表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
できることなら、もう一度貴方の隣に。〜“殿下”、私を忘れてください〜  作者: 桜夜.Ari
第二章 だから、思い出さないで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/53

28 思い出さないで

数日後。


帝都の書店街の一角で、私は偶然セシル様と再会する。


会わないだろうと思っていたのに。


偶然なのか必然なのか。


……それとも、運命なのか。


「また会ったな」


声をかけられ、私は一瞬、動揺したが、すぐに微笑みを浮かべた。

何故声をかけるのっ!


「ええ。偶然、ですね」


セシル様は微かに笑い、私の視線の先を見る。


「その本…魔法に関するものか?」


「はい。少し研究しているので」


「君の魔法はすごかった。あの日、倒れた男性に迷いなく手を差し伸べた———まるで、女神のように」



その言葉に、私の手がわずかに震えた。


“女神”


彼が無意識に触れた言葉に、心臓が跳ねる。


まさに自分の魂の正体。

そして女神という名そのものが使命である。



「す……過ぎた誉め言葉です」


言葉を濁して本を棚に戻した。


彼の視線。

彼の仕草。

何気ない一言に込められた優しさ。


それらが、かつて愛した“セシル様”そのものだった。


けれど———。


思い出さないで。

私のことを思い出したら、きっとあなたは傷つく。



私の中には、“女神の生まれ変わり”としての使命がある。

そして、一度しまった想いを封印したいという自己防衛でもあった。




それから時々、セシル様と会うこともあった。

本当に暇なのかと思うぐらい頻繁に。



セシル様と距離を取り、目が合いそうになると逸らし、会話も必要最低限。

微笑みはするが、それは本当の感情ではなかった。



本当の感情を出してしまったら、戻れなくなってしまう。

蓋を閉じられなくなってしまう。


だが———。

それでも、彼の心は、止まらなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