67 忍び寄る声は
とある場所。
木々は異様なほど伸び、草は踏み荒らされることもなく生い茂っている。
昼のはずなのに、光は届かない。
空気は重く、あたりは薄暗かった。
そんな僻地に、足音がひとつ、響く。
ローブに身を纏った女が、早足で進んでいる。
女は何かに追われているような、焦った表情を浮かべる。
歩く足が速くなる。
『あの女が選ばれるのはおかしいと思わないか?』
その女の脳内に低い声が響く。
……おかしい……?
女の足が、わずかに止まる。
脳内に浮かぶのは銀髪の女性と、黒髪の男性……。
寄り添う2人。
……いいえ…。
あの2人はお似合いよ。
だから駄目よ……。
女は、ぎゅっとローブの裾を握りしめ、再び歩き出す。歩調が、早まる。
『お前は何を言っている…?お前に相応しいだろう?』
あの2人を引き離すなんて嫌…だから…私…私が相応しい…だから、だから……?
『選ばれるべきはお前だ。そう思わないか?…あの女からあいつを解放してやれるのはお前だけだ…』
…選ばれるべきは…この私……。
私しかいないの…?
『あぁ、お前は間違ってなどない…全てを、正しい位置に戻したいだけ、そうだろう?』
……間違って、いない?
正しい位置に…戻す?
『お前は間違っていない……!』
そう、私は間違ってない。
彼を……彼女から解放しなければ…わたしが、選ばれるべきは私よ……!!
『…そうだ…あの女を——……』
———ければ……はやく……あの、あの女を…。
早く………!
行かなければ……!
帝国に影が落ちてゆく。




