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「コウタロウがさっき取り出したお守り。あれは『誰かと仲良くなれますように』って、お願いするものだよね? そのお願いを聞くことができる存在。叶えてあげることができる存在。そして、見届ける存在。そういうものさ」
「(……やっぱ縁結びのせいじゃねぇか?)」
「(ちょっと黙ってて)」
「あ、誤解されると嫌だから、先に断っておくとね。聞こうと思えば聞けるんだ、もちろん。君たちの小声も、心の声だって」
「……」
(あれ、それ、すごくまずいのでは)
「大丈夫、聞いてないよ、今はね」
「そう、ですか……」
「神様ってのは証明できるか? 魔法が使えるんだ。その辺の人間でも、翼を生やして、浮いて、心読んで、『私は神です』なんて言えるんじゃねぇか?」
「周、黙っててって!」
「ううん、良いんだよ。ただ、証明というと、無理かな」
「じゃあ信じるのも無理だよな」
「周!」
「逆に訊くよ。君たちは、自分をどう人間だと証明する? 隣に、自分と同じ特徴を持った存在がいるね。彼が人間と呼ばれるのなら、自分も同じ人間だろう。じゃあ、少しずつ特徴が失われたり、少しずつ特徴を足したりする。どこまでが人間なんだろう。手足がなくても人間? 角や羽があっても? ――魔法を使える君は、本当に人間かい?」
「……」
「別にいいんだよ、僕をどう呼んでも。僕は人間と同じような見た目をして、同じように話し、同じように笑える。だからそう、こちらに来て初めて出会った『ちょっと変わったヒト』だと思ってくれてもいい。ただ、残念ながら僕は人間でないから、『神』と。君たちがそう考えるように、僕もそう名乗ったんだ」
「……分かったよ。別にいいや、神でも、なんでも」
「周、お願いだから大人しく。最低限黙ってくれてればいいから……」
「お前だって疑ってた癖に」
「僕は慎重なだけだってば」
「動的なシュウ、静的なコウタロウ。いいね、来てくれたのが君たちでよかった。実は、シュウ一人だと危なっかしいと思っていたんだ。初めてこちらの世界に来た時、今にも走り出さんと目を輝かせていたからね、『ゲームみたいだ』と」
「……周?」
「……んだよ」