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4 魔物の爪
その瞬間、バチッという音がした。
何かが、弾けるような。
「ルア!」
セシル様がこちらへ走ってくる。
振り返るとそこには大きな魔物がいた。
「え」
遅かった……。
魔物が爪をふりかざした。
やだ、死んじゃう!
セシル様……!
あれ、なんでセシル様は一緒にいてくれるんだろう。
これは警告だ。
その時、私は悟った。
セシル様と、もう一緒にはいられないことを。
でも、セシル様とずっと一緒にいたかったな、なんて考える私は、どれほど傲慢なのだろうか。
「ルアあっ!」
愛してるって、ちゃんと伝えたかった。
全てがスローモーションのように映る。
セシル様が駆け寄ってくる。
何か叫んでいるけど、何も聞こえない。
まるで、海の底にいるような感覚……。
その瞬間、鈍い音と共に激痛が走った。
背中から胸元まで深く裂かれ、私は崩れ落ちた。
血が、花びらのように舞った。
魔物は、そのまま霧のように姿を消す。
そう、まるで私を狙って現れ、満足して去ったかのように——。
「ううっ!ゲホッ」
思わず口を押さえる。
あ、吐血……。
「ルア!ルアリナ!」
彼の手が、私の肩を抱く。




