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3 最愛の婚約者
私たちはアイリが戻ってくるまで、ベンチに座って話していた。
「みんな、楽しそうですね」
「ああそうだな」
「あそこにアイス屋があるぞ。ルアはいるか?」
セシル様が指さしたのは私たちがよく買いに行くアイス屋だ。
「はい。いつものでお願いします。でも代金は払いますからね?」
「これくらい、払わせろ。俺たちは婚約者——恋人だろ?だから座って待っていてくれ」
「っ……。分かり、ました」
うう、照れるわ。
私はセシル様の背中を見つめる。
唐突に、大好きだな、と思った。
視界の端にきらりと光るものが映った。
あら?
あれは何かしら。
それは不自然に、道の真ん中に置いてあった。
不気味に輝いて。
私は近づく。
紫色に、不気味に輝く石……。
これは、魔獣石っ!
本で読んだことがある。
魔獣石は、魔物そのものだと。
石の中に魔物を閉じ込められている。
魔獣石は一見、石の形をしているが、魔物に変わり、人を襲うと。
なぜここにあるの?
いいえ、とりあえずセシル様に言わなきゃ!
私はセシル様の方へ振り返る。
セシル様はちょうど、アイスを買い終えたところだった。
「セシ……」