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神さまと繋がった  作者: たつのオトシゴ
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 転移魔法の眩い青光に覆われていた視界が開けると、情景の変化は殆ど無かった。百メートルを超える背の高い樹々と、艶やかな花々の絨毯が敷き詰められている。漂う光の粒子が辺りを温かく照らし、初めて神樹の森に降りた時と似た光景だ。

 ふと、水がザァーと流れ落ちる涼しげな音が聞こえてくる。唯一変わったのは、一軒家ほどの高さの崖から流れる滝があることだ。広く浅い滝壺からは緩やかな川がせせらぎを鳴らして流れていく。さらに崖には滝のカーテンに隠れた洞窟が見える。

 数秒前まで死と隣り合わせだった状況が一変し、森林浴をするような環境に置かれて感情が追いつかない黒竜たち。まだ始祖竜やエルフが幹の陰から現れるのではないか、と緊張を解けないでいると、

「ここは神樹の森の末端だ。母樹とエルフの里からは遠く離れているから、まず見つかることは無い。だから心配は要らない」心を見透かしたように“神さま”は言った。

『……』まごつきながらも幽生たちは、まんまと言葉を信じて気を緩めてしまう。

 すると黒竜の肉体があっという間に収縮していき、折れている右翼も背に埋没していく。長い尾や双角も無くなって爬虫類のような骨格が人間に戻ると、黒々とした鱗がスウッと皮膚の中に消えて人肌を取り戻す。スリット状だった瞳孔が丸みを取り戻すと共に、双眸が前を向き幾分か狭まった視界。

 両膝で跪いた体勢で人間に戻った幽生は、まだ気付いていない。まさか自分の姿が“こんなこと”になっているとは想像もしていなかった。

 痛みが残る背を庇いながら立ち上がる幽生。辺りを見回し、他の六人も変身が解けて人間の姿を取り戻しているのを確認した――が、彼は言葉を失うと同時に自らの体へ視線を下ろす。

 見事に布切れ一枚も身に付けていなかった。

 ――ッ! 目を剥いた幽生は胸中で叫んだ。他の六人も己の痴態に気付き、動揺と悲鳴が上がる。皆慌てて滝壺に飛び込み裸体を水中に隠す。羞恥心に加え、突然冷たい水に飛び込んだ為に心臓が跳ね上がり鼓動が激しくなる。

 水が背中の傷に沁みて顔を歪ませる幽生。

「君たちの願いはまだ破れ切っていない!」

 今の彼らの状態を分かっているはずの“神さま”は平然と話を続ける。

「明日、再び日が昇ったら奇襲をかける。それまでは滝の裏にある洞窟で体を休めておけ。竜の力を持つ君たちなら傷もすぐに癒えるだろう。……で、どうして水に浸かっているんだ? 傷に沁みるぞ?」首を傾げて俯瞰してくる宇宙服。纏う後光が水面にキラキラと乱反射する。

「ふざけないで下さい!」抱くように胸を隠している樫之幽花の怒声が飛んだ。

「「!」」他の六人もおもわず驚き彼女に視線を向ける。裸を晒して幽生たちも動揺していたが、彼女が上げた怒声ほどの感情は抱いていなかった。

 双眸を睨ませ、肩を怒らせる樫之は声を荒らげる。

「どうして裸なのです! 普通、衣服は残っているものじゃないのですか!? 早く服を返して下さい!」どことなく脅えたように肩を震えさせ、怒気を浮かべる瞳には焦燥が滲む。

 テレビで見ていた元トップアイドルの堂々たる姿はそこには無い。と、違和感を覚える幽生。

「返すも何も無い。その肉体が竜に変貌するのだから服が破れて無くなるに決まっているだろう? 面白いことを言うね、ハハハ」と、高らかに愉快な笑声を上げた。

 “神さま”の言葉に怒りと歯痒さを覚えた樫之は奥歯を噛み締め、眉を曇らす。

 彼女の裸でいることに対する異常な反応を訝っていると、雨宮の姿を視界の端に捉える幽生。胸を諸腕で抱くように隠すが、童顔に似つかわしくない成熟した体は腕から溢れ出ている。男ならば目を奪われる程の艶美な生身、なのだが幽生は思わず目を逸らしたい衝動に駆られた。雨宮の頬や首、肩、腕、背と露わになっている上半身だけでも所々に酷い火傷が見受けられるからだ。その火傷の痛みに銀髪の奥で表情を幽かに歪めている。

「笑っていないで、何か着る物を早く出して頂けませんか?」

 平然を装った樫之だが、その声からは苛立ちが刺々しく突き出していた。

「もう、仕方が無いな。それぞれが着ていた服を創るから少し待っていろ」

 そう言うと宇宙服の白い手を翻し掌を仰向けにすると淡い青光を発する。

「…………」しかし、青光は消失して“神さま”の挙動がピタリと固まった。

 不審に思った樫之は首を傾げて口を開く。

「どうしたのですか? 早く用意して下さい。あ、それと体を拭くタオルもお願いします」

「それは構わないが……」飽く迄も表情は読み取れないが、ヘルメットのバイザーシールドの奥で懊悩している気配を感じた幽生たち。

「どんな願いも叶えると言っておきながら……まさか出来ないとは仰いませんよね?」

 樫之の怪訝な声に“神さま”は幽かに逡巡しながら答える。

「いや…………下着の色と柄が分からない」

「……いい加減にして下さい」と、苛立ちで右頬を痙攣させた樫之幽花は冷ややかに言った。

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