10.あとどれくらい
文化祭まであと5日を切った。
直接な準備はまだ許されていないが、小物などの準備は許されている。
班毎に分かれての作業はそれなりに手間取った。
LHRに許された限り時間の中の作業。やることはたっぷりある。
実行委員に選ばれた以上、やるべきことはきっちりとこなす。
「じゃあ衣料班は家庭科室での作業、小道具班は空き部屋での作業、あと――」
班での今日の仕事を割り振る。
先生は放任主義発動により生徒の自主性に任せて見守るのみ。
めんどうではあるけれど、これはこれでいいかも、と思い始めた。
「千那ちゃん、結構やるね」
一息吐いて席に座ると、遥和が笑顔で机の上に腕を乗せて来た。
「何が?」
すっとぼけてみる。
あとちゃん付けするな。
名前呼ぶのはまだ目を瞑るとして、そこは看過出来ない。
「実行委員の役だよ。わかってるくせに~。さすがだって思ってる」
「別に。私にできることをやっているだけ」
「謙遜しちゃって。ま、いっか。私は転校したてでまだよくわからなかったりするけど、色々と小回り利くと思うから、何かあったら言ってね」
そう言ってその場から離れる。
今でも時峰遥和って言う存在はわからない。
私を邪魔したいのか近付きたいのか。
もちろん前者だろう。私はそう思っている。
何かお兄ちゃんについて知っているみたいだけど、絶妙な立ち回りで話に入らないようにしている。
ここ何日もあっちから話して来てるが、訊ける雰囲気ではないと言うか、あちらも拒んでるような素振りがある。
遥和が何をしたいのか、皆目検討もつかない。
だけど邪魔なのは間違いない。
だから私は、したいようにするだけ。
どんよりとした灰色の雲は、その先にある太陽の働きを邪魔するかのように覆っている。
それはやはり、雲が私の前に現れる人達に思える。もちろん、太陽はお兄ちゃんだ。
「……はぁ」
「溜め息吐くと私が襲っちゃうぞ♪」
「……はぁ」
「あっるぇ~?なんだか反応が薄いぞー」
良く言って陽気、悪く言って能天気な遥和を一瞥してからもう一度溜め息を吐く。
「なんでこうも私とお兄ちゃんの邪魔する人が多いのかなって思ってね」
「邪魔?私はむしろ応援するけどね。千那ちゃんとお兄さんの仲」
「ならどうして私の前に現れる?それ自体が邪魔してる」
「だったらどうして行動しないの?」
「――っ」
遥和が痛い所を突いて来た。
「だってそうじゃない。周りが邪魔って言うけどさ、私にはむしろ望んで邪魔と言う壁を形成しているように思えるんだけど」
「……違うっ」
抵抗の意として睨む。
「あーごめんごめん。別に意地悪しようってわけじゃなくて。ただね、私としてはもっとがっついてほしいわけ。お兄ちゃん好き好きー、って」
悶えるように身体を揺らす。
なんかムカつく。
様になってるのが、もっとムカつく。
「それで、用は何?」
強い口調で訊く。
仕事も山積み、お兄ちゃんに会えない不満、それに加えて近付く人、人、人でイライラは増す。
「そんなあからさまに膨れないで~。大丈夫。策はあるから」
「……策って?」
「お、食い付いたねっ」
いちいちムカつく。
「ほら、もうすぐ文化祭でしょ?だから、その時に二人切りになるようにセッティングして、そこでお兄さんとラブラブになろうって寸法よ」
「私実行委員だからそれは難しいと思うけど」
「だから策なのさ。私が何も考えてないと思い?」
バリバリ思ってる。
けど口に出さない。
「ちゃんと私が策を用意する。だから黒船に乗った気で居てね!」
私は日本に何を交渉すると。逆に鎖国でもするつもりか。
なんだか嫌な予感しかしない。
けど、どこか期待をして楽しみな自分が居るのも確かだった。
お兄ちゃんと会える機会はあとどれくらいだろうか。
それに、あの女狐はお兄ちゃんに迫ってないだろうか。
そこが私の悩み所だった。




