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暗殺者より愛をこめて  作者: カツ丼王
第三章 暗殺者の覚醒
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17.帰路の後

 要塞都市ソサエティへと、ラグエルを含めた実行部隊は戻っていた。


 これに遅れること一時間後、後処理に追われたピコも養成所へと帰還した。


「少し慌ただしくなってきたわね」


 ジープを駐車場に押し込み、ある場所を目指す。

 壁を超える手続きをしていた時、仁が行方不明になったと彼女は耳にした。

 詳細は不明だが何者かの襲撃があったとのこと。


「念のため警戒網を敷け。彼の生死も調べろ」


 仁が消えたと聞いても、ラグエルはそれほど動じなかった。

 もともとパメラを拘束するまでの予防線だったため、居なくなっても支障はないと考えたのだろう。

 ピコも同様で、この場所に足を運ぶ必要はなかったかも、と思い始めていた。


 養成所の一室。仁が寝泊まりしていた部屋へと入る。


「えらく生活感がある空間ね」


 洗濯物や上着が散乱し、家主の性格がよく表れていた。

 ため息をつきながら手掛かりはないかと物色する。

 床にはメモらしきものが散見され、「おすすめデートスポット」などと書かれていた。


「そういえばあの二人、一度街に出かけていたんだっけ?」


 頭が回るのか能天気なのか。最初は腹立たしいという印象しかなかったのだが。


「もし自由の身になってたとしたら、パメラを助けに来るかしら?」


 独り言を呟くが、そんなことは在り得ないと分かっている。

 都市の入場ゲートは厳重な警戒態勢を敷いており、突破することなど到底不可能だからだ。


 ふと本棚の教程マニュアルが目に入り、以前のやり取りを思い出す。


「確か、穴が開くほど読んだって言ってたわね」


 何の気なしに、パメラが渡したとされる教程マニュアルに触れる。ゆっくりと冊子を開いたピコは「え?」と声を漏らした。


「……何、これ?」


 十センチ近くある分厚さの冊子だが、おかしなことに中身がくり貫かれていた。

 ちょうど何かを入れる箱のように、文字通りページに大穴が空いている。

 他の数冊も慌てて開くが、同じような工作が施されていた。


「何なの? 中に何かを入れて……隠していた?」


 他人に見られては不味い物でも入れていたのか、と考えてみる。

 しかし答えは得られず、段々とピコの胸中に不安が入り混じっていった。


 もしかしたら、自分は何かを間違えたのではないだろうか? 

 何か決定的な、それも致命的なミスを犯したのではないだろうか?


 ――あの少年は本当に、ただの高校生だったのか?


 戦慄した彼女は居てもたってもいられなくなり、部屋を飛び出した。

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