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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

霞んだ恋

作者: 生きの良いバグ

乳母達が窓を覆っていた青銅の蓋扉を壁に結わえ付け、その紐をタペストリーに押し込みながら目を細めて霞んだ空を見つめていた。 暗くすえた匂いの室内をおぼろな朝の光と潮風に混じった早咲きのカメリアの香りで満たされてゆく。


「そろそろ天蓋を出しませんとね」

「もうそんな季節なのね」

「薬草が芽を出していると良いのですが」

「神殿丘ののり面なら……」


母ドロレスと乳母ケーティの会話すらいつもより霞んで聞こえ一度は目覚めかけた幼いキャサリンだがあまりの心地良さに再び微睡みの海へと沈んでいった。


大人たちが駆け回る足音でキャサリンは跳ね起きた

どこからか剣戟も聞こえる

内開きの扉に姉が閂をかけ乳母達が椅子や卓子を運んで扉を守ろうとしている

キャサリンも急いで妹を抱き上げあやし始めた。 まだ生まれたばかりの赤ちゃんなのでどう宥めても泣き止みそうもない。


「大丈夫ですよ」


誰かがキャサリンを軽く抱きしめ背中をさすってくれたがキャシーは振り解いたその手に妹のアデリーンを預けると寝間着のまま窓ごしに弓を射ている姉の後ろから外をのぞき込んだ。


船だ!

船で襲撃されたのだ!!


窓からの投石や矢の援護射撃の中、兄のテオとフェルは槍で戦っている

彼女はまだ弓を扱えないので紐を使って石を飛ばすがいくつか味方に当ててしまった



◇◇◇◇◇◇◇ 昼


「お母様が……」


略奪された女の中にはキャシーの母ドロレスも含まれていた。 冬に消費した薬草を補充しようと陽あたりの良い斜面を見廻りしていた時に襲撃されたのだという。



母上は子供を生むには歳を取りすぎている

奴隷として誰かの侍女になるのだろうか


堂々たる王妃として君臨していた美しき母上

聖なる巫女として多産の母として大地に祝福を与えていた母上

来週に迫った大地の祝福をいったい誰が行うというのか



◇◇◇◇◇◇◇ 三年後


「今年はヘレーヌが祝福を与えるように」


姉ヘレーヌは糸紡ぎが上手くない

糸紡ぎ名人だった祖母や母の手解きを受けながらさして上達しなかったのは集中力のなさだと言われていたが姉の活発すぎる精神は糸紡ぎのような単調で根気を必要とするものと相性が悪いだけではないかとキャシーは思っている。 残念なことにヘレーヌは他の女仕事も社交も得意とは言えない。 女の社交は同盟相手を細かい心配りでもてなすべきだというのにヘレーヌは王や兄達と同じように政治情勢だの各国の武力の話ばかりしていたため外交が薄っぺらになってしまっている。 全員が同じ仕事をしていては連携ミスもいいところではないか。


去年祖母が亡くなり、父の後妻で元侍女ライザは産後のひだちが悪く男の子一人産んだだけで亡くなり命懸けで生み落とされた弟も半年足らずでライザを追ってしまっている。 以来「息子の数も充分だし、もう良かろう」と父は独り身を通している。 妹アデリーンはかなり口が達者になってきたが親族の女が足りていないのでヘレーヌが女の嗜み仕事を教えなければならないというのにヘレーヌ自身が女仕事を苦手にしているようでは兄嫁選びを慎重に行うしかないのかもしれない。


上の兄達はすでに適齢期なのだが王妃の不在が響いている。

父王は「ヘレーヌをそうそうに嫁がせて、内向きはキャシーに任せるべきか」とまで言っていたし、ヘレーヌが祝福の実務をするからには修行のため大地母神の神殿に行くのも今年からキャシーひとりとなったようだ。


大地の恵みを得る儀式は健康で多産の象徴でもある。 その儀式を行う巫女となるには中立国の大神殿での修行が必須で少年達が学校で地理や哲学や語学に武芸などを学ぶように各国の巫女候補生達は大神殿にて祈りの祝詞や歌や刺繍そして礼儀作法と魔法などを学ぶのだ。


