16 大変な夜
そして数時間後。
ゴンッ
「うっ、痛ぁ……」
私は床に落ちて目を覚ました。
ベッドを見れば、ありえない体勢で寝るミア。
本当に、どうしてこうなるの。
その夜、私は蹴られ、頭突きをくらい、朝を迎えた。
「おはよう姉様!よく寝れた?」
笑顔でそう言ってくるミアに、私は苦笑いした。
「え、ええ。いい朝ね」
一緒に眠れる時間は、そう多くないのだから。
「ルアリナ、体打ってないか?」
お兄様が尋ねる。
「大丈夫よ。それより私がいない間、ミアをよろしくね」
「大丈夫、任せろ」
朝食には誘われたけれど、フィアナさんたちに心配をかけたくなくて断った。
「ルアリナ、絶対一ヶ月に一度は帰ってくるのよ?」
「絶対よ?」
「わかってるわ、お母様、ミア。お父様、お兄様。行ってくるわね。また、すぐ戻るから」
お父様とお兄様が、そっと私を抱きしめてくれる。
「……気をつけて行きなさい、ルアリナ。お前は、我が誇りだ」
お父様が言う。
「何かあったら、すぐ戻ってこいよ。俺たちがいること、忘れるな」
お父様とお兄様が、そっと私を抱きしめてくれる。
「ありがとう……本当に、ありがとう。みんな、大好きよ」
その言葉が、私の心に温かく残った。
家族とは、なんて素敵なのだろう。
私は数歩後ろに下がり、指先に魔力を集中させる。
再び転移魔法を発動させようとした、その瞬間。
「えええええっ!? 転移魔法っ!?」
ミアの叫び声が響き渡る。
その言葉を最後に、私は光に包まれ、ふたたび旅立った。