17.帰路の後
要塞都市ソサエティへと、ラグエルを含めた実行部隊は戻っていた。
これに遅れること一時間後、後処理に追われたピコも養成所へと帰還した。
「少し慌ただしくなってきたわね」
ジープを駐車場に押し込み、ある場所を目指す。
壁を超える手続きをしていた時、仁が行方不明になったと彼女は耳にした。
詳細は不明だが何者かの襲撃があったとのこと。
「念のため警戒網を敷け。彼の生死も調べろ」
仁が消えたと聞いても、ラグエルはそれほど動じなかった。
もともとパメラを拘束するまでの予防線だったため、居なくなっても支障はないと考えたのだろう。
ピコも同様で、この場所に足を運ぶ必要はなかったかも、と思い始めていた。
養成所の一室。仁が寝泊まりしていた部屋へと入る。
「えらく生活感がある空間ね」
洗濯物や上着が散乱し、家主の性格がよく表れていた。
ため息をつきながら手掛かりはないかと物色する。
床にはメモらしきものが散見され、「おすすめデートスポット」などと書かれていた。
「そういえばあの二人、一度街に出かけていたんだっけ?」
頭が回るのか能天気なのか。最初は腹立たしいという印象しかなかったのだが。
「もし自由の身になってたとしたら、パメラを助けに来るかしら?」
独り言を呟くが、そんなことは在り得ないと分かっている。
都市の入場ゲートは厳重な警戒態勢を敷いており、突破することなど到底不可能だからだ。
ふと本棚の教程マニュアルが目に入り、以前のやり取りを思い出す。
「確か、穴が開くほど読んだって言ってたわね」
何の気なしに、パメラが渡したとされる教程マニュアルに触れる。ゆっくりと冊子を開いたピコは「え?」と声を漏らした。
「……何、これ?」
十センチ近くある分厚さの冊子だが、おかしなことに中身がくり貫かれていた。
ちょうど何かを入れる箱のように、文字通りページに大穴が空いている。
他の数冊も慌てて開くが、同じような工作が施されていた。
「何なの? 中に何かを入れて……隠していた?」
他人に見られては不味い物でも入れていたのか、と考えてみる。
しかし答えは得られず、段々とピコの胸中に不安が入り混じっていった。
もしかしたら、自分は何かを間違えたのではないだろうか?
何か決定的な、それも致命的なミスを犯したのではないだろうか?
――あの少年は本当に、ただの高校生だったのか?
戦慄した彼女は居てもたってもいられなくなり、部屋を飛び出した。




