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暗殺者より愛をこめて  作者: カツ丼王
第三章 暗殺者の覚醒
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14.謀略の先端

 パメラがナイトクラブへと入った後、車に残った二人は連絡を待っていた。

 運転席のピコはトランシーバーを片手に、バックミラー越しに仁を見る。


「ねえさっきの話だけど。パメラの秘密、教えてあげようか?」


 声を掛けると、彼は気だるげに視線を返した。


「いやいい。不愉快な話は聞きたくない」

「あらあら、好きな女の子の悪口は耳に入れたくないか」


 何の気なしに揶揄ってみるが、彼は微動だにしなかった。

じっとナイトクラブの入り口を眺めるているだけで、他には何も関心がない。


「アンタもしかして、本当にあの子に恋でもしちゃったの? まあ確かに見た目も性格も悪くはないけど、あまりおススメはしないわよ」

「随分なアドバイスだな。アイツを絶えず監視した結果がそれか?」


 途端に目がこちらを向き、ピコの微笑がビクッと止まった。


「何の話かしら?」

「パメラの部屋をピッキングしただろ? アイツの部屋の鍵穴に引っかき傷があった。お前も一枚噛んでるのか?」


 これまでとは別物の、はっきりとした敵意にピコは首を傾げた。

 何なのだろうかこの状況は。こんなものは想定にはない。


「……何の事だか分からないわ」


 どう対処すべきか考えるが、仁は変わらず冷淡な声音で続けた。


「俺が問いたいのは、お前がアイツにちょっかいを出しているかどうかだ。マスターキーを使わなかった以上、組織全体がアイツを目の敵にしているわけじゃない。一部の奴らがパメラを敵視していることになる」

「何の話か分からないけど、面白い物の見方ね」

「答える気がないなら、トランシーバーを助手席に置け。車から出ろ」


 黒色の銃口がミラーに映り、ピコは思いもよらぬ展開に溜息を漏らした。


「……いつの間に私の銃を盗んだのかしら?」

「ダッシュボードをよく見ていただろう。パメラに気を払い過ぎだ」

「ハ、アンタ中々やるじゃない」


 あまりの抜け目のなさに笑い声を漏らしてしまう。

 両手を上げて外に出る。背に銃口を感じながら、ピコは慎重に言葉を選んだ。


「どうやらただの高校生じゃないみたいね」

「質問するのは俺だ。お前らの狙いはなんだ? どうしてパメラを敵視している?」

「それこそアンタが聞きたくなかった話になるわ。まあもう手遅れだけど」

「手遅れ? ……まさか!?」


 悪い考えが過ぎったのか、仁はナイトクラブへと視線を泳がせた。

 それを見逃さなったピコは靴の踵から隠し刃を抜き、そのまま後ろ蹴りを放つ。


 ハッとなった仁もすぐさま反応し、顔を逸らせながら一歩後退する。

 のけ反った体勢を立て直し、奪った拳銃をピコへと向けた。


「チ!?」


 舌打ちした彼は何を思ったのか拳銃を投げつけ、体術の構えを見せる。


 この行動に心底驚いたピコであるが、瞬時に右手へと武器を呼び出し、戦闘態勢を整える。

 手の内に現れたのは、彼女が行く先々で共にしていたパラソルだった。

 お洒落な色調のそれを剣のように振るい、強烈な一撃を叩きこむ。


 防御に回した右腕が軋みを上げながらも、しかし仁は構わずこちらに迫る。


 一丁前に殺意を向けてくるため、反射的に柄に仕込んだ短刀を抜いた。


「――クソ!!」


 隠し武器に目を瞠った彼へ向けて、抜身の刃を突きつける。

 肩を貫いた剣先が体から姿を見せ、悲鳴に勝利を確信する。

「――ッ!?」


 が、顎に入った衝撃に意識が歪む。そのまま上体が揺れて地面に倒れ込んだ。


「この野郎……この私に!」


 額から流れる血を無視して立ち上がろうとするが、足に力が入らなかった。

 咄嗟の反応から戦闘は不得手だと思ったが、油断し過ぎた。

 反撃に転じようともがくが、頭をさらに地面へと叩きつけられる。


「答えろ!! お前らの目的は何だ!? 正直に答えないと殺すぞ!!」


 激しい剣幕の少年が出血をものともせず恫喝する。

 しかし時間切れを悟った彼女は余裕の笑みを返した。


「だから言ったでしょう? あの子とは関わらない方が良いって」

「またそれか! ふざけたこと抜かすと――!?」


 すると仁は呼吸荒く、青い顔になって崩れ落ちた。

 突然の体調の急変に思い至ったのか、突き刺さった刃物を憎々しげに掴んだ。


「次からは優位に立った時、すぐにトリガーを引くことを勧めるわ」


 狂わされた平行感覚を取り戻したピコは、朦朧とする仁を嘲笑する。

 そのまま強烈な蹴りを腹に食らわせ、彼の余力を奪い去った。


 血を拭って体裁を整え、ふと地面に転がった拳銃を見る。

 そこで車に置いたトランシーバーから声が響き、さっと駆け寄った。


『ピコ、応答しろ。餌を連れてこい』

「了解しました。手筈通り、紅山仁を運びます」



 彼女は短く応答し、作戦を次の段階へと移行させる。

「……」


 刃に塗った麻痺毒で動かなくなった少年を見て、しばし無言になった。


 どうして彼は奪った拳銃を使わず、素手での戦いを演じたのだろうか。

 人を撃ち抜くのを躊躇ったという可能性はあるが、彼女には一つ心当たりがあった。


 戦闘が苦手なピコは拳銃をわざと奪わせ、一発目に仕掛けた弾の暴発で仕留める手法をよく使う。

 まさかそれを見破ったのか?


「……偶然よね?」


 ナイトクラブを見つつ、拭えない違和感がピコを襲った。

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