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暗殺者より愛をこめて  作者: カツ丼王
第二章 暗殺者の初恋
11/29

10.天使VS悪魔

 キャリーバックをコインロッカーに預けた後、件の国立公園へと足を向けた。

 園内では乗馬を楽しむ家族や、カフエを楽しむ若者達が見受けられる。

 だが時間も遅くなっているため、帰路に発つ人もいるようだ。


 美しい花々と野鳥の囀りを背景に、公園の中心に聳える100メートル近い高さの塔を目指す。

 高速エレベータで最上階に着いた時には、すでに日が沈みかけていた。


「はあ、これはすごいな」


 展望台から見える光景に仁は息を呑む。

 クラシックな風景と最先端の建造物が入り混じり、紅く染め上げられた街並みは、手放しに褒められるくらい美しかった。


 腕を組んでうんうんと頷き、目の前の光景に満足する。

 だが隣に立つパメラの顔はどこか物憂げであった。


「どうしたんだ? これが見たかったんじゃないのか?」

「え、ああ……そうですね。確かに惚れ惚れするような光景なのですが……」


 じっと窓ガラスの向こうを見つめるが、一向に顔は晴れない。

 日が落ち、ソサエティの街角が夜の時間を迎えても、彼女の様子は変わらなかった。

 一時間ほど景色とお土産を物色した所で、諦めたように首を振った。


「帰りましょう。とても満足しました」


 門限が近づいてきたと言い、夜景に背を向ける。

 彼女の後を追って塔を出た所で、仁は聞いてみることにした。


「何が見たかったんだ? 随分と熱心だったじゃないか」

「そ、そんなことはありませんよ?」

「いやいや作り笑顔100パーセントじゃん? 欲求不満のパメラちゃんだろ?」

「言い方があると思うのですが……」


 彼女は白状したように溜息をつき、疑問に答え始めた。


「真冬の空に浮かぶ星々。オリオン座の輝きを目にしたかったのです」


 彼女曰く、冬は一年でもっとも星空がきれいな季節であるらしい。

 特にオリオン大星雲やすばるなど、肉眼でも見える天体が数多く存在するとのこと。

 天体観測には悪くない時分だが、パメラはさらに都市の特性について語る。


「この街は霊格の高い土地として、以前から認知されていました。魔術と星座は古から縁近いもので、ここから見える星々は一段と輝いていたと聞いてます」

「そんな不思議パワーのある土地だから、異界から天使がやって来たのか」

「ええ。パワースポットとして優れている地域は、魔の領域の者にとって好ましいですから。そこまでは別に良かったのですが……」


 パメラは悔しそうに結界に覆われた上空を見る。

 そこには星や雲が映し出されているが、年中変わらない規則的な絵を表示していた。


「結界とやらのせいで、本物の夜空を拝むことが叶わなくなったか」

「歯痒いです。私達のせいですので文句は言えませんが……見てみたかったな」


 オリオン座の輝きが見たかったと、彼女は名残惜しそうだった。

 まさか天体観測というロマンチックな趣味を持っているとは思わない。


「意外とロマンチストだな、お前。見えないところでお洒落してるし」

「そうですか? というか見えない所とはどういう意味です?」

「それはパン――服の下にペンダントとかしてるじゃん? ほらこの前、偶然にも見えちゃったから」


 危うく下着を奪取したことを述べそうになり、あわてて修正する。

 先日のアクシデントに言及すると、途端にパメラは頬を染めて眉を吊り上げた。


「その件は蒸し返されたくないのですが……私も女の子なんです。お守り代わりのペンダントくらい良いではないですか」

「それって、もしかして恋人からの贈り物なのか?」

「いいえ。さる方からの贈り物です。別に値が張るような物ではないみたいです」


 入手経路が気になって問うと、彼女は渡って首を振った。

 良かった良かった。まだ誰も手を出していないと分かり、ホッと安心する。

 不思議そうな面持ちのパメラは、ふと美しい夜空を見た。


「ギリシャ神話の狩人オリオン、月の女神アルテミスの逸話は知っていますか?」

「いや、全く知らんね」


 突然の話に面食らうと、パメラは楽しそうに話を続けた。


「オリオンはアルテミスと仲睦まじいことで有名でした。それを良く思わなかったアルテミスの兄アポロンは、二人を引き離しにかかるのです。彼は海から出ているオリオンの頭を黄金の岩と偽り、アルテミスを騙して弓で射らせるのです」

