7
洞穴の先の草原
「よしストップ、周。確認したいことがある」
「またかよ」
「大事かもしれないことだよ」
ガリッ
「なにしてんの?」
「皮をかいてる」
「血が出たらどうなるか、とか?」
「いや、ちょっと違うんだけど。……特に異常はないかな」
トク……トク……
「脈拍も異常なし」
「心臓がどうこうってのは、1ヵ月で感じたことないと思う」
「なら大丈夫かなぁ」
「スーパーマンとか心臓も速く動いてそうだもんな」
「そういうイメージはあるね。でも、僕らは普通の人間じゃん? ヒトの一生で、細胞分裂とか心拍の回数とかってある程度決まってるらしいし、皮が剥けて早く治ったり、心臓が速くなってたりしたら、寿命が縮めてる可能性はないのかなって」
「寿命なんて話されたら、ちょっと分かんねぇな……」
「1ヵ月もあれば、肌で感じる毒とかそういう危険はすぐ分かると思うけどね。念のために確認してみた。分かったところで、実際寿命が縮んでるかなんて分からないし」
「まぁ、ちょっとしたことでも気づいたらすぐ言う」
「そうして。とりあえず、一番身体に影響ありそうな、一番正体不明なのが魔力なんだし、そこを調べないとね」
「晃が使えて、見えるようになるのが先決な」
「周が簡単に使えても、ぼく運動神経悪いし……。そもそも魔力あるだけで魔法が使えるか分かんないし」
「運動神経関係あんのかなこれ。ってか、そういやお前なんか武器持ってる?」
「いや、武器と言えるものは」
「用心深いんだか不用心なんだか……。運動神経悪いなら、それこそ『もしも』の時のために護身用の武器くらい持っとけよ」
「ちょっとは考えたよ、流石に。だけどさ、魔力があるんだよ? 魔法使えるんだよ? 例えばこの世界に人がいて、魔力を日常的に使ってて、そんな人が僕らの前に敵として現れたとして。ナイフだとかそんなものが役に立つと思う?」
「思うよ、0と1は違うだろ」
「違うけどさぁ……。まあ、強いて言えば、武器はこれが……」
「お守りかよ! しかも縁結びって」
「家にこれしかなかった」
「せめて危険を避けるって意味で『交通安全』だろ」
「一番良いのは戦わずに仲良くなること。これだよ」