#9
結局、見つからなかった。しかも、もう閉館の時間だ。これは、明日言った方がいいかな?
だけど、この学級日誌はどうしようか? 持って帰るのは駄目だろうし、メモを残して帰った方がいいのかな。そうなると、何て書こうか? おっ、これでいいや。
「……閉館の時間が来たので、帰ります。学級日誌ありがとうございます。っと」
書けた。これなら、分かるかな? さて、帰りますか。
「しかし、こんなにも遅くまで読むとはな。」
学校を出ると、外はもう暗かった。そう言えば、遅くなるって、お母さんに連絡するの忘れてたな。怒ってないかな? 遅いと思うけど、一応連絡しておきますか。
「えっと、携帯っと。合った、合った」
さて、かけますか。電話をかけると、すぐに繋がった。
「あっ、お母さん。今から帰るね」
「もう。遅くなる時は、連絡しなさいって言ってるでしょ。きちんと守りなさい!」
「ごめんなさい、お母さん」
「分かったなら、早く帰ってきなさい。今日は、涼太の好きなラーメンよ」
今日の夜ご飯は、ラーメンだったのか! これは、早く帰らないと!
「分かったよ。早く帰るよ! では」
「夜は暗いんだから、気をつけなさいよ。じゃあね」
電話を切って、家に向けて走った。お母さんの作るラーメンは、とてもおいしいんだ。だから、早く帰らないと……
家に向かってる最中に、前の方に歩いてる人を見つけた。寒いのか、黒いコートを羽織って、いる……【吸血鬼再来】? って、まさかな。こんな所に、いるわけないよな。
だんだんその人と距離が、近くなってきた。そして、顔が見えた。黒いコートの人の正体は、女の子だった。背丈は、僕より少し小さいぐらいで、月の光を浴びて銀に輝く髪。そして、何より瞳の色が、澄ん藍色だった。僕は、その娘に目を奪われた。まさしく、どっかの本から飛び出たような美少女だ。
彼女と目が合った。可愛い。いや、かっこいいって感じかな彼女は。
「ん? 私の顔に、何かついてる?」
「あっ、いや。ついてないよ」
「そう」
彼女は、そのまま歩き去っていった。しかし、この町にはあんな娘もいるんだな。あんな娘が【湖の美女】とか、言われそうだな、可愛さ的に。
「って。何やってんだ、僕は!」
家では、ラーメンが待ってるのに。早く帰らないと!