈の人影がいきなり声をあげたため、刺激された狼が一気に食らいつこうと人影へと飛びかかる。

俺は慌てて狼に向かって剣を振り下ろした。



ザシュッ!





剣は狼を二等分にし、狼は自身に流れていた体液を吹き出し絶命した。






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