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できることなら、もう一度貴方の隣に。〜“殿下”、私を忘れてください〜  作者: 桜夜.Ari
第六章 忍び寄る影

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69 ここに来ることを知っていた?

殿下の剣が、魔物を斬り裂く。


一体。

二体。



倒れるたび、黒い霧が地面に散る。



「……数が多い」


私は周囲を見回す。

逃げ遅れた人影はない。

——よかった。


「殿下、ここにいる分は全部、倒してください」


殿下は一瞬だけこちらを見て、すぐに頷いた。


「ああ。全て片付ける」



剣が唸る。

魔物は弱い。

だが、怯まずに向かってくる。


「……おかしい」


ぽつりと、言葉が漏れた。


「普通なら、ここまで数を失えば引きます。でも…」


殿下が、魔物を斬りながら言う。


「でも?」

「……いえ。まだ、確信は」



本当は、少しだけ引っかかっている。


魔物の数。

現れる間隔。そして——こちらを囲もうとしない動き。



「……殿下」

「なんだ」


「この魔物たち……たまたまここにいたのではないかも知れません…」


殿下は眉をひそめる。


「それは……どういう」


その時、また一体、魔物が現れた。


「…くそっ!」


殿下が舌打ちする。



「倒せば倒すほど増えるな…っ!」

「はい。でも……強くはなりませんし…数もだんだんへっています!」


私は、炎の向こうを見る。




「…時間を稼いでいるだけ、ということか……?」


殿下は、魔物を斬り伏せ、低く言った。


「つまり、俺たちがくることを知っていた?」

「……かもしれません」


まだ、断定はできない。


ただ——。


「殿下。ここ、長居すべきではありません」


「民は?」

「……この場に残っている人はいません」


殿下は、一瞬だけ周囲を確認し、頷いた。



「分かった。最後に——」



剣が、大きく振るわれる。



残っていた魔物が、まとめて倒れた。


静寂。


燃える音だけが、残る。


「行くぞ」




殿下が言う。


私は、はっきりと答えた。



「はい」


走り出しながら、胸の奥で思う。





——これは、偶然じゃない。


でも、まだ“分からない”。


分からないからこそ——追う。


本当に止めるべきものが、あの洞窟にあるかどうかを。


そして、彼女の真意を。


私たちはあの森へと急ぐ。

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