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神さまと繋がった  作者: たつのオトシゴ
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 意識を取り戻した翌日には体は完治していたが念のために翌日まで入院した幽生。そして、翌々日には登校する予定だった。しかし、すでに始業時間を過ぎているにも拘わらず制服姿で仄の病室を訪れていた。

「あれ? 鞄を取りに来て、登校したはずじゃなかった?」

 病室に入るなり、冷やかな視線を向けてくる。仄の病室に置き忘れていた鞄を一時間前に取りに来て、再び戻ってきたのだから当然の反応だ。

「ねえ……今日から学校でしょ? 授業サボって何してるの?」

 刺々しい声に動揺しながらも、「いや、ちょっと用事を思い出して……」と答える幽生。

「ふーん。ところで朝から気になってたけど、眼鏡はどうしたの?」怪訝な顔で小首を傾げる。

「事故にあった衝撃で視力が回復した……らしい?」咄嗟に無理のある嘘を吐いてしまった。

 竜の力や異世界については話せずにいた。幽生が何をしてきたのか知れば仄を悲しませるに違いない。それに、荒唐無稽な異世界の話をしても色々な意味で心配させるだけである。

「……そう。それで? 私に何か用があって戻って来たんでしょ?」

 嘘を詰問することなく、あっさりとした調子で話を続けてきた。

 追及されるのを想定して言い訳を準備していた幽生は少し拍子抜けてしまう。

「実は、仄ちゃんにお願いがあるんだ」

「お願い?」

「僕の髪を切ってくれる約束覚えてる?」

「……そういえば、したね。忘れてた」と、わざとらしくはにかむ。

 忘れるのも当然だろう、と幽生は得心していた。髪を切る約束をした夜に友達の唯が亡くなるという出来事に見舞われたのだから。

「その約束はまだ有効かな?」

「無効だね。もう期間切れ」そう言って仄は胸の前で諸腕を罰点させる。

「そんな……」まさか断られるとは思っておらず、眉を困らせた。

 そんな幽生の顔を見て彼女はクスクスと笑う。

「でも……お兄ちゃんの髪ならいつでも切ってあげるよ。だから、こっちおいで?」

 そう言って仄は小さな手を振って招く。妹の言葉に顔をホッとさせた幽生は言う。

「ありがとう。仄ちゃんはやっぱり優しいね」

 小さな手に招かれてベッドの横に置かれた丸椅子に座り、鞄を置く。小悪魔なのか天使なのか分からない妹に踊らされているけれど幽生はそれが心地良い。無意識に頬が弛緩してしまう。

「じゃあ、上半身だけ裸になって? 髪の毛が付いちゃうから」

「わかった」と、言われるがままに緩めたネクタイをスルリと取る。

 肩に校章があしらわれた紺色のブレザーを脱いだ時、

「ハサミはあるの?」と、ベッドから降り立った仄が聞いてきた。

 畳んだブレザーをベッドのオーバーテーブルに置きながら答える。

「うん、鞄の中に入ってる。髪の毛を取るコロコロも持って来てあるよ」

 ワイシャツも脱いで上半身裸になった幽生は丸椅子に腰を下ろす。鞄から取り出したハサミをシャキシャキと音を鳴らす仄。

「病院に刃物持ち込んじゃダメなんだから、見つかる前に切らないと……」

 背後に立つと彼女は言葉を詰まらせ、ハサミの音も止む。

「……どうかした?」と、首を振り返らせる幽生。

 不意に素肌の背中を触れてきた仄。

「お兄ちゃん、こんな筋肉質だった? 去年、一緒にお風呂入った時はもう少し痩せてたのに」

 背中や脇をペタペタと触れてくる、その小さな手は少し冷たい。

「うん……色々あったんだ」本当に、色々あり過ぎた……。

 素っ裸になり、胸に残っている黒い竜の紋章にふと目を落とす。幽生の中に竜の力がまだ残っている。これには何か意味があって“神さま”は残したのだろうか、と考える。

 幽生が懊悩していると、

「それじゃあ、切るから動かないでよ?」側頭を掴まれた。

「う、うん」と、顔を前に向き直す幽生。すると、仄の繊細で滑らかな指が後ろ髪を梳く。

 そして、ハサミの擦れる音が病室に響くと髪がハラハラと落ちる。

 自分の髪が切られていく度に、まるで気持ちが生まれ変わるようだった。髪を切って欲しいと頼んだのは新しい自分に生まれ変わり、もう一度やり直せる気がしたからである。

 新しい一歩を踏むために――。


 胸の黒い竜の紋章が仄ちゃんに見つかり、誤魔化すのは大変だった……。

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