【天使】養殖・第三話(8)
「今やから言うけど、最初はあのお友達が一番の【天使】候補やったんや」
襟紗鈴の『蘇生ドミノ』が猛威を振るうんを眺めながら【天使長】が感慨深げに言うてよるそのごく近く、【神女】がいてる。たけなわやった『離宮』でのお楽しみを中断して来たからか不機嫌そうでもあり、それでいて目下の事態には興味をそそられてるみたいな、なんとも深遠な表情のまま、例によって一分の隙もない立ち姿。
「ぬしゃ【天使長】の嫁。犬も喰わぬ女夫喧嘩に【仙女】を巻きこんだこと、死ぬ羽目以上に後悔するぞ」
ていう【母性の仙女】の声がして。
振り仰げばビルの出窓やテラス屋根、道路信号の上とかの高所に【仙女】らが点々とたたずんでる。
嫁はなんも答えんと、このときようやく【天使長】と目え合わせた。
しばらくじっと見つめ合う。
先に目をそらしたんは嫁の方か? ほぼ同時に視線を切った。
アルカイックに微笑う【痴天使】に目顔向けて【天使長】、
「その綺麗なちびさんは、わての子か?」
「そうえ。それが何ンジュ?」
返答に一瞬、【天使長】の頬が怒りに盛り上がりかけよったけど。
「……ほうか。ありがとう……肝心なときにそばに居てやれんでごめんな、堪忍や」
途端に嫁はうつむいて、数秒後、
「……てる」
「え?」
「首に口紅ついてる」
言われて【天使長】、あわてて【くしゃみの仙女】抱いたまま一方の手を首筋に持っていく。
それが『終わりの始まりの終わり』やった。
嫁、こと【始天使アヅマエル】が怒りもあらわに、
「ついてへンジュ! あほっ! あんたまたそこの三毛猫に抱かれてたんえっ?」(『【天使】養殖・第三話(9)』に続)




