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第2話 わたしのかんがえた生存戦略

大変お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした!

一応、書きあがっていたのですが、読み返しで納得がいかなくなり、全部書き直しをしていたらこんなに遅く……アセアセ(;´・ω・)


それでは、本編よろしくお願いします!

 私を起こしにきたメイドが、既に起きて机に向かっている私の姿を見て、死ぬほど驚いていた。


「リュ、リュシアお嬢様が自分で起きてるぅ!?」


「え、そんなに驚くこと!?」


 その驚きっぷりときたら、逆にこっちがびっくりした。


 それでよくよく思い出してみたら、昨日までのリュシアって、起こされる前に自分で起きたこと無かったんだよねぇ……それじゃあ驚いても仕方ないかあ。

 前世、学生だった私は中学卒業を期に、自分で起きるようになった。それまでは普通にお母さんに起こしてもらっていた。うん、そう考えると、13歳のリュシアにあまり強くは言えないな。


 まあでも、小さいことから一つずつ。


 いくらすることが無いと言っても、さすがにそんな生活を続けていては、ダメ人間街道まっしぐら。規則正しいとまでは言わないけど、ちょっとは生活習慣も改善したい。さすがに昼頃に起きていくのは、ね。朝起こされて、部屋を出るのが昼頃ってのは、さすがにいかんでしょ。


 てことで、明日からはなるべく自分で起きるようにすること。それをメイドに伝えたら――


「リュシアお嬢様っ……! なんてご立派に!! 私は、私は今まで生きてきて一番感動しているかもしれません……!!」


「……」


 私、これまでどんだけ、だらしない人間だと思われてたんだ……自分で起きるって宣言しただけなのに。


 いやこれに関しては、このメイドの反応が過剰過ぎると思うけども。まあでも、あんなに喜んでくれているのを裏切る訳にはいかない。口だけにならないよう、明日から頑張ろう。それぐらい出来ないで、どうして悪役令嬢を回避できるか、ってもんだ。


 ちなみに、あのメイド。名前は『リム』という。

 私が小さい頃からずっとお世話をしてくれて、家族以外で一番、信頼している人と言っても過言じゃない。年齢はたしか、姉二人よりも若くて私よりも上だったはず。だからか、第三の姉みたいに感じてるところもある。基本しごでき(仕事が出来る)メイドなんだけど、時折あんな感じになる。そこだけが玉に瑕、かもしれない。


 さて……


 リムが驚いた、今朝の光景。


 果たして、私が何をしていたのかと言えば……それは勿論、これからの行動方針を考えていたのだ。

 悪役令嬢である私が、この世界で生きて行くための生存戦略。


 そう、破滅対策である。


 その最終目的は当然、悪役としての破滅を回避すること。その為に、今私が何をすべきか、何をしなければならないのか。それを一晩、でもないけど、早朝からずっと考えていた。


 では。何が私を、悪役令嬢たらしめているのか。いわば障害なのかを考えた結果――思い浮かんだのは、大きく分けて2つだった。


 一つ。まずはやっぱり、王子様との婚約関係だろう。


 古今東西、あらゆる人間関係において。最も恐ろしいのは、男女関係だと言っても過言じゃない。

 自分に靡かない相手が、好きな人が、恋人が。別の相手に良い顔をしたり、付き合ったり、浮気をしたりしている。シチュエーションなんて、上げ出したらキリが無い。要は、昼ドラ的人間関係ってこと。

 婚約者がガチ王子様とか、そういうのに巻き込まれそうな匂いがプンプン漂ってくる。


 そんなキケンな関係は、とっとと無くしておくに限るってね?

