13 せめてもの誠実を
私は静かに部屋へ戻ると、静かに、眠りについた。
朝。
「ルアリナ、おはよう」
「……おはよう、二人とも」
言葉を返した瞬間、自分の声が少し震えているのがわかった。
たった一晩のはずなのに、胸の奥に何か鉛のようなものが沈んでいる。
家族の笑顔を見られた安堵と、触れられなかった距離の痛み。
全部、まだ胸の中で渦を巻いて収まっていない。
カトレアとフィアナさんが、私の顔をのぞき込む。
心配している顔。
優しい顔。
何も言っていないのに、どうしてこんなに伝わってしまうんだろう。
ああ、だめだ。
この人たちは、私が何も言わなくても気づいてしまう。
「ルアリナ……昨日より、少し疲れてる…?」
カトレアが眉をひそめて言う。
「無理してるように見えるわ」
フィアナさんも、そっと手を私の肩に置いた。
胸がぎゅっと締めつけられる。
こんなに優しくされているのに、私は本当のことを隠している。
そのくせ、心のどこかで救われようとしている。
そんな自分が嫌になる。
でも、嫌いになりきれない。
もう一度、誰かに必要とされたかった気持ちが、どうしても消えない。
ぎこちない笑みを浮かべた私を見て、二人はふっと表情を変えた。
もう、誤魔化せない。
「ねえ、フィアナさん…カトレア…後で、少し、話したいことがあるの」
口に出した瞬間、胸の奥が小さく痛んだ。
2人は一度も急かさず、ただ静かにうなずいた。
朝食を食べ終えた後、私は深く息を吸う。
震える手をぎゅっと握りしめながら、言った。
この村に来た理由。
皇族に追われていたこと。
忘却魔法をかけたこと。
そして、自分でも気づかないうちに、救いを求めてしまったこと。
全部。
小さな部屋の中に、私の声だけが落ちていく。
時々、言葉がつまって喉が熱くなった。
でも、最後まで逃げなかった。
言い終えるころには、フィアナさんの頬を静かに涙が伝っていた。
「ルアリナが……そんなことを背負っていたなんて。
前に皇族への連絡を拒否したことがあったのって、そのせいなのね……気づいてあげれなくて……」
「ルアリナ!…私もごめんね…年が1つしか違わないのに…これからはなんでも話して、相談相手になるわ…!」
カトレアは、大きな瞳に涙を溜めている。
私のために泣いてくれてる人がいるなんて。
「ありがとう」
私は静かに頷いた。
言葉にならない気持ちが喉に詰まり、うまく笑えなかった。
でも、頷けた。
それだけは、この人たちに対する、せめてもの誠実だった。
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