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前書きという前書きは特にありません。
以前、書き上げたものを気まぐれに投稿してみました。
小言:あらすじを書くのが苦手なので勘弁願いたい。
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制服から携帯電話を取り出し、少年は迷わず110番に繋いだ。
“神さま”が降臨したあの日、東京から110番は奪われ、今の東京で110番に掛けると警察ではなく、“神さま”に繋がる。
夕闇が迫る街で少年の頭上に輝く大型ビジョンの中では、その都市伝説がニュースの話題にされている。噂が爆発的な勢いで流布する中、警視庁が全力をあげても110番を取り戻すに未だ至っていない。
額の傷から流れる鮮血で顔を染めた少年は肩で息をしながら携帯電話を右耳に当てる。110番に繋ぐと決まって流れる音声がある。
『私は“神さま”です。ピーという発信音の後に、あなたの願いを入れてください』
留守番電話を思わせる音声が聴こえてきた。都市伝説を確かめようと110番に掛けた者は口を揃えて言う。「願いを口にしてもブツリと切られてしまった。つまらない悪戯だ」と。
しかし、都市伝説にはもうひとつの噂があった。切られずに“神さま”と繋がることができたら、どんな願いでも叶えて貰える。
都市伝説かもしれない。それでも願いを叶えてくれるなら……。と、藁にも縋る思いで少年は口にする。
ピー
「……僕の命と引き換えでもいい。だからお願いします。妹を助ける力をください」
『…………』
反応も返答も無かった。胸の奥で淡い希望が霧散していく。
やはり都市伝説に過ぎなかった。僕は何を期待してしまったのだろう……ハハハ。と、根も葉もない噂に縋ってしまった滑稽さを自嘲した少年は携帯電話を耳から離そうとした時、
『その願い、私が叶えてあげましょう』
手を止めた少年の顔は鳩が豆鉄砲を食ったよう、という表現がお似合いだった。
『君の名前は?』
“神さま”の唐突な尋ねに少年は操られたように答える。
「遊佐……遊佐幽生」
その日、齢十七の幽生は――神さまと繋がった。




