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できることなら、もう一度貴方の隣に。〜“殿下”、私を忘れてください〜  作者: 桜夜.Ari
第五章 寄せられる違和感、選ばれる覚悟

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62 俺が守る【セシル視点】

なぜ、あの場所に彼女がいたのか。



その疑問が、胸の奥でくすぶる。


思い出すのは、数週間前のことだ。


新聞騒ぎの直後、俺は影に命じた。



クルーディア・フォーレンスと、その周辺を調べろ、と。



いつもなら、三日もあれば十分な任務だ。


だが、今回は違った。


報告が上がったのは、それからかなり経ってからだった。





『……殿下』


夜更け、書斎の灯りの中で、影——イグナスは膝をついた。


『フォーレンス嬢についてですが……正直に申し上げます。詳細は、掴めませんでした』

『……何?』


思わず眉が寄る。

イグナスが言葉を濁すこと自体、珍しい。



『わかったことは、外出が増えていること。頻度は不定。

そして———護衛を、連れていないことが多い』


『護衛なしだと?』



公爵令嬢だぞ。

あり得ない。



『はい。私も何度か追跡を試みましたが……』



影は一瞬、言葉を切った。



『………見失いました』


『お前が、か?』

『……はい。…まるで、何かに包まれているようでした』





『魔法か?』

『断定はできませんが、おそらく。ただ…視界が歪み、気配が途切れる。彼女自身から発せられているものでは、ないように思われます』




沈黙が落ちる。


『外出先は、山が多いようです。特定の場所を、何度も』



——山。







『……彼女自身に、異変は?』


イグナスは、ほんのわずかに首を振った。



『いえ、表向きは、変わりません。礼儀正しく、穏やかで、社交的です』


『そうか』


『報告は、以上です。…………それと』



イグナスは、そこで一度、言葉を切った。


『これは……私の憶測ですが』


『帝国の未来の中心に、彼女はいるのではないかと』




今になって、すべてが、一本の線でつながり始めている。



「……まさか」






呟きは、誰にも届かない。

俺は、暖炉の前で拳を握る。




もし、クルーディアがこの出来事の中心にいるとしたら。




ルアリナを守れるのは、もう俺しかいない。





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