「過激なシスコンだな、アポロンってやつは」

「ええまあ。その矢が原因でオリオンは死んでしまいます。これを悲しんだアルテミスは大神ゼウスに頼み、オリオンを星座として夜空に上げてもらったのです」


 そして冬の夜では、今でも恋人に会うため月がオリオン座を通っていくという。

 悲劇であるが、何ともロマンチックな話である。


「ふーん、星座なんて俺は何にも思わないけどなあ」


 偏った知識しか持たない仁からすれば、つまらない話であるに違いなかった。

 相槌を打つだけの彼を見て、パメラは不満げに頬を膨らませる。


「あなたはエッチなものばかり見てますから、目を向ける場所を少し考えるべきです」

「なにい、男子なら当然だっての」


 鋭い指摘を食らうも、そこで何となく考えてみる。


 もし仮に都市を覆う結界が消え失せて、本物の空が――オリオン座の輝きが露わになった時、それを見たパメラはどんな顔をするのだろう? 

 喜んでくれるのか、感動して泣くのか、それとも笑ってくれるのか。


 生真面目な普段の態度からは、とても想像がつかなかった。


「お熱いわねえ。冬なのに溶けちゃいそうだわ」


 そんな事を考えていると手を叩きながら、一人の女性が前方に姿を現した。 

 青い髪の女性――朝見かけたエリザという女である。


 彼女から発される剣呑な空気を感じると、パメラが一歩前へと進み出る。


「初めまして。何か御用でしょうか?」

「ええ、用があってね。私は秘密警察の者よ」


 悪魔側の諜報員だと名乗り、聞いた二人は驚きを示す。

 つまり先ほど養成所にやって来ていた集団も悪魔だったということになるが、どういうことだろうか?