 

 だけど……これをどうにかするのは、そう簡単じゃない。

 だってこの国のトップ、王族との婚約関係だよ? やっぱり無かったことにしたい!と主張したところで、はいそうですか、となるはずも無いのだ。それぐらい私でも分かる。

 というか、何だってこんな社交性も無くて闇魔法が適性の女を婚約者にしてるんだろうね? 案外、向こうも解消したいけど、こっちに気を遣ってるってこともあるんだろうか。だとしたら話が早いんだけどねぇ。


 まあともかく、婚約破棄に関しては後回しにせざるを得ない。

 方法は考えつつ保留、って感じだね。


 そして、もう一つの障害。


 それは私の魔法適性が、悪辣なイメージが付きまとう『闇魔法』だということだ。

 ひょっとすると、王子様との婚約よりもこっちのが重要かもしれない。


 何せ、闇魔法で出来ることが精神への干渉だからね……どうしても、そういうイメージは付きまとう。

 だから適性を変えることが出来れば、それが一番いいんだろうけど。出来るのかな? でも、適性ってそう簡単に変えることなんて出来る? 血液型を変える、みたいなもんじゃない?


 う~ん……魔法に関する知識が無さ過ぎる。

 変えられるんなら、それが一番。でも変えられない場合、自分の適性を変えられないのなら、周りの認識を変えるしかない。闇魔法は悪人、悪役が使うものだという、世間のイメージ。それそのものを、変えてしまえばいいのだ。


 そう。


 つまり――闇魔法イメージアップ計画、であるっ!!!


 例えば、闇魔法の有用性とか、闇魔法は怖いものじゃないってことを広めるとか。とにかく何でもいいから、闇魔法に付きまとう嫌なイメージが払しょくできればいい。


 と、考えたところで。


 私って、闇魔法についてほとんど知らないじゃん、と気付いた。


 正直、今までの私は闇魔法に関わることを、極力避けてきた節がある。適性があると分かって、周りから居心地の悪い視線を向けられて……その原因の闇魔法を悪とみなして、勉強も練習も何もしてこなかった。こんなの、本来はあり得ない話だ。だってこれでも私、魔法師の名門貴族の娘だよ? 小さい頃、兄や姉が今の私と同じぐらいの年には、魔法の練習をしていた気がする。

 でも家族の誰も、私にそれを強要してこなかった。時折、魔法に興味は無いか?練習してみないか?とさり気なく話題に出されることはあったけど、それだけ。無理に魔法の練習をさせられることは無かったし、私もそれをしようとは言わなかった。


 でも、今。闇魔法のイメージアップのためには、自分がそれを知らなければいけない。


 変わる時が来たのだ。闇魔法と向き合う時が。


 きっと今までの私なら、こんなこと考えもしなかったと思う。ひょっとすると、前世の記憶を思い出したことで、心持ちポジティブになれたのかもしれない。

 今は闇魔法を怖いと思う感情よりも、魔法を使ってみたいという興味の方が強い。地球側の記憶の影響がかなり出てると思うけど、これに関してはむしろ大歓迎だ。


 これで一先ずの方針は立った。


 婚約破棄の方法を考えつつ、闇魔法の勉強とイメージアップ戦略を進め――あとは、笑顔の練習! 悪役顔なんて言わせないっ!!


 これが私の考えた、悪役令嬢回避計画だっ!!

 

 ということで、早速、出来ることから実行に移す。


「お父さま。お母さま。私、闇魔法の勉強がしたいです!」


「「ぶっ!?」」


 私の突然、それも思いがけない発言に両親が思わず吹き出す。


 銀に近いプラチナブロンドの髪に、切れ長の青灰色の瞳を持つ男の人。

 ほんのり桃色が差した金髪んい、淡い翡翠色のおっとりした瞳を持つ女の人。

 この二人が私の両親、お父さまとお母さまだ。


「リュ、リュシア。と、突然どうしたんだ? 昨日まではその、そんな素振りは無かったのに」


「そういえば今朝も、起こす前に自分で起きたってリムが言っていたわ。もしかして、どこか具合が悪いの? 痛いところとか、気分が悪いとかある?」


「……」


 ふっ。私がちょっと積極的になったら、この様だぜ……


 今までの私が、どれだけ内に籠って、二人に心配をかけていたのか。その反応から手に取るように分かる。もう、なんか、自分が恥ずかしいっ……真剣な場面のはずなのに、気を抜くと顔から火が出そうだ。

 

 でも、ここで挫ける訳にはいかない!


