#5
学校には、予定していた時間より三十分も早く着いてしまった。窓口で、書類を提出してたら声をかけられた。
「君は、佐々木さんの息子かい?」
「はい。そうですけど……」
声をかけてきたのは、年配の男性だった。見た感じは、おおらかな人って印象だ。
「そうか、やっぱり。千草に似ていたからね。今度、私の息子がお世話になりますって連絡を受けたからね。」
この人、誰だろう?
「うん? あっ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は、平本一郎。千草の元担任で、今は図書室で、司書の仕事をやってるよ」
「僕は、お母さんの息子の涼太、佐々木涼太です。よろしくお願いします」
「はは、そんな堅くならないで。。おろしくね、涼太君」
「はい……あの、突然なんですけど。放課後に、六年前の学級日誌を借りてもいいですか?」
「うん? いいけど。もしかして、噂を調べるのかい?」
「はい。日向さんに……あっ、お母さんの妹から、聞いたんですけど。」
「日向って子は、千草の妹だったのか。よく生徒所感で、面白い事を書いていた子だからね。」
平本さんが、何かを思い出したように笑った。日向さん。あなたは、どんな事を書いたんですか? 平本さんの、生徒所感を後で見ておきますか。
「うん。放課後に来てくれ。用意しておくよ。」
「ありがとうございます!」
「それじゃ、僕は用事があるので、ここらへんで。じゃあね、涼太君」
「ええ、平本さん」
これで、調べるための準備が整った。後は、放課後になるのを待つだけだ。
しばらくすると、スーツを着た男性が来た。簡単な話を済まして、僕のクラスとかが教えられた。ちなみに、僕のクラスは1-Bでした。
先生に着いて行って、1-Bの前まで来ると先生に待っていてと言われた。たぶん、自分のクラスに転校生が来るってことを、言うためなんだろうな。
「佐々木さん。入ってください」
あぁ、緊張してきた。これは、大丈夫かな? 自己紹介の時、噛んだりしないかな?
「し、失礼します」
教室に入ると、シーンとしていた。あれ? こうゆう時って、騒ぐもんじゃないの?
「佐々木さん。自己紹介をしてください」
自己紹介、か。ここが、肝心だ。
「えっと。厳島高校から、転校しました。佐々木涼太です。趣味は読書で、ジャンルは推理小説です。よろしくお願いします」
噛まずにすんだけど、受けはよかったのかな? 反応が無いと、戸惑うな。
「佐々木さんは、両親の都合でこっちに引っ越してきました。何かと、分からない事もあるでしょう。皆さん、そうゆう時は、助けてあげてくださいね」
「佐々木さんの席は、あそこの空席です。」
あそこ……って、窓側の一番後ろか。この季節は、ポカポカしてるから寝ちゃいそうだな。
自分の席に着くと、前の人と隣の人がこっちを向いた。
「俺は、西森翔太。よろしくな!」
「私の名前は、高月彩乃。よろしくね!」
「あぁ、よろしく。西森さん、高月さん」
西森さんの印象は、制服を上手く着崩していて、かっこいい感じがする。高月さんは、可愛いって言うよりもどこにでもいるような子だな。
「おいおい、そんな堅くなくていいぜ。翔太って言ってくれよ」
「そうだよ。高月じゃなくて綾乃でいいよ」
「えっと、翔太、綾乃!」
「おうよ。涼太、よろしくな!」
「うん、うん。涼太、よろしくね!」
なんか、名前を呼び合うって、友達って感じがする。いや、もう。友達かな?