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神さまと繋がった  作者: たつのオトシゴ
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023


   023


 神樹の森の黒々と焼け焦げた大地に立つ黒竜(幽生)は朦朧とする意識の中、佐々木真守とは別のもう一頭の黒竜と対峙していた。すると、雨宮は言う。

『私も……諦めるのは、できない……』

『……そうだろうね。でなくちゃ……命を賭して願いを叶えようとはしない』

 呼吸をする度にそよ風が胸の風穴を抜けて激痛が走り、鋭牙を食い縛る。

『遊佐くん……。私たち、殺し合うしか……ないんだよね?』

『それ以外にあったなら……佐々木さんは死ななかったんだろうな』と、冷ややかに答えた。

『そう……だよね。でも、遊佐くんに勝てる気がしないなぁ……アハハ……はあ』

 雨宮ゐるかは笑った。初めて聞いた幽かな笑声にドキリと少し驚く。

『もう意識が朦朧としていて、気を抜いたらぶっ倒れそうなんだけど?』

 炎の砲弾を一発でもまともに受けただけで意識が吹き飛ぶに違いなかった。

『そっか……じゃあ、扉まで逃げ切るくらいなら……できるかも』

『ああ、そうだな。逃げられてしまうかもしれない。だから、僕も容赦なく君を殺そうと思う』

 一笑した幽生は雨宮ゐるかを、対峙する黒竜を精一杯の殺気を込めて睨んだ。今までの彼女なら脅え、目を泳がせていたに違いない。しかし、彼女は目を逸らさずに言う。

『うん……分かってる。……私こそ、ごめんなさい』

 唐突に謝った雨宮は胸を膨らませて肺に魔力を溜め始める。

『できる、かな?』そう言うと、肺に溜めた炎の魔力を圧縮するのではなく逆に希薄させた。その微粒化した炎の魔力を鱗粉のよう口腔から噴くと風に乗って幽生を含む界隈に漂う。

『……?』しかし、まだ何も起こらない。

 それどころか胸と右前足の痛みを忘れ、紅炎の粒子が舞う美しい情景に見惚れてしまった。

 すると『バンッ』と不意に聞こえてきた雨宮の声。その瞬間、界隈を浮遊する紅炎の粒子が一斉に爆発した。花火のように無数の爆炎が咲き、爆音が神樹の森を揺らす。

『で、できた……』と雨宮は驚きと喜びを含んだ声を漏らした。

 炎と煙が晴れていくと悶えている巻角の黒竜が姿を見せる。

『ぐっ……がはっ、がはっ……』爆炎を浴びた幽生は辛うじて立ち続けていた。

『ご、ごめんなさい』苦しむ彼を見て罪悪感に駆られ、思わず目を逸らす。

 彼女は黄金の“神槍クイーン”を咥えて翼を羽ばたかせると飛び上がる。扉がある母樹の根元を目指して翔けていくと背の高い樹々が突き立つ神樹の森に姿を消す。

 炎の魔力を希薄したからか火力は弱かった。しかし、それでも意識が飛びかけた。胸に空いた風穴に爆風と炎を浴びた激痛に加え、頭が痺れるような感覚に再び襲われたからである。

『ヴゥ……やっぱり、きついな。“記憶(想い)”が嫌でも流れ込んでくるのは……』

 すると、雨宮ゐるかの“記憶”の断片が映像となって見えてくる――。


 ――幼い頃から私は男の子の視線を独り占めしてしまう可愛い女の子だった……らしい。

 それが嫌だった。望んでないのに可愛くなっていくのが嫌。女の子の友達が出来ても、男の子に好かれる私を嫌いになるから可愛くなりたくなかった。

 中学校に上がった頃から体がおかしくなった。銀髪と碧い眼を持っていて普段から注目はされていたけれど、それとは差異のある視線に気付く。私の顔を見ていた男の子たちが体を見てくる。きっと、私の体がおかしくなったからだ……。

 確かに、同級生の女の子に比べたら胸が大きく膨らんでいる。男の子の話によると私のおかしくなった体は『えろい』って言うらしい。

 好きでこんな体になったわけじゃないのに。

 好きで可愛く産まれた訳じゃないのに、どうして――


『やめろ……頼む……頼むから、これ以上僕の中で叫ばないでくれ……』

 他人が背負う苦痛を呑み込まされ、心が絞めつけられる苦しさに幽生は悲鳴を漏らした。

『…………くそっ』これから殺そうとする敵が抱えている苦しみを見せられ、味わわされるほどに殺すのが辛くなっていく。佐々木真守の時もそうだった。殺してしまったら彼は不幸のまま、悲劇を抱えたまま死んでいくのだろう。そう思いながらも彼を殺した。仄を救うために。

『そうだ、何を躊躇う……。仄ちゃん……は、僕が助けるんだ。その為なら……』

 今にも崩れそうな足を奮い立たせて焦土の地面を蹴り、黒い巨翼を羽ばたかせる。そして、神樹の森の奥に消えていった雨宮ゐるかを追い翔ける。


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