「悪魔側の諜報員? そんな方がどうしてこの街に?」

「暗殺者シリウスが姿を見せたと聞いて、慌てて使いに出された次第なのよ」


 彼女の言葉に、パメラはハッと何か気付く。


「ラグエル様が協力を要請したと聞いていましたが、あなた方のことですか」

「ええ、お互いに上司にこき使われて大変ね」


 エリザは青い長髪を振り、辟易とした顔を浮かべる。

 ヘラヘラとした態度であるが、全身から怪しいオーラが噴き出していると分かった。

 ただ話をしに来たわけではない。


「それでご用件は?」

「貴方を秘密警察へとご招待しようと考えているの。如何かしら?」

「拒否します。……分かっているのですか? これは協定違反ですよ?」

「知ってるわ。さっきだって応援要請を蹴って来たところなんだから」


 ふざけた態度のエリザに対し、パメラは厳しい目線を投げる。

 協力要請を拒否しながら、さらに天使側の局員を引き抜こうとしている。

 第三者である仁からしても、これが重大な問題行為だと理解できる。

 裏付けるように両者の間に殺意の線が交わり、一触即発状態になった。


「仁くん。武器を構えてください。不味ければ転移弾を使って逃げて下さい」


 転移弾とは、被弾者を別の場所へ転送する弾丸である。

 仁は緊急時の脱出装置代わりとして、パメラからこの特殊弾を受け取っていた。


「分かった。……一人で倒せるのか?」


 相棒の拳銃ハードボーラーを抜きながら声を掛けると、彼女は笑って見せた。


「問題ありません。戦闘は私の得意とするところですから」


 そう言って掌から黒い布を広げた。

 どこに隠していたのかも分からないその布地は、飾り気のない黒のロングコートで、彼女は素早くそれを羽織った。


「それが同志達を血祭りに上げた力、兵団プラトーンなのかしら?」

「さあ、どうでしょう? 退くならこれが最後のチャンスですよ?」


 パメラの最終勧告を聞いて、エリザはおどろおどろしい笑い声を上げる。

 そして脇に隠していた一丁の旧式拳銃を構えた。


「手足を潰して、二人ともエスコートしてあげる」


 悪逆に満ちたセリフと共に、銃声が辺りに走った。

 エリザの持つ旧式拳銃から放たれた弾丸が、真っ直ぐに仁へ向かう。

 即座にパメラが割って入り、なんと弾をその身で受け止めた。


「パメラ!?」

「大丈夫。このコートは弾を通しません」


 三発の弾頭が命中するも、彼女は反撃に転じてデザートイーグルを咆哮させる。

 特大質量がエリザに襲い掛かるが、舞踊のように軽やかな足取りで躱した。


「あはは! 随分と下品な得物を使うわねえ!」

「そちらこそ、ルガーP08なんて実用性が薄いですよ」


 構わず50AE弾を発砲すると、エリザは銃弾の嵐に真っ向から飛び込んできた。

 放たれる凶弾を拳銃戦闘術のなせる回避術で次々と退け、青髪の悪魔は超人的な速度でパメラへと迫る。


「面倒ですね」


 ぼやいた彼女も、向かって来る敵へと一気に駆けた。

 両者の距離が二メートルにまで近づき、瞬時に銃口を向け合う。


 口火を切ったのはエリザのルガーだった。

 眉間を撃ち抜く弾道から、パメラは首を捻って紙一重の回避を見せる。そして頬スレスレの銃撃をものともせず愛銃を構えた。

 だがパメラが人差し指を引く前に、鋭い蹴りで拳銃は吹き飛ばされた。再度ルガーで狙われるものの、瞬時に距離を詰め、右腕で銃身を打ち払う。


「なら――喉を切り裂いてあげる」


 あらぬ方向へと9mm弾が飛び出すが、エリザは首に向けて貫手を繰り出した。


「――ハ!」


 だが指先が喉に刺さる前に、パメラにその手首を掴み取られた。


「痛いんだけど? その手を離してくれる?」

「お断りします」


 ミシミシと軋む音を響かせながら、真顔で拒否する。

 するとエリザは大きく上体を逸らせ、勢いのままパメラの顔目がけて上段蹴りを放つ。

 焦らず彼女も手を放して後退し、両者の間が一気に開いた。


「ったく、そんな力押しじゃあ、見守ってる彼氏に嫌われちゃうわよ?」

「ご心配なく。彼とはそんな間柄ではありません」


 生真面目なパメラであるが、これは後方の仁にダメージが入った。

 少しぐらい頬を染めたり、動揺を見せてくれても良いのではないか?


