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(空気が変わった……?)
「ここが目的地」
「ここ、どこ……? 洞穴の奥は行き止まりのはずだし……。そもそも山の中だけど」
「まあ、草原だな。見渡す限り」
「……神隠し、みたいな?」
「かもな、分かんねぇ」
「分かってるわけないかぁ……」
「でも、ここに来るとさ、こんなこともできるってのは分かったんだよ……なッ」
ダッ
「!?」
「……っと」
「え、飛んッ……!?」
「いや、こう、空中で止まってるだけ」
「なに言ってんの!?」
「けっこう難しいんだぜ、これ」
「……」
ストッ
「……ふぅ。なかなか、長いこともたねーな」
「ねぇ」
「ん?」
「戻れるんだよね、これ?」
「あー、元の場所? 戻れるよ、フツーに。元の穴から」
「じゃあ、もどろ。いったん落ち着こう」
「もう戻んのかよ。いいけど」
「……」
「な? びっくりしたろ?」
「うん」
「いつ話すかウズウズしてたんだよな、最近」
「うん」
「……なんか暗くね?」
「うん。だって、最近じゃないでしょ? あそこ行き始めたの」
「あー…」
「なんか飛んでたのも『難しいんだぜ』って、そこそこ練習したってことだし」
「……」
「手が光るのだって、『光らせられるようになった』って。練習したんでしょ」
「……まあ1ヶ月くらい」
ガッ
「いッ…た!」
「危ないことは一人じゃしない、約束」
「いやだって、言えるか!? あんな夢みたいな!」
「その夢みたいなよく分かんないとこ、1ヶ月も行き続ける方がおかしいって言ってんの」
「危なくなさそうなら話すつもりだったよ」
「危なかったらどうにかなってたかもしれないんだから、僕に言うんだよ。今度行く時も」
「へいへい」
「今日は帰って頭冷やすから。また、明日ね」