キャシーも2年前から大神殿で学んでいたのだが幼すぎて通年の修行には耐えられまいと夏のひとときという仮修行にすぎなかった。 ヘレーヌは本修行の余裕がないまま儀式を執り行うはめになってしまっただけに国の威信の為にも本修行を済ませた礎といえる本物の巫女が必要であり兄嫁がいない現在それはキャシーだけがなりうると同時にその兄嫁にしてもキャシーが大神殿で見出すよう求められているというのが実情。 キャシーに付けられた侍女がめぼしい巫女候補生からある程度兄嫁選びをするのだろうが侍女まかせで済むはずがない。


旅立ちの日

隻眼のテオは「フェルに可愛い娘見つけておくれ」と笑った

フェルは「見た目ばかり気にするような娘ではなく兄上の良さをわかってくれるようなしっかり者を探してくれ」

ヘレーヌは唇を震わせ潤んだ瞳で空を見上げていた

アデリーンは小首をかしげて「どこ行くの?」 前々から言い聞かせていたのだが忘れていたか理解できずにいたのだろう。 1番仲良しの遊び相手が何年も居なくなると気付かず「行ってらっしゃい」と小さな手を振っていた。

キャシーと年の近い二人の兄達は「叔母上と仲良くな」


父王の妹カミラは王家を離れた身なので儀式を行うには難があったものの本修行経験者として姉妹の家庭教師でもありまたヘレーヌの仮修行の頃からの親族兼侍女としての付き添いでもある。 もちろんキャシーの乳母ケーティも



大神殿は大河に面した内陸部にある。

住み慣れた郷を離れ家族とわかれて暮らすのは不安な反面、目の前に海がない風景に心癒やされる面もあった。 海は悲しみをもたらしただけで嫌いではないのだが


キャシーは大神殿の仲間たちとよく薬草を摘みに行く。 血止めや化膿止めの薬を欠かしてはならないから様々な薬草を覚えるのもそれを調合するのも巫女になるためには大切な修行で王家の女仕事としても重要な役目を果たしている。 男達は普段危ない仕事をしているせいか危険回避行動を『弱虫チキン』だの『女の腐ったの』だのと呼んでそれを嫌う傾向が高いだけにしょっちゅうケガをしている。


「そうでなければ私達を守れないでしょう?」

と教えてくれたのは母だった。

「だから最初から危険にならないよう考えるのは女の役目なのですよ」と悲しげに微笑んだ


カミラも母と同様薬草学を極めていたから仲間たちにも信頼されている為だろうキャシーは薬草摘みに欠かせない人物としてよく誘われている。 大神殿の薬草園は強いハーブ臭に包まれているが時折流れる風がマグノリアの香りや人々の生活臭を運んでくる。


そんな中にかすかな血の臭いを感じて辺りを見回すと一人の少年が木陰でうずくまっているのが見えた。 追っ手を恐れているのかこちらの巫女達が見えているはずなのに助けを求めようとしてこない。


叔母達に声をかけて数の力で保護するべきか

騒ぎ立てずに治療するべきか


万一追っ手に見つかったなら戦いのすべが少ない女達では怪我人を守るより自分の身を守るべく少年を見捨てて逃げ去るに違いない。 状況はわからないながら騒ぎ立てる方が危険と判断し傍らのケーティとカミラだけにそれを小声で伝える。 カミラは掌で二人を押さえながら少年へと向かいかけた時「カミラ様これをご覧くださいませ」仲間の一人から声がかけられた。 叔母はそちらを抑える方の優先順位が高いと判断したのか不安そうにキャシーを一瞥して少女へときびすを返した。


あの少年の手当をキャシーに任せたというのか?

少年はおとりにすぎずキャシーのような少女を拐かす危険はないのか?