 そんな冗談はさておき、やはり二人の戦いは尋常ではないと思った。

 銃弾を当たり前のように先読みして躱し、もはや単純な撃ち合いは成立していない。

 至近距離まで近づき、体術と銃撃を繰り返し、わずかな隙を突いて必殺を狙う。


「これが拳銃戦闘術か……」


 如何に強化されたと言っても、銃弾を躱すなんて仁にはまだ無理だった。

 守られているのは癪だが、自分の力で何とかできる話ではなかった。


「紅山仁だったかしら? あなた本当に場違いね」


 パメラの遥か後ろで悔しさを滲ませていると、エリザが声を上げた。

 彼女はルガーを片手に、愉快気に嘲笑を向ける。


「カッコよくその子の盾になったんだって? 笑える話じゃない。よりにもよってコウモリ風情を助けるだなんて、無駄骨も良いところだわ」


 せせら笑う声が木霊すると、掻き消すように大口径の銃が火を噴いた。


「おしゃべりが好きですね。舌を噛みますよ」

「あらあら怒ったの? ごめんなさい、王子様の前で配慮が欠けてたわ」

「……いい加減、その高笑いも飽きてきましたね」


 見たことのない剣幕になったパメラは、コートの袖から新たに二梃のデザートイーグルを構えた。

 そして幾度も引き金を絞り、爆音を轟かせる。


 迎え撃つエリザは弾雨の中を縦横無尽駆け、計十四発のマグナム弾を韋駄天のように走り抜ける。

 さらにトグルアクションから放たれる9mm弾を、荒々しくも正確にパメラ目がけて連射させた。


 迫る銃弾をパメラはコートの上から弾き飛ばし、弾切れの二梃拳銃を放り投げる。

 武器を捨てるなんて自殺行為だと仁は驚愕するが、当の彼女は動揺せず、当たり前のように次の兵装をコートから抜いた。

 50AE弾を装填した二梃のデザートイーグルが新たに姿を見せ、変わらない火線を闇に引いた。


「――チ!?」


 エリザは舌打ちし、飛び跳ねながら9mm弾をマグナム弾にぶつける。

 しかし弾ききれない弾が頬を掠め、さらなる追撃にたまらず林の中に退いた。


「お、お前……一体いくつ銃を持ってるんだよ?」

「なに、嗜む程度ですよ」


 銃の演武が小休止を見せた所で、パメラはさらに新しい二梃拳銃を手に提げた。

 話に聞いていた彼女の力だが、なるほどこれは馬鹿げている。


 コートの裏に異次元空間への入り口を創り出し、その中へと無尽蔵に武器を貯蔵する――兵団という特殊能力。銃の最大の欠点であるリロードを無視し、おまけにコート自体も防弾効果を持つという話だ。


