#14
一冊目には、女神関連の噂はなかった。やはり【吸血鬼現る】の噂が多かったけど、別の噂が6個ほどあった。
一つ目は、【怪盗現る】って言う噂。黒いマントをなびかせて、夜の街を縦横無尽に駆け巡る怪盗の噂。だけど、これは物を盗んだから怪盗、って言われてるんじゃなくて、格好が怪盗に似ているから、言われるようになったらしい。
二つ目は、【山に住む大男】。2m級の大男が山に住んでいた所から、流行った噂だ。だけど、そんな大男は山全体を捜索したけど、見つからなかったらしい。
三つ目は、【さ迷う魂】。【吸血鬼現る】で殺された人の魂が、毎晩夜の町をさ迷っている噂。
これは、親が子供を夜に、出歩かせないために流行った噂らしい。
四つ目は、【大通りのゴーレム】。桜大通りで、巨大なゴーレムを目撃されたところから広まった噂。これについては、一つしか無かったからあんまり分からない。
五つ目は、【二人の吸血鬼】。これは、【吸血鬼現る】で出てくる吸血鬼が、同時刻に別々の場所での殺人現場を目撃された所からできた噂。これは犯人が複数犯だと言う事を指しているのかな?
最後は、【歩く石像】。これは、学校に置いてある石像が、勝手に動き出す噂らしい。学校にある石像と言えば一つしかないので。たぶん、それが動き出すんだろ。
これらが、十五年前の一学期に流行った噂だ。この中で、【二人の吸血鬼】に関する噂が一番気になる。【吸血鬼現る】では、確かに一人とは噂されていなかったけど、これでは不自然だ。犯人が複数犯だったら、もっと計画的におこなうだろうし。何より、愉快殺人犯が二人もいたら、噂がもっと広まってるはずだ。そこまで有名じゃないのは、何かあったんだろうか?
これは、平本さんに話を聞いてみるか? 平本さんなら知ってると思うし。
「平本さん、少しいいですか?」
「ん? あぁ、噂について何かあったのかい?」
「【二人の吸血鬼】についてなんですが」
「あぁ、それはガセだよ」
ガセ? 何故そうなるんだ?
「だって、殺された人は、一日一人だけだったからね」
一日一人? それじゃ、【二人の吸血鬼】はガセなのか。いや、でも……
「当時ね。「きっと、同じ現場をみたんだろうさ」って言われたんだよ。事件当時は、暗かったらしいからね。警察もそう判断してるよ」
「そうですか。ありがとうございます」
平本さんとの話を終えて、もう一度同じ席に座った僕は、二冊目の本を読み始めた。