#7
今は、放課後だ。平本さんとの約束があるけど、僕は話の順番が知りたくて、ここの学級日誌を見た。【送り人】が先だった。だけど、この順番が正しいとは思えないな。なんか、絶対に正しいって言える根拠は無いかな? ここで考えてるんじゃなくて、図書室で考えよう。
図書室は、1階にある。聞いた話だと、ここの図書室の蔵書は、8万冊もあるだ。
「よく来たね。ちょっと、待っててくれ。すぐに、持ってくるからね」
「はい、ありがとうござます」
平本さんは、カウンターでいいのかな? そこに行って、本をいくらか持ってきた。
「これが、六年前の学級日誌だよ。返すときは、僕に言ってくれよ。僕が、返しておくから」
「何から何まで、すみません」
「はは。良いって、噂を調べたいんだろ? 特に、幽霊とかのね。最近のそっち系だと【吸血鬼再来】が、流行ってよ……って、もう知ってるかな?」
【吸血鬼再来】を知ってるのか。平本さんは、お母さんがいる頃から居るから最初の吸血鬼のことについて知ってるかな?
「平本さんは、最初の吸血鬼の話を知っていますか?」
「知ってるよ。確か、十五年ぐらい前の時に流行って、噂名は【吸血鬼現る】だったな」
【吸血鬼現る】、か。どんな噂なんだ?
「その当時ね。連続殺人事件が起きていてね。その事件の被害者には、共通点があったんだ。それは……首筋に二つの穴があること。」
首筋に二つの穴。吸血鬼が吸血行動をしたってことか?
「最初、警察は性質の悪い愉快殺人が犯人かと調べていたんだけどね。」
調べていた? 途中から、何か変わったのか?
「ある日、目撃者が現れたんだよ。吸血鬼が、血を吸ってる!ってね」
本当に居るのか? 吸血鬼は。
「警察は、その目撃者が人が殺されたことを見てしまい、精神がおかしくなったと判断したけど、犯人の特徴は掴めたらしいんだ。」
「どんな特徴なんですか!」
「まぁまぁ、慌てるなよ。犯人の特徴はね。黒いコートを着て、瞳の色が赤色のやつなんだとさ。まぁ、そこに犬歯が大きいって言うのが加わるんだけど、警察は違うと判断したんだろうね。そう言えば、【吸血鬼再来】と違って、武器を持っていないだ」
十五年前の吸血鬼は、黒いコートに、赤色の瞳。それに、犬歯が大きいって事か。
「髪の色はどうでしたか?」
「髪の色かい? 分かっていなかった気がするよ。確か、黒いコートって言うのは、全身を覆い隠すようなタイプのやつでね。髪まで覆い隠していたらしいよ。」
髪の色が分からないのか……
「犯人はどうなったんですか?」
「犯人かい? 結局、見つからなかったさ。でもね、その時の僕は思ったよ。これは、何かの序章にすぎないと。そしたら、本当になっちゃったよ。でも……」
「今回は、誰一人死んでいない。それが、今回の吸血鬼。そして、謎でもある」
そう。今回の吸血鬼は誰一人死んでいない。それが、謎。
「そうなんだよ。どうして、もう一度流行ったのかが、気になるんだよ」
「おかしいですよね。僕の友達は、ガセって言ってるけど、何か変ですよね?」
「あぁ。しかも、この噂が出来てすぐに、別の噂が流行ったんだ。まるで、この【吸血鬼再来】を隠すためにね。」
うん? 【吸血鬼再来】を隠すために? 今、流行っているのは……
「……【送り人】か」
【送り人】が、怪しくなって気ましたね。
「【送り人】ではないよ。【湖の美女】だよ」
【送り人】ではなくて、【湖の美女】の噂が流行ってるんですか? それにしても、【湖の美女】? 美女とは誰なんだろ? 初めて聞いた噂だ。
「【湖の美女】とは、何なんですか? それは、何時から流行り始めたんですか?」
「あぁ、【湖の美女】って言うのはね。山の奥の方に神霊湖って言う湖が在ってね。そこに、美女が現れるって言う噂だよ。時期的に、二週間前から噂が流れてるね。」
山の奥に神霊湖? そして、二週間前から流行っていた。用は、出来立てホヤホヤの噂。
「……ワクワクしてきますね。」
「はは。興味が沸くだろ? まだまだ、あるから調べてみなよ。僕は仕事が入ったから、失礼するよ……あっ、学生の本分は、勉強なんだから程々にしなよ」
「ありがとうございました、平本さん」
平本さんは、僕に別れを告げると、仕事を始めた。
さて、今の噂も気になるけど、六年前の噂を調べるか……あと、日向さんのとこも見よ。