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8 女神
「この方が女神様……」
「本当にお綺麗だ……」
「では、皇族へご報告を。それと女神誕生祭の準備を」
「……っ!」
その言葉に、私は胸がざわついた。
もう、セシル様には会いたくない。
会ってしまえば、また心が揺れてしまう。
すると、一人の老婆が穏やかに口を開いた。
「ルアリナ様、私はこの村の長でございます。フィアナの母にして、カトレアの祖母でもあります。
陛下にはお伝えしたくないように見受けられますが……。やめておきますか?」
私は言葉にならず、ただ頷いた。
「はい。では、この件、皇族には申しまいでございます」
「えっ……本当によろしいのですか?」
てっきり説得されるのかと思ったのに。
「ふふ。この国では、ルアリナ様ほどの方がおいでになれば、それだけで“最上の存在”に等しいのですよ。
それに、ここへいらした以上、もう“他人”ではありません。あなたは私たちの家族です」
老婆——村長はそう言って、柔らかく微笑んだ。
その笑顔はまるで、冬の空を突き抜ける朝陽のように、私の心へ温かな光を届けた。