危機回避の難しさも修行のひとつなのだろうがキャシーは心を決めてケーティを残したまま少年へと歩み始めた。




◇◇◇◇◇◇◇


「ありがとう」


少年は狩りで酷いケガを負っていただけで拐かしの仲間でもなければ敵に追われてもいないと判ったため今は大神殿で静養している。 少女達に声をかけなかったのも「出血のあまり意識が朦朧としていたのだ」という


静養中の者を介護するのも応急処置同様巫女の修行の一部なので少女達は交代で介護に当たっていたのだが体を浄める時など未婚の少女達では何かと不都合もあり保護した本人であるキャシーに押し付けられる事が多いのは仕方のないことだった。


といっても単に少女達は気恥ずかしい思いから逃げたかっただけで少年を嫌った訳ではない。 彼は他国の王族らしく見目麗しい容姿をしていたので近寄りたい気持ちを抑える意味合いの方がまさっていたのだろう。 醜くて心を奪われるおそれのない老人の介護の方が人気な有様。 少年には護衛が数人いたのだが彼等は神殿警備と称して廊下の警戒に当たってくれたが身のまわりを世話してくれる侍女は腰の曲がった老女しかおらずその老女も奇行癖が強く自力では少年を世話できずにやるべき事を教えてあげないとボンヤリ困り果てていたりする。 時には少年の事がわからなくなる様子が不思議でカミラに尋ねると「亡くなった母上もそうでしたがご老人の病なのですよ」と教えてくれた。


少年の名前はテオドール

キャシーの兄テオドアのように少年もテオと呼ばれていた


テオは最初に応急処置してくれたキャシーには心許していたし他の少女達よりふれ合う機会が多いのもあって祖国の他愛ない話を面白おかしく話すようになっていた。 最近始まったという乳母である老女の奇行のアレコレをはじめ彼の姉ロリータがこの大神殿で修行していた事や粗野だけど心優しい父親の事や蛮勇でどこか抜けている叔父達の話や護衛騎士の失敗談などなどをつきることなく話してくれた。 テオも海に面した城で育っていたから何かと共通点も多くいつも話がはずみ互いを兄妹のような気安い関係として感じていたので他の少女達から交代要請があるのを不思議な事とすらキャシーは思う。


少女達からすれば頭のおかしい侍女ごと世話を焼くのも御免だがそれより心許してしまえば治療を終えた少年から夜這いをかけられた時に断りにくくなるのも嫌だったので歳の近い異性の傍に平気でいられるキャシーの方がどうかしていると考えていた。 未婚女性の価値を下げかねない行動なんて避けて当然ではないかと


とはいえ女性や老人は滅多にケガなどしないのでテオを始め若い男に忌避感をいだかず手当するキャシーの医術は頭ひとつ抜けたものとなり『医療所の女神』扱いされたのはムリからぬこと。 女神なんて娼婦と同義語で男達からすると崇拝対象となるのに比べて女の目から見ると女神とは『安い女の証』にすぎず『調子の良い口車に乗って将来の堅実な婚姻をさまたげている』軽蔑対象でしかない。 尊い血をまもるには誰彼なく許すべきではないしたとえ強姦であっても合意であっても庭師や馭者の子を王の子だとしてうそぶくような女をどこの王族が歓迎するというのか


少年はたまたま良心的だったようだが拐かされて奴隷として売られる危険をかえりみず一人で彼の元へ行ったことも信じがたい行為であった。


キャシーとカミラはこの年テオとフェルの相手を見つけられなかった



◇◇◇◇◇◇◇ 二年後 晩春


昨年から大神殿の修行を始めたダイアンとその従姉セリーヌはとても穏やかな気質でキャシーやカミラとも仲良しになれていたのでカミラは二人を紹介すべくテオとフェルを大神殿に招く準備を始めていた。


最終的には双方の親が政治判断するのだが予め顔合わせしておくのも疎かにできないことであった。 顔も知らないまま結ばれた婚姻よりも破綻する確率を抑えられるからだ。 王家や貴族の家庭崩壊というものは戦争や暗殺の元となりけっして手を抜いて良いものではない。 まして継承権首位のテオには醜い傷があり男達からは『勇気の証』と賞賛されていても女性の目にどう映るものかは不安でしかない。