「欲張りめ。おっぱいだけに飽き足らず、中二的能力まで備えているとは」

「うるさいです。後でお仕置きですからね」


 軽口を叩きながらも油断せず、パメラは林の先に銃口を向ける。


 すると視線の先から青い髪を靡かせ、エリザが再登場した。

 頬からは薄っすらと悪魔らしからぬ赤い血が流れ、美しい相貌には下卑た笑みが滲んでいる。


「ククク、傷をつけられたのは久々だわ」  


 俯いて肩を震わせ、喜悦ここに極まるといった様子。

 何が面白いのか分からないが、パメラの強さを見ても怯むどころかむしろ喜んでいた。


「それだけやれるのなら、秘密情報部に属する必要はないんじゃない? 悪魔はまだしろ、天使にだって与するべきじゃないわ」

「私の力は守護天使ザフキエルに捧げる。残念ですが、その提案は飲めませんね」


 誇るように宣言した途端、エリザの笑い声がピタリと止んだ。

 呼応するように辺りの風音が消え失せ、おかしくなりそうな静寂に迷い込んだ。


「何が――」


 息を呑んだ瞬間、目が醒めるような轟音が耳に飛び込んだ。


「え!?」


 何が起こったか分からずにいると、何ゆえかパメラの身体が揺れる。

 足元に三発の弾頭が落ちた。

 一分も違わず、三つ同時に軽い金属音が響いた。


「……早撃ち(クイックドロウ)!? それも三発同時!?」


 苦悶のパメラは予想外の攻撃を食らい、瞬時に銃口を敵に向ける。

 先には俯いたまま銃口を上げたエリザがいた。

 彼女はゆっくりと顔を上げ、何も籠っていない虚ろな眼でこちらを見た。


「不愉快だわ。あの女の名前を聞くことになるなんて」


 危険なオーラを肌に感じた仁と同じく、パメラは撃針を構わず走らせた。

 だが一発たりともエリザの身体を貫かない。


 回避動作すら見せず、呼吸の合間を縫うように真っ直ぐ迫ってくる。

 まるで撃ち放った弾丸が恐れをなし、自ら逃げるかのように弾道が逸れていく。


「!? これは!?」


 パメラは眼光を一層鋭くさせ、呼応するように愛銃の咆哮が激しさを増す。

 一メートルに満たない間合いで、幾度も火線が走り抜ける。


 超一流同士の激戦は、傍から見ると花火のように華麗な演目を描いた。

 マズルフラッシュが焚かれる一瞬一瞬に、超人による殺し合いがコマ送りのように映し出され、その一挙手一投足には絶対的な殺意が籠められていた。

 組み手の如き近接射撃の最中、銃を持つ手がにわかに拮抗した。


「ククク、残念ねえ。お荷物が居なければ、良い勝負が出来たかも」


 エリザがそう仄めかした刹那、火花とともに二人の狭間が広がる。

 そしてドイツ製の名銃が、呆然と立つ仁へ矛先を向けた。


「さあ王子様! 私がヴァルハラに送ってあげるわ!」


 エリザは嬌声を響かせながら、さきほど見せた三連撃の速射を放った。

 鋼鉄に穴を穿つほどにまで変貌を遂げた、恐るべき魔弾が襲い掛かる。


 だが衝突されるよりも早くパメラが弾道に割って入り、彼を守る盾になった。

 初撃を軽くいなした自慢のコートは引き裂け、鮮血が飛び散る。


「――ぐ!?」

「アハハハ! どこまで耐えられるかしら!?」


 視界を埋める発光が何度も迸り、その度に銀髪が揺れて血飛沫が上がる。

 瞬きするような間に装填操作を行い、悪魔による一方的な蹂躙劇が続いていく。


 四度目のリロードを行った所で、血まみれになったパメラは膝をついた。


「……お、おい」


 肩で息をする背を見て、平静を失くした仁は声を絞り出す。

 だが彼女は振り返りもせず、悲鳴のような気合とともに悪魔へと特攻を仕掛けた。

 対する敵は悠然と銃を構え、蝋燭の火のようにフッと姿を闇に紛らせた。


「な!?」


 照門の先にいた標的を失くして驚愕する。

 だが突如ハッと何かに気付き、彼女は反射的にコートを盾にした。


「遅い」


 しかし叶ったのは、脇腹に突き刺さった縦拳の衝撃に呻くことだけだった。


 パメラの身体は数メートル宙を舞い、樹木に衝突して地へ墜ちた。

 凶撃を放ったエリザは、涼しい顔で地面のルガーを拾い上げる。


「銃に残した殺意に気を取られるようでは、私には勝てないわよ」


 土の上で動かなくなったパメラを見やり、再び愉快げな声を上げた。

 仁はパメラがやられるのを、ただじっと見ていることしか出来なかった。

 あまりにも現実離れした状況に頭が追い付いていなかった。


「……う!?」


 エリザの目がこちらを向いた瞬間、訓練の賜物か咄嗟に銃を向けた。

 しかし目の前の怪物に通用するイメージが湧かず、グリップを握る手は震えていた。


「そこまで出来れば上出来よ。でも引き金を引けば、命を貰うわ」

「な、何だと!?」


 仁を敵とすら認識せず、エリザは青髪を揺らしてパメラへと向かう。


 今戦わなければ、彼女が帰ってこなくなる。

 それが分かっているのに、恐怖で足が竦んでしまう。

 絶対に勝てるわけがない。

 パメラだって雲の上の存在だと言うのに、この女の強さは常軌を逸している。敵うはずがない。

 無理だ。絶対に勝てない。引き金を引けば、確実に自分は死ぬ。


 少し前までただの人間だった彼に、この悪魔を倒せるはずがない。


「…………」


 動かなくなったパメラ。血に濡れた銀髪を見て、あの日の光景が蘇る。

 どうしてあの時、赤い閃光の前に身を投げ出したのかを考えた。


 すると何故か、両手の震えはそこで止まった。

※ルガーP08

 トグルアクションと呼ばれる特殊な機構を持つ、ドイツのセミオートピストルです。

 1908年にドイツ軍に正式採用されたからP08と呼称されるようになりました。


 塹壕戦が強いられた第一次世界大戦で、取り回しがしやすく連射できることから

 威力を発揮し、その後第二次世界大戦でも戦利品として重宝されたそうです。


 とはいえ、現代の銃に比べれば性能はイマイチでしょう。

 トグルアクションはすでに廃れていますので、コレクター的要素の方が強いと思います。

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