「そ、それは――昨日の夜、これまでの自分を見つめ直したのです。それで、ずっと家族に甘えていた自分を反省して、今日から変わろうと思いました! 魔法の練習がしたいと言ったのも、その一歩なんです!」


 完全に嘘って訳じゃ無い。前世の記憶が戻って、自分を見つめ直したのは本当だ。それで、今動かなきゃ破滅ルートまっしぐらになる可能性があって、その為に出来ることから始めようと思ったのも本当のこと。


 それに、これまでのリュシアが、家族の優しさに甘えていたっていうのもそうだ。

 魔法の件でもそれが分かる。決して魔法を強制せず、かといって腫物を扱うような空気になることも無かった。今なら、それがどれだけリュシアを気遣っての行動か理解出来る。

 魔法の大家であるエクレール家の娘がこんな調子なんて。しかも適性があの闇魔法だなんて……何か嫌なことを言われたかもしれないのに。


「リュシア……」


 だから、この行動は自分のためでもあり、尚且つ、家族への恩返しでもあるのだ。

 そう思えば、より一層気合いも入る。


「これまでサボってきたのに今更ですけど。エクレール家の、お父さまとお母さまの娘として、これ以上恥ずかしい姿を見せる訳にはいきません! だから、お願いします!!」


「……」


 テーブルに額が激突する勢いで頭を下げる。


 本当に今更。

 だけど何もしないよりはずっといい。

 

 緊張しながら、両親からの返事を待つ。

 

 すると、少ししてお父さまが喋り出した。


「……そうか。そうか、そうか……リュシア」


「はい……」


「お前は、家族でも一番の魔力量を持って生まれた。それを知って私は、嬉しかった。きっとお前は私を超えるような、凄い魔法師になると思った。いつの日か、お前と魔法を切磋琢磨できる日が楽しみだった。だがお前は……魔法の適性に、恵まれなかった」


「……はい」


「私の考えが甘かったのだ。例え闇魔法だろうと、それは使い手次第。お前が、リュシアが、それを悪用するような人間じゃないことは、誰よりもよく知っている。だから、周りの目なんて気にせず、お前には自由に魔法に邁進して欲しかった……結局、お前が苦しんでいることに気付けなかったがな」


 お父さまが自嘲気味にそう語ると、その顔はとても苦しそうだった。隣のお母さまも同じ表情をしている。そんな二人に、私はなんて言えばいいのか分からないでいると、お父さまが続けて口を開いた。


「だから、本当にいいのか? 家のことや、私達のことなんて気にすることは無い。それでも本当に、闇魔法を学ぶ覚悟があるのか?」


 こんな真剣なことを聞かれるとは思ってもみなかった。自分の認識が甘かったことを思い知らされる。


 お父さまの言っている『覚悟』の意味――私はそれを、正しく認識できているだろうか?


 たった一言、それだけの言葉に、どれだけの思いが込められているのか……正直、全ては理解できてないと思う。だってこの話を二人にしたのだって、深く考えず、勢いだけの部分がかなりあったと思うし。

 ただ魔法を学びたいって言っただけ。他の家だったら何てことない話だったはず。ただし、こと私に限っていてば色々な事情が絡んでくる。それをもっとよく考えるべきだったかもしれない。


 でも、だからといってここで引き下がるつもりも無い。


 ここでやっぱり止めた、なんて言ったら、もう二度とこの話をする資格が無いと思うから。

 例え勢いだけだったとしても、二人の、お父さまとお母さまのそんな顔を見せられて、黙っている訳にはいかない。二人はリュシアにとっての両親で、前世私の親じゃない。だけど、リュシアとして部分が、はっきりと目の前の二人を両親だと認識しているから。二人は間違いなく、私のお父さんとお母さんなのだ。


