6 白霧村
知らない天井。
再び目を開けた時、世界は白かった。
天井に吊るされた干し草の束、木の香り、鳥のさえずり。
そこは自分の部屋でも帝都でもない、自然の気配に包まれた、見知らぬ場所だった。
私、何してたんだっけ——。
そうだ。
セシル様と遊んで、それから魔物が出てきたんだ。
私はさっきのことを思い出していく。
意識がはっきりしてきた。
……それで忘却魔法をかけた。
何故忘却魔法のことを知っていたの?
初めて聞く魔法よね。
私は間違ってない。
彼は皇太子。
私のために責任を負う必要はない。
もし私が死んだら彼は自分を責めるし、きっと誰とも結婚しないだろう。
私といても、それは彼にもこの国にとってもメリットはない。
彼には私を忘れて、幸せになってもらいたい。
私のことはどうせ一時の感情に過ぎないから。
……それから、ここはどこ?
忘却魔法は成功したの?
私は、死んだの?
それとも、失敗してまだ生きているの?
まさか、まさかここは皇宮の医務室なの?
私は焦りを感じた。
だがその時。
「ルアリナおきた!」
女の子の声?
私は起き上がる。
「痛っ!」
「ダメダメ、寝てなきゃ。治癒魔法かけたから、傷はないけど、深すぎたから、ちょっと痛いでしょ」
嘘、あの傷は、致命傷よ?
皇宮魔導士でも治せないくらい。
「貴女の名前は?」
私は少女に問う。
「私?私はカトレア!魔女だよ!まだ8歳だけどね」
「まっ魔女!?」
私の目の前にいる少女は、茶色の髪と、大きな灰色の目をしている。
魔女は灰色の目をしていると、聞いたことがある。
「おかーさん!ルアリナおきたよ」
カトレアと名乗る少女は大声で何もない空間に向かって母を呼んだ。
1分もしないうちに、女性が現れた。
すごい、日常で転移魔法を使うなんて、本当に魔女……。
「こんにちは、カトレアの母の、フィアナです、女神様」
花のように微笑む女性は、名乗った後、変なことを口にした。