大神殿にはこうして親族の巫女候補生を介した表敬訪問も多く夏場は見知らぬ若者たちで溢れるせいか血生臭い事件も多発しがちになる。 そうした事件の度に怪我人が大神殿のベッドを埋め尽くし介護する巫女候補生の手を握ったりお尻を触るなどの不届き者はほとんどカミラのような出産経験を持ち閉経した高齢の巫女達が担当する。 未通の巫女がそれを手助けして修行を積むのだがダイアンとセリーヌは共に若くベテラン巫女に恵まれなかった二人はカミラを殊の外頼りにしてくれたのでキャシーも二人の先輩巫女として充実した日々を送っていた。



「キャシー」

テオドールだった。

二年前より背がのびてすっかり青年へと変貌していたが笑顔には少年期の名残もあって懐かしくキャシーは夢中で駆け寄っていた。


護衛たちが立ち止まる中テオは微笑みながらキャシーとの再会を喜んでくれた。

あの老女は昨年暮れに亡くなったという。

テオドールの乳母で高齢のため春から寝たきり状態だったらしく昨年は大神殿に来ることができずにいたため今年は早めに来たのだと教えてくれた。


ダイアンとセリーヌを置き去りに話し込んでいたと気付いて辺りを見るも二人は既に立ち去ったとケーティに笑われてしまった。 二人はキャシーとカミラがツバをつけた娘であるから余計な厄介ごとを避けるべくそれとなくケーティが追い払ったのかもしれない。



◇◇◇◇◇◇◇ 夏


テオドールとキャシーは再度打ち解けられた。

一つの魂を二つに分けたとしか思えないほどの親密性で二人は一緒にいると分かれていた半身がやっと一つになれたような安心感に包まれたし離れていると孤独のあまり不安でたまらなくなっていた。

同じ景色を愛し

同じものを食べ

それだけで世界が輝いて見えた。


市の日に街で偶然出会った時には護衛達と荷物持ちをしてくれテオとケーティは広場でダンスも踊った。 ケーティは「こんなお婆さんを誘ったのもキャシー様を醜聞から守るために違いないのですから」キャシーの盾にすぎないと笑って目立たない木立の陰でこっそりキャシーたち二人を踊らせたりと護衛達も一緒に時の流れを忘れ大いに楽しんだ。


立ち入った話まではできずにいたが彼は正室の三男らしく身軽な地位に思えたしキャシー自身が帰郷後も巫女として他所の地へ嫁げなかったとしてもさして問題なさそうに思えた。 もちろんキャシーが国に残るよりは巫女となったダイアンとセリーヌの二人を兄嫁として迎え入れられる方がずっとありがたい。


薬草の調合を終えてカミラと昼休憩している時にフェルが訪ねてきた。

「襲撃に備えたいってテオ兄は来られなかったんだ」

テオドアは婚姻を諦めてフェル兄の子か年下の弟を育てるつもりなのかもしれない、傷は本人が気にするほどの醜さではないのだし元々の美貌と比較して卑屈になりすぎている気がしたものの(あの傷は私の援護失敗のせいかも)と思うとキャシーは強くたしなめられない。 こうした遠慮こそ悪循環の素だとしてもそんな兄の心を癒せるのは妹なんかではないだろう。


彼の本質を知りえない巫女候補生でもムリだ。

三年前まで兄に憧れて「側室でも良い」とチヤホヤしていた娘の中に肝が据わった人物さえいたならこうまで拗れなかったろうに


(もしもテオドールが兄のように傷を負ったなら)と思う。

きっとテオドールも身を引こうとするだろう。

そしてキャシーは今みたく相手からの言葉をひたすら待つだけの受身であることをやめてこちらから彼の手を求めるのではないか……むしろ早くそうなりたいとも思う。


旅の間に心の折り合いをつけていたフェルは終始微笑みながら「傷こそありますが兄は私と双子のようにそっくりなんです」「我が兄ほど強い戦士はおらぬでしょう」とダイアン達にアピールしていた。


ダイアンは「ご兄弟の仲がおよろしくてステキですこと」と言ってくれたし

セリーヌも「テオドア様にもお会いしとうございましたわ」と笑顔だった



◇◇◇◇◇◇◇ 夕焼け


フェルに守られながら薬草園で摘んでいるとテオドール達の姿が見えてキャシーが軽く手を振ろうとした時、フェルと彼の護衛仲間がテオドールの方に駆け寄るのが見えた。 なにが起きているのか解らないまま立ち竦んでいると兄はテオドールの護衛騎士に襲いかかっている!