 きっと、前世の私が出来なかった親孝行……ここでまた親不孝をする訳にはいかない。


 だったら、覚悟なんてあろうが無かろうが、この言葉を引っ込める訳にはいかないのだっ。


「家族を気にするな、なんて。そんなこと出来るはずありません! いつだってこんな私を心配してくれた家族のためなら、白い目で見られることぐらい何てこと無いです!」


「っ……!」


「むしろお父さまが言ったような、凄い闇魔法の使い手になって、そういう目で見てきた全員を、あっと言わせてみせますわ!」


 だからお願いします、と。もう一度、深く頭を下げる。


 お父さまは、驚いたように目を見開いた。そして隣で、同じ顔になったお母さまと目を見合わせる。

 返事が返って来るまで、私は心臓バクバクだった。言ってから自分の言葉に、変じゃなかったかな?とか、あれ何て言ったっけ?とか、頭真っ白で返事を待つ。

 前世でも、こんな緊張感の中で、両親に何かをお願いするなんてこと無かった。生まれ変わってから、人生初めての経験をするなんてもう。


 すると、すんすんっと女性が小さくすすり泣く声が聞えてきた。この場にいる女性、間違いなくお母さまだ。背中を、滝のような汗が流れるのを感じる。心臓が更に、早鐘のように鼓動し始めた。


 そうして、顔を上げることも出来ずに待つこと少し。


「リュシア。顔を上げなさい」


「はいっ……」


 緊張しながら、言われた通りにする。

 もはや気分は、裁判の判決を待つ被告人のようだった。


 おそるおそる顔を上げると、両親の姿が目に入った。

 お父さまもお母さまも、とても優し気な表情をしていた。お父さまのあんな顔、滅多に見ることなんてない。無表情というか、あまり表情を崩さない人だったから。今日は普段見せないそんな顔を、よく見る。

 お母さまは、手元にハンカチを持っている。でも目尻には、まだ薄っすらと涙の痕が残っていた。でもその笑顔は、無理に作っているようには感じない。どうやら悲しませて、泣かせてしまった訳では無さそう……?


「お前の気持ちは分かった。私は、いや私達は、その気持ちを尊重したいと思っている。だから――」


 次に続く言葉を、覚悟して待つ。


「――お前が魔法を学ぶことを、認めよう。頑張るんだぞ、リュシア」


「今まで滅多に言ってくれなかった、娘のお願いだもの。それぐらい応援させてちょうだい。あなたならきっと、皆があっと驚くような凄い魔法師になれるわ」


「お父さま、お母さま…………ありがとうございますっ! 私、頑張ります!」


 そうして私の、魔法特訓を始めることが決まった。


 これまでサボってきた分を取り返さなくちゃいけないし、目指すべき世間に認められる魔法師になるのは、そう簡単じゃないだろう。でも出来ることからコツコツと。二人の応援を裏切らないように頑張ろうじゃないか。


 やってやるぜ。世界一の闇魔法使いに、私はなるっ!!

いかがでしたでしょうか?

いよいよ行動を始めたリュシアは、まずは魔法の練習から始めたようです。皆さんは闇魔法って、やっぱり悪いイメージがありますか? 

作者は真っ先に思い浮かんだのは、死霊魔法とかそっち系でしたね~。ちなみのこの世界の闇魔法で、死霊魔法が使えるのかは、今後のお楽しみってことで(決まっていないとも言う)

ちょっとシリアスな場面もありましたが、基本はコメディ路線で進んでいくので、よろしくお願いします!(ときたまシリアスもあるかも?)


そんな感じで、また次回の更新をお楽しみに! 今度こそ『9/10 水曜日』に更新できるように頑張ります!(ストックは既にあるんやっ!)

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