始まりの予感
街中でXmasソングが響く11月、私は運送会社で契約社員で働いていた。
24歳、金なし男なし。趣味は映画鑑賞。
中肉中背。胸は大きくないけど、まぁ普通。
特にドキドキすることもない。
月末処理で残業が増える。
パートの主婦さんは幼稚園児のバスの時間とかで3時頃に早々に退社、彼氏持ちの子は定時(6時)で帰る。。
主婦さんは良いとしても彼氏持ちの子は月末処理やんないのかよ!!とか思うが。
結局私がやるんだ。。
同じ時給850円の契約なのにおかしくね?
昔からこうなんだ。。
学生の時だって、普段ほとんど話さないのに学級委員決める時だけ推薦される。
「え、ちょっと」って言っても「良いと思いまーす」って言われて決定。
と、ぶつぶつ言いながら黙々と処理をする。
気がつくと19時、定時から1時間も過ぎた。
1人、また1人と帰っていく。。
やだなぁ、あたし1人残るのやだなぁ。
でも数字が合わない…
やり直し、数字とにらめっこ。
いーーーー(怒)ってなる。
20時過ぎ、なんとか数字が合い、プリントアウトしてると1人だけ残ってた。
2列前のデスクの、男性社員だ
ワイシャツを肘まで折って、伸びしてる。
がっちりの体格だけど、見覚えがない。
あんな人いた??
途中で、最近本社から移動で来た坂井さんだと思い出した。
180センチくらいあって大きい人だなぁ、って印象だ。
広いオフィスで、2人きりだからドキドキだけど、なんとなく息を殺して、なぜだか音を立てないように書類をホッチキスで止めてた。
ホッチキスの音に気がついた坂井さんがこっちを見た。
「終わった?」
…あ…あたしだよな?
「あ、はい」
「おーお疲れ、じゃあ帰りますか?」
待っ…ててくれた?
えっ?えっ?えっ?えっ?
かなり内心テンパりながら、あたしを待っててくれて、一緒に帰ろうとしてるなら書類を早く次長の席に置いて来なきゃ!!
「あ、これを次長の席に置いてきます」
「そう。自分で取りにこいよな?笑」
「ははっ」
苦笑いして慌てて次長の席に置いてくる。
次長の席から戻ると坂井さんがドアの前でタバコを吸っている
やっぱり待ってくれている。
「すみません、終わりました」
「よし、帰ろう。疲れたでしょ?飲んで帰ろうな」
まーじっすか!
そんな事やったこと無いし汗
まじかまじかまじかまじかまじか
え?2人で?え?まじで?
飲んで帰ろう。と言ってから足早に店に向かう。
あたしは見失わないように慌てて彼を追った
背が高いからその分足も長いから歩くの早いのかな?
居酒屋に着くと、うちの会社の営業マンが数人いて、坂井さんに手を振る。
「ここです」って言われると、坂井さんがあたしの背中に手をかけて誘導してくれた。
2人じゃなかった。と、少しホッとした。
普通に雑談が始まる。
ちょっとどうしたら良いのかわからず、ただひたすらお通しの春菊の胡麻和えを食べていると、坂井さんが「携帯何使ってるの?」と聞いてきた。
「あ、iPhoneで、」って言うと「へぇ、ちょっと見せて」と言ってきたので、iPhoneを彼に渡した。
少し見て、「ありがとう」って返された。
なんなんだ?
それから1時間くらい飲んで終電のため解散
山の手は混んでいた。
でもOL歴4年。空席を見つけるのは大得意。
すぐに座れた。
ウトウトしてると、ふいに携帯のバイブが発動。
見ると、「今日はお疲れ。また明日頑張れよ」とある。
差出人は…
坂井さん…………………
?!?!?!
その時わかった。
あの時だ。あの、携帯見せて、って言った時だ!
あの時自分のを登録してたんだ!!
めっちゃびっくり!!!
そしてその時、あたしはもう一つ思い出した
坂井さんの左手薬指に、指輪があった事を