何故戦っているのだろう?

何が起きているのだろう?

テオドールはキャシーに手を出したりはしていない

なのに口論すらなくいきなりの戦闘!


止めに入ったテオドールも巻き込まれて乱戦になっている

そしてテオドールが剣をふるいフェル兄が倒れた


ダイアンの悲痛な叫び声が聞こえた気がするが

夢に決まっている

駆け出したカミラ叔母がテオドールを罵って追い返しているだなんて

夢に決まっている



◇◇◇◇◇◇◇


フェル兄の手当をしていた。

訳がわからなすぎて黙ってジッとしていられなかったのかもしれない。


ひたすら

血止めをして

血止めをして

血止めをして

カミラがキャシーの手を押さえて首を振るまで続けていた



◇◇◇◇◇◇◇ 夜


泣き続けるダイアンを抱きしめながら背中をさするカミラが生き残った護衛達と話していた。


「ドリー王妃を拉致した連中だ!」

「テオドア様と戦っていた連中に間違いない!」


どうして?



◇◇◇◇◇◇◇


兄の遺体を埋めた記憶がすっぽりと抜け落ちていた

本国に戻る騎士達を見送ったこともうっすらとしか覚えていない


あのあとキャシーはテオドールを見かけなくなっていた

彼らも傷を負ったのだろうか

彼等も帰国して戦争の準備を始めるのだろうか



◇◇◇◇◇◇◇ 一月後


「こんな風に再会するなんてね」


5年分の齢を重ねた母上が立っていた


「大きくなったわねキャサリン」


そう母上はいつもキャシーをキャサリンと呼ぶ

キャサリンと呼ばれるたびに大人と同じように扱ってくれたようでキャシーは嬉しくなったはずなのに……同じ声で呼ばれているのに……


「テオドールはわたくしの弟です」


え?

巫女修行していた姉はロリータだけのはず


ハッとした


ロリータ……

ドリーと同じ

ドロレスの愛称


わたくしは巫女修行していた時に拉致されたのです」



◇◇◇◇◇◇◇


略奪結婚が珍しくないとは聞いていた

でも……知らなかった

父が母を誘拐して強姦したあげくの偽りの夫婦だったことを


母上は「5年前の襲撃を手引きした訳ではありませんよ」と言ってくれましたが本当なのかどうかはわかりません。 ただ信じたかったのです。 続く言葉が「夫たる陛下を愛することはできませんでしたが故郷の家族を愛したのと同じようにテオドアもフェルナンドも愛していたのです」でしたから


「愛していますよキャサリン」


母上はカミラ叔母と抱き合いその後

御自分の愛を全うできる地へとお帰りになりました




◇◇◇◇◇◇◇ 遺跡にて


「という物語だろうな」


女教授で変わり者のせいか除教授というあだ名の考古学助教授が言う


壁画には

男に石を投げる子供

女を担ぐ男たち

戦闘シーン

埋葬シーン

泣きながら抱き合う三人の女


それしか描かれていない

文字での説明もないし壁画もそれぞれタッチの異なる絵なのだ


この妄想女教授はやはり除教授な助教授だろう

ロミジュリみたく描こうとしたはずが気づけばオバちゃんがヒロインになっている!

解せぬ


当初のラストに救いがなさすぎたので蛇足かなと思いつつ付け足してみました

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラストのどんでん返しが意外だった。 母上ぇ [気になる点] 最初のシーンが何度か転換するところがわかりにくくて混乱しました。後半はスムーズに読めました! [一言] 異世界で猫になりましての…
[良い点] ラストでの大どんでん返しは実に見事でした。 二重の恋愛悲劇、堪能いたしました。
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