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死してなお超能力  作者: 小鳥遊咲季真
二話 「天空流」
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第二話そのいち

 最強と呼ばれた二人がいなくなってからのスタジアムは混沌と化した。いや、それまで最強の二人が出てこない試合は大抵能力の力差は拮抗していたのだが、王者の座が無くなったことで基準が曖昧模糊となり、勝敗の予想がつかなくなったのだ。


 

 そもそもこの戦いは元の世界における競馬や競艇のようなギャンブルそのものだ。大事な選手がそう安安と毎試合死んでは敵わないため、ある程度勝負がついたら、そこで決着としていた。無論、死人が出る試合などこれまでいくつもあったと言うが、基本的には身を引くときは引くのが暗黙であった。

 

 

 しかし、それにしても前最強王者との試合はやり過ぎだったようだ。

 

 

 いや、この戦いにやりすぎということは無いルールなので、規則上は問題ないのだが、それにしてものあまりにもの大穴だったらしい。この間の客とグラサンモグラへの支払いが、競技を運営している運営としては、かなり厳しかったらしく、その穴埋めの客寄せのためにスプラと僕はそれからもとめられるがままに連日試合に出た。多くは引き分けるか、辛くも勝利であった。死人は出ていない。無論、この結果は仕組まれたものであり、引き分けだと客への配当が少なくて済むこと、惜勝程度なら運営の方が利益になることからそのようになるよう相手側とこちら側の戦力調整と通達がされた。駒でしかない僕らに拒否権はなく、あるとすれば雇い主のモグラだが、報酬を手にするとあとは好きにしてくれと僕らを戦場へ放り投げたため行使されることはなかった。

 

 

 戦場はやはりひどいもので、たとえ結果が引き分けでも良いものではなかった。いや、むしろ勝ちの時の方が傷が少なくて済むのだから、ホッとしたほどだった。引き分けは互いが戦闘不能になった場合のみだ。つまり五体を失い、五感を#殺__そ__#ぎ取られて、感情を消耗した果てに失う。魂が息として呼吸の度に外出し、帰宅しない。徐々に空になり、生きることだけを望む動きになり果てる。この動きをさらに戦うために消費し尽くさざるを得なかった結果として、これが止まった時に初めて戦闘不能扱いとなる。

 

 

 超能力として放出した感情が彼果てた僕らは試合後、モグラにある手施しを受ける。

 

 

 命を削る連戦をしても、手足を失っても、胴に穴が開いても。頭と心臓がつながっていれば問題ない。しかしそこに自分というものが、存在という意識を確認する余裕を失った僕にはその手施しが何であるかを確認することはできない。僕はスピラを庇うことが多いので、より損傷がひどい。「あまりにひどい個体の場合は最悪捨てちまう、費用が掛かりすぎるからな」とグラサンは言っていたが、「お前らはそれ以上に儲かるから、今のところは大丈夫だ。安心しろ」と言われた。

 


 それはなるほど、安心できんな。

 


「絶空雨一閃」




 それはとある試合だった。

 



 長い黒髪に細い剣を構える。スプラの一撃が相手の剣先と宙を二つにしたので、そこに妖精のルーから受け取った双剣を両方投げて追撃。しかし、相手の花の魔法でそれは弾かれた。


 

「はぁはぁ……これは今回も引き分けか――」

 

「そうですね。そうなるかもですね。でも、引き分けは引き分けでも私は抗って見せますよ! 」

 

 

 そう。確か、相手の魔法少女はそんなことを言っていたのだ。だからこそ、連続していた僕とスプラの戦いも、一時の休息を得られることとなったわけなのである。

 

 

 

 

   * * *

 

 

 

 

「うんまぁいです! おにぎりなんて久々に食べましたよ、先輩」

 

  

 僕とスプラ、そして一人の魔法少女を連れたサングラスのモグラ。愉快そうに見えるが、実質中身が愉快さを伴わない一行は街を散策していた。っていうか何してるんだ俺達。暇なのか? 暇か? 

 

 

「えっと、#樗木__チサキ__#ちゃん、だっけ」

 

「はい。樗木です。苗字は不服なのでいりません! 」

 

「そ、そうか……」

 

 変わった子だ。魔法少女と戦闘中に名乗っていたが――

 

「いやあ、もう一体人間が増えるとは。しかもタダで。こんなラッキーあって良いのかねぇ、ガハハハ」




 そう。連戦連引き分け。五感と五体を毎度のように失いかけていた俺とスプラの何試合目だっただろうか。花に変化する花魔法を使って戦う少女、魔法少女樗木と相方の剣士との試合だった。試合結果は、俺達から見て敵の大自爆で辛くも勝利。しかし相手が自爆によるマイナス値がとてつもなく大きく、損害分を支払わないといけないことに。そので身売りされてきたのが彼女、魔法少女樗木である。先程宙に漢字を書いてくれたが、難しくて分からなかった。音だけ覚えよう。



「ニワウルシの木のことだそうです。意味は役に立たない木。役立たずなんです、私」


「いや、そうでもないぞ。君はスプラタイプだ。現世の人間が切り捨てた過去の人間の、その欠片みたいなタイプ。それに感情が宿ることはとても珍しい。これから活躍してくれればいいさ、ガハハハ」




 呑気なグラサンモグラである。しかし、役に立たないとは、僕も同じだろうと思った。現世の世界でも役に立たずで自殺をして、最強を倒したあとのこの世界でも特別にも最強にもなれず、ただ、言われるままに戦いに身を投じている。モグラの役に立っているという点では、良いのかもしれないが、しかしそこに僕の意思はない。




 僕はこんな境遇になってまで、こんな世界に生きてまで、なんで生き延びているのか分からなかった。自分で答えを出すことができなかった。

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