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彼女の過去

作者: 卯月はる

仕事帰りに降って湧いたネタ。夏だしね。涼んでいただけたら良いです。



 サークルの合宿での話だ。



 ひとつ上の先輩で、可愛い系の美人がいた。

 彼女は非常にモテたのだが、何故か彼氏を作らなかった。


 華奢で控えめな性格で、またどこか病弱そうな印象が庇護欲を誘う女性で、それを裏付けるかのように、偶に辛そうに左足を引きずって歩く事があった。


 その事について、彼女と同じ高校の後輩だった友人に話を聞くと、

「高校の時に海難事故に遭ってて、溺れた彼女を助けようとした恋人が行方不明になっている」

とかなり重い過去を教えてくれた。


「足はその時の後遺症。……昔の男を引きずっているんだよ」


 また別の友人は、

「怪我自体はとっくに治ってて、足を引きずっちゃうのは精神的なものからきているみたいよ」

などとトラウマ説を語った。

 美人なのに勿体無い、とその時の私は思ったものだ。



 合宿所での夕食後、私は廊下を歩いていた。

 友人は先に部屋に戻っていて、私は一度自動販売機に寄ってから戻ろうと思っていたのだ。

 廊下は節電のためか、蛍光灯がひとつ置きにしか点いておらず、やや薄暗かった。

 向こうから人が歩いて来るのが分かった。例の先輩だった。

 彼女はショートパンツを履いていて、綺麗な素足を晒していた。傷跡の類は全く見当たらなかった。

 でもやはり歩き辛そうにしてるな、と思った時だ。

 彼女の左足首に、何かが巻きついてるのが見えた。

 近付いてみて、それがとても大きい「何か」だと分かった。彼女は、その「何か」を引きずって歩いていた。

 すれ違うその時、やっと私はその正体に気が付いた。


 人間だった。多分、人だったのだと思う。

 全体的にぶよぶよとして黒ずんでいたが、彼女の足首をつかんだその指だけは、一本一本はっきり分かるほど妙に綺麗だった。



 その後、部屋に戻った私は友人に問いただした。

「ああ、見たのか」

 友人はごく冷静だった。



「言っただろ、昔の男を引きずっているって」



この手のネタは一発ものだと思います。創作です。

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