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暗殺者より愛をこめて  作者: カツ丼王
第四章 暗殺者の欺罔
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21.情報分析官

 ソサエティのとある一角。


 秘密情報部の所有する施設で、ピコはパメラ監視の任をラグエルから受けていた。

 無論それは表向きの姿で、裏ではザフキエルの助力の下、仁の探索を続けていた。


 しかし探索開始から四日が経つが、彼の行方は掴めずにいた。

 まさかザフキエルの読みは外れ、どこかに雲隠れしたのだろうかと考える。


「もしくは、すでに都市内に潜んでいるのか……」


 重要参考人を泊めるための部屋。その前室でピコは考えを巡らせる。

 ザフキエルの読みに間違いがあったとは思わない。

 となると、何かしらの手段を用いて包囲網を潜り抜いたということになる。

 一体どうやったのだろうか?


「もう時間がない。このままじゃ埒があかない」


 すでに査問会の決議は形になっている。

 内容は当然パメラにとって分が悪い。

 おそらくあと数日で終了し、天界へと強制送還される運びとなる。


 そうなればどのように立ち回っても、パメラの断罪は免れない。


「……仕方がない」


 ピコは腰かけた椅子から立ち上がり、奥の部屋へと足を向けた。


「パメラ、失礼するわよ」


 返事を待たず、頑丈な錠前を開けて中へと入る。

 内部は窓がどこにも存在せず、最低限の家具しかない殺風景なものだった。


「ピコ……何の用ですか?」


 両手に手錠を掛けられたパメラは、うなだれて椅子に座っていた。

 一週間近い査問会の追及で疲弊したらしく、目の下にはクマが浮かんでいる。


「単刀直入に聞くわ。アンタ、何で黙秘を続けているの?」


 ピコは周囲に隠れ、海外へ渡航した事について言及した。

 ラグエルの手回しによる不利な状況もあるが、査問会の焦点はそこにあったからだ。


「このままだと死罪になるかもしれないわ。意固地にならず、さっさと言いなさい」

「……それは出来ません。言ったとしても、状況が好転することはないと思います」

「それを判断するのはアンタじゃない。真実を語るべきよ」


 ピコは正直何が正しいのか分からなくなっていた。

 組織のためを考えれば火種は速やかに消すべき。

 そう考えて行動したが、むしろ事態は悪化したように思える。


「もし紅山仁を気にして証言できないのなら、心配ないわよ」

「え? どういう意味です?」

「アイツは私達の下から逃げ出して、今は行方不明だから」


 パメラは疲れ切った顔から一転し、目を開いて驚きを示した。

 本来パメラに仁のことを話すのはご法度なのだが、状況的に止む得ないとピコは考えた。

 とにかく彼女の行動理由を聞きだす方が、重要だと判じたのだ。


 ザフキエルとの関係についても仔細に話し、ピコはパメラの証言を引き出そうとした。


「そうですか。あなた方が仁くんを見つけることを祈るばかりですね」


 だがパメラの答えはそれだけだった。

 これにはさしものピコも憤り、思わず彼女の胸倉を掴んてしまう。


「なに他人事になってんの!? アンタが正直に話しさえすれば、状況が変わるかもしれないのよ!? そんな態度のままなら、私にも考えがあるわ」


 驚くパメラを乱暴に椅子へと戻し、ピコは冷え冷えとした声を出した。


「しゃべらないのなら、確保した瞬間に紅山仁を殺すわ。これならどう?」

「!? ふ、ふざけないでください!! そんな事は許しません!!」

「なら今ここで正直に話しなさい。そうすればアイツの命は保証するわ」


 強引な手段だったが効果があったらしく、パメラは苦汁を顔に浮かべる。

 しばらく悩んだ後、この場だけの話ということで重い口を開いた。


「私が地上を渡り歩いたのは――」


 パメラはたどたどしく、ゆっくりと真実を語った。


 それはピコが想像していたものとは、まるで違っていた。

 聞き終わった時には、開いた口が塞がらなかったほど。


「何よ、それ!? 話してしまえば良いじゃない!? なんで――」


 文句が飛び出す前に、パメラが口を閉ざす理由に思い至った。


「アンタまさか、ザフキエル様が居るから黙ってるの?」

「……それも、あります。でも話したところで結末は変わらないでしょう? ラグエル様は証言の如何に関わらず私を排除する。それぐらい分かります」


 だからこの話は墓場へ持っていく、とパメラは言った。


 彼女の言うように、未来は変わらないというのがピコにも分かった。

 焦点である渡航理由だが、彼女は悪魔や死神と接触したわけではなかった。


 というよりパメラは誰にも会っていなかった。

 だから証言の裏を取れず、結局ラグエルの準備した排斥体制を覆すことは叶わないだろう。


 だが事実を知ったピコは、今度は悔しさを滲ませた。


「これは正しくないわ。こんな結末、私は絶対に認められない」

「ピコ? 何を言っているのです?」

「アンタは秘密情報部に必要よ。間違っているのは私達だった」


 一瞬で結論が出たピコは、その言葉を残してパメラの前から去った。

 真実は分かった。あとはこの馬鹿げた不始末をどうつけるか、それだけである。


 部屋を飛び出すが、ふと振り返って部屋の錠前を見た。


「……あの変態馬鹿を見習って、準備するか」


 意趣返しにもなるし、丁度いいだろう。やるべきことがはっきりしてきた。

 ピコは変わることなく、秘密情報部のため行動を